[Zuka] 2013年宙組『風と共に去りぬ』(2)

『風と共に去りぬ』は、これだけ有名な作品にも関わらず、映画化は1度きりである。その理由はいろいろあると思うが、スカーレット・オハラにヴィヴィアン・リーがあまりにも適役すぎたこともあるんじゃないだろうか。私生活でもスカーレット・オハラそのものと言われたヴィヴィアン・リーは、最初の夫と離婚し、ローレンス・オリヴィエと結婚する(ちなみに略奪婚です)。オリビエと離婚した後も彼を愛し続け、新しい恋人ができても、ベッドサイドにオリヴィエの写真を飾っていたという。

そこのあなた、まんまスカーレットじゃんって思ったでしょ。私も思ったよ 。
(再映画化ができない理由はも莫大な制作費やら奴隷制やら人種差別やら、他にもたくさんあるんだろう)。

まぁ、そんなことは置いておいて。宙組公演『風と共に去りぬ』は、宙組生みんなに、何か降りていた。

世の中を斜め目線で見ながらも、負け戦の南部軍に志願してしまう義侠心に溢れるレット・バトラーを、凰稀 かなめは力強く演じていた。意外と出番が少ないにも関わらず、なんだあの存在感は(おまけで酔っ払いの演技が上達したw)。それから、風共の見所として、みりおん(実咲 凜音)がオススメするのは2幕目後半でスカーレットと喧嘩したレット@凰稀が、タイを外して開襟するところ。見逃してはならない。

レットの愛人のベル・ワットリング@緒月 遠麻の存在も、レット・バトラーの存在をもり立てる。こんな、情が深くて自立した「いい女」に惚れられるレット・バトラーはさぞ「いい男」なんだろうねーと思う。アトランタ駅で、ベル@緒月が、レットの名前を呼ぶ声が弾んでいた。「レぇット↑」

【余談】 ついベルを「でかい」と思ってしまうのは、緒月遠麻の背が高い(公称174cm)もあるが、羽髪飾りに派手な真っ黄色のドレス、加えて濃い化粧で目立ちまくりだからでもある。もともと緒月は鼻筋が通って、顔立ちがはっきりしているので、濃い化粧するとケバく見える。娼館の女主人ベルだから、これで良いのだと思うが、とにかく存在感抜群だ。

朝夏 まなとは入魂のスカーレット・オハラ。レットが出て行くなり、プレゼントの緑の帽子をかぶってはしゃぐスカーレットは、可愛かった(こっそり戻ってきて、その姿をのぞき見しているレットはかなりツンデレ)。朝夏スカーレットは、猫目できりりとした顔立ちで、どこか爽やかさがあって、つんつん笑顔が可愛らしい。

アシュレ@悠未 ひろとメラニー@実咲 凜音が全然絡まない。夫婦らしい会話のシーンがゼロ。それなのに、パンフレットに見開きだけど、別々のページに掲載されているアシュレとメラニーは上品さと優美さが共通して、二人とも柔和な優しい瞳をしている。なるほど「これは、夫婦だ」と思ったり。

アシュレもメラニーもけっこう難役だと思う。メラニーは周囲に慕われ、敬意を表されていることが表されているシーンがあるからまだ良いけれど、アシュレは出番もセリフも少ないのでよほど工夫しないと、お人好しの優柔不断の意気地なしキャラ(←自分で書いてひどいと思った)になってしまう。軍服のアシュレ@悠未 ひろは、知性と理性を兼ね備えた男性だったが、戦後に昔を思い出して、スカーレットを抱きしめるアシュレは白昼夢を見ている人のようだった。戦争とその後の生活の変化によってどれだけ疲れてしまったのだろう、と痛ましく思えた(あれは、いわゆる戦争神経症なのかも)。

 風共はけっこう深いです。まぁ突っ込みどころがないわけじゃないんですが、気にしない気にしない。

プロローグは、純白のドレスに緑のサッシュを締めたスカーレット@朝夏まなとが、せり上がってきたアシュレ@悠未 ひろと男役スターに囲まれて華やかに踊る。スカーレットが、社交界の花だったころの模式かな。観劇予定はまだ入っているので、プロローグとフィナーレの感想はまた後日。いろいろ追いついてません。

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