[Zuka] 2013年星組『南太平洋』

星組公演『南太平洋』(初演1949年)を観劇した。ブロードウェイ・ミュージカル2008年リバイバル版を原田諒が潤色・演出したタカラヅカ版。第2次世界大戦中の南の島を舞台にして、フランス人農園主と米国従軍看護婦ネリーとの恋愛を中心に、戦争や人種差別の問題を描く作品である。

フランス人農園主エミール・ド・ベックは、“トップ・オブ・トップ”轟 悠。さすが貫禄の格好良さである。表情や仕草、ちょっとした動きもスマートで洗練されている。特に、アメリカ海軍下級兵達が、「女が欲しい」と歌った後の場面だと、フランス人エミール・ド・ベック@轟 悠の優美さが際立つ。

ヒロインの従軍看護婦ネリーの妃海 風(ひなみ ふう)は、20歳前半のアメリカ娘の役を、生き生きと演じていた。歌もナンバーが多いのにキュートに歌いこなしている。これは今後の活躍が楽しみ。ソプラノのナンバーはなかった(気がする)ので、それは次作以降に期待しよう。恋心にずぶずぶの妃海ネリーをからかう星組娘役の見せ場(第6場)も乙女心全開で見所である。

そして、ポリネシア人の人ブラッディ・メリー@英真なおきは、怪しげな土着の土産物売りのおかみを巧みに演じ、南国イメージなのか、琉球言葉っぽいイントネーションで話していた。英真なおきの「バリ・ハイ」と「ハッピー・トーク」は逸品!!

ブラッディ・メリーの娘リアット@綺咲 愛里と恋に落ちるアメリカ海軍中尉ジョゼフ・ケーブル@真風涼帆は、すらりとした男前だった。こういう正統派男前をやって、違和感を感じさせない人は貴重だね。綺咲 愛里は浅黒く塗った肌とハワイアンな衣装が良く似合う。「つぶらな瞳」が可愛いぜ。

第3場では、二等兵ルーサー・ビリス@美城れんとシチューポット@如月蓮が客席を横切って登場。このコンビは妙に可愛くて、特に美城ルーサーが良い味だしていた。最初は小金にうるさい、こずるいおっさん(ごめんなさい)かと思っていたら、いい人過ぎて愛い奴じゃった。儲け話に飛びつくが全然儲からない美城ルーサーは、観客にとってはかなりの儲け役だった。

ストーリーはさすがにやや古さを感じて、違和感がある[1]し、突っ込みどころもある[2]のだが、効果的な演出に加え、舞台美術が素晴らしく、照明が色彩豊かに使われていて、初演時にアメリカ人が夢見ていた楽園・南の島ポリネシアの雰囲気を醸し出していた。舞台美術は初宝塚の松井るみ。

本公演は、装置(機械)によるセットチェンジがほとんどなく、星組生がごろごろとテラスの渡り廊下セットや司令室セットを運んでくる。それさえも演出効果の一部になっていて面白いが、皆様、お疲れ様です。

[1]第二次世界大戦中のアメリカ海軍の敵って日本軍しかないよなぁとか思いつつ観ていたら、第Ⅱ幕第1場は感謝祭の場面で、星条旗がずらりと並び、USA万々歳のお祭り騒ぎで、1949年当時の戦勝国アメリカ合衆国の雰囲気をしのばせた。あと、物語は、ベースに「人種差別当たり前」があり、「愛があれば肌の色の違いなんて乗り越えられる。乗り越えた二人は素晴らしい」という感じ。戦後70年近く経って、多少は人権意識が進んだのかなぁ。

[2]カップル2つともが一目惚れってどうよとか、ベックさんは、ネリーに結婚OKの返事をもらってから「子どもが二人。先妻は亡くなった。ポリネシア人で」って、なんじゃそりゃ(そんな重大なことは最初に言うべし。それと人種差別はまた別の話だろ)とか、まぁいろいろ。

■主演・・・轟 悠(専科)・妃海 風
ブロードウェイ・ミュージカル『南太平洋』
Rodgers & Hammerstein’s
SOUTH PACIFIC
Music by RICHARD RODGERS
Lyrics by OSCAR HAMMERSTEIN II
Book by OSCAR HAMMERSTEIN II and JOSHUA LOGAN
Adapted from the Pulitzer Prize winning novel
“Tales of the South Pacific” by James A. Michener
潤色・演出/原田諒

梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演
公演期間:3月19日(火)~3月30日(土)
 
[解 説] リチャード・ロジャース作曲、オスカー・ハマースタインⅡ世脚本・作詞により、1949年にブロードウェイで初演、翌年にトニー賞最優秀作品賞を受賞。 2008年には第62回トニー賞において、リバイバル作品賞をはじめとする7部門もの受賞に輝いたミュージカルの傑作。太平洋戦争の最中、とある南の島で 繰り広げられるフランス出身の農園主エミールと、島の海軍の看護婦ネリーとの恋を、流麗な音楽に乗せて描いた作品。宝塚歌劇では、1984年に剣幸、春風 ひとみらにより宝塚バウホールで上演し、好評を博しました。今回はブロードウェイでのリバイバル版(2008年)が魅せたように、より現代的に、そしてド ラマティックな演出で感動の舞台を甦らせます。