『Shall we ダンス?』【→特設サイト】全体感想です。
(その前に)本日は、花組東宝千秋楽。おめでとうございます。蘭寿とむさん率いる花組のエネルギーが発揮された公演でした。今の花組だからこその素晴らしい2本立て公演でした。スタッフの皆様もお疲れ様でした。春風みーちゃん、退団者の皆様、素晴らしい舞台をありがとう。またどこかでお会いできますように。
さて、ここのところ悠未ひろDS 『Heroe』、大空祐飛の退団後初舞台である『唐版 滝の白糸』、宝塚歌劇100周年前夜祭のOG公演『DREAM, A DREAM』と立て続けに見ている。いずれも一回こっきりの一期一会観劇だったが、タカラジェンヌの歌いっぷり踊りっぷりに感動した。そして、卒業してもタカラジェンヌはやはりタカラジェンヌ。ずーっと進化し続けていることを発見した。滝の白糸は昨日、DADは今日が千秋楽ですね。おめでとうございます!感想は後日。
『Shall we ダンス?』全体感想
小柳菜穂子氏の脚本・演出のセンスの良さで満たされた舞台だった。それに応えようとキャストとスタッフさん達も総力結集といった感じで、95分の枠の中で「日常の小さな冒険」と「人生の大きな喜び」を見事に描ききっていた。
映画やテレビといった視覚的表現は、表情や身体の動きのアップも自由自在だし、場面の切り替えが瞬時に行われ、映像や音声の編集もできる。自動車や自転車、電車といった動きのあるものもたくさん出てくる。それを空間と道具に制約のある生の舞台でするというのは、ものすごい構想力と想像力が必要なんだと、タカラヅカ版『Shall we ダンス?』を見て改めて理解した。パワーがいるなぁ。
舞台ならではの素敵な場面だなと思ったのは、ビルの2階にあるダンス教室でひとり踊るエラ@早霧せいなと階下からダンス教室の窓を見つめるヘイリー@壮一帆の場面である。
ダンス教室のビルが夜の街の照明で浮かび上がり、背景が切り替わる。ビルの壁が光溢れる夜空で埋まり、壁がなくなっていく。窓から上半身だけ見えていたエラの全身像が現れ、星の海で1人ステップを踏み、長い髪を揺らしながら、くるくるとターンする。その姿を地上から見上げるヘイリー。
ラプンツェルと呟く三つ揃いの背広を着たヘイリー@壮は姫の救出に挑むナイトのように、地上に立ちすくむ。ファンタジックですごく素敵なシーンだ。壮一帆演じる「平凡なサラリーマン」ヘイリー・ハーツは、競技ダンサーとして挫折を味わい落ち込んでいるエラ@早霧を見て、「ダンスができないと励ますことも出来ない」と猛練習を始め、ダンス教室の生徒ドニー@夢乃 聖夏やバーバラ@大湖せしるがダンスにかける想いを知り、ますます熱中する。そしてエラの発案でボールルームダンス競技会に出ることになる。
「平々凡々な自分の人生にこんなことが起きるなんて!」
紳士的で献身的な優しさがあり、ロマンチストで変な下心をこれっぽちも感じさせないヘイリー像は、女性が演じる「男役」の真骨頂かもしれない。ラストのヘイリーと妻ジョセリン@愛加 あゆとのデュエットダンスはトップコンビファンへのプレゼントだった。
(しかし小柳氏は、ヘイリーに「ラプンツェル」と呟かせることで、こんな男性は現実にはいないんだよ、と暗喩しているのでは、と勘ぐってみた。現実社会で女性をみつめて、ラプンツェルと呼ぶ男性を想像してみましょう、みなさん)。
『CONGRATULATIONS 宝塚!!』 と残りのキャストの感想はまた書きます(こうやって宿題がたまっていく…)。
【あらすじ】
大手企業に勤めるヘイリー・ハーツ@壮一帆は、ほどほどに昇進し、仕事もまぁ順調で、郊外に一軒家を購入し、専業主婦の妻ジョセリン@愛加 あゆと愛娘のエミリア@星乃 あんりと住む。規則正しく起床して、遠距離通勤で会社に出勤する。多少の残業はこなしつつも、自宅に帰れば妻と子がいる「平和で平凡な毎日」。
彼は、このご時世にその平凡な毎日がどれほど貴重なものであるかも理解していたが、思春期のエミリア@星乃との会話は難しく、妻ジョセリン@愛加は買い物や料理の話ばかりで、家族にとって自分の存在が希薄であることも感じていた。いつの頃からか彼は、“何か”が、どこかで自分を待っていて、この平凡な生活を変えてくれるのではと思うようになっていた。
ヘイリー@壮の密かな楽しみは、通勤帰りに駅のホームから見えるボールルームダンス教室のレッスン風景である。ビルの2階にある教室では、髪の長い美しい女性が1人でよく踊っていた。ヘイリー@壮は、その美しい女性を見て、塔の上に住む髪長姫「ラプンツェル」を連想する。
ある日、とうとうヘイリーはボールルームダンス教室の扉を開け、くだんのラプンツェル…女性ダンス教師エラ@早霧せいなに出会う。ダンス教師シーラ@梨花 ますみの誘いで、グループレッスンの入会申し込みをしたヘイリーは、そのダンス教室で会社の同僚であるドニー・カーティス@夢乃 聖夏を目撃する。ドニーは、会社とは別の自分を創るためにダンスに熱中していたのだ。彼の強烈な誘いで、ヘイリーは週末の「ダンスパーリィ(←party)」にも足を運ぶようになる。一方、妻のジョセリンは真面目な堅物だった夫が、たびたび外出するようになり、しかも帰宅後は上着から香水の匂いをさせていることに、疑心暗鬼になっていた。
- 主演・・・壮 一帆、愛加 あゆ
NTT東日本・NTT西日本フレッツシアター
ミュージカル
『Shall we ダンス?』
~周防正行 原作・脚本・監督「Shall we ダンス?」(アルタミラピクチャーズ)より~
脚本・演出/小柳 奈穂子