[Zuka] 2013年宙組『モンテ・クリスト伯』(3)ネタばれ編

ネタばれ編なのでご注意ください。

宙組版『モンテ・クリスト伯』のストーリーは、映画版を下敷きにしているようで結末は映画版に沿っている【→あらすじネタばれあり】。原作も長いが、映画も131分あるのを、さらに圧縮して90分の舞台になっている。メインキャストも多いわりに、きちん仕立ててあった。ただ説明が若干うるさい(時事ネタは1回にして欲しい)。これは、圧縮版だからなのか、脚本のクセなのか、学割適用公演を意識してなのか、よくわからない。

前半は、現代のアメリカン・ハイスクールの演劇部顧問ミス・メアリー@美風 舞良と演劇部員のケント@蒼羽 りく、ジェニファー@伶美 うらら、フレディ@風馬 翔、ディック@桜木 みなとが進行役をつとめる。

ここでびっくりなのは、演劇部員(たぶん桜木みなと)、説明しながら過去に紛れ込んで、ナポレオンになり、ダンテス@凰稀かなめに手紙を渡すという演出であった。蒼羽 りくもハイスクールの制服の上に上着を羽織って、フェルナンのパパを演じているので、おいおいと思いながらも、二人とも素敵なので、まっいっか的な何か、許せる感じ。←おい!!

アメリカン・ハイスクールの演劇部の説明は何回も言うけど、ややくどい。それでも、彼らの演技が楽しげで良い。第12場Aではなんと、悪代官とギリシャの姫になって出てくる。レストランの余興として、凰稀モンテ・クリスト伯とフェルナン@朝夏まなとの前で、小劇を演じる。

内容は、悪代官を演じる蒼羽 りくが、ギリシャの王役の桜木みなとを騙して殺し、姫役の美風 舞良を奴隷として売り飛ばすというもの。兵士風馬 翔で、侍女伶美 うらら

これは、パリ社交界で貴族議院議長を表の顔にする朝夏フェルナンが実際に過去やった所業であり、凰稀モンテ・クリスト伯が庇護するエデ姫@すみれ乃 麗が、フェルナンに復讐しようとする動機である。ここは、前半以降は、もう出てこないのかと思っていた演劇部員達が、すみれ乃エデ姫を支えるように登場したのが嬉しい。ちょっとわざとらしい大げさな動きも面白く、小粋な演出であった。余談ですが、すみれ乃エデ姫はベール被ったギリシャの姫姿が良く似合って、踊る姿が優雅で美しい。

あと圧巻は、メルセデス@実咲 凜音とモンテ・クリスト伯(エドモン・ダンテス)@凰稀 かなめの殺陣のシーン。実咲メルセデスは、息子のアルベール@愛月ひかるが、モンテ・クリスト伯に決闘を申し込んだのを聞き、モンテ・クリスト伯のところに止めるように頼みに行く。

実咲メルセデスは叫ぶ。「エドモン!!もういいでしょう?メルセデスと呼んで」
冷たく朝夏フェルナンとの結婚を責める凰稀モンテ・クリスト伯に対し、涙ながらに、父親のモレル社長@寿つかさの持ち船ファラオン号が沈没し、モレル社長は援助を拒否して餓死し、エドモンが自殺したと聞いて、フェルナンを頼るしかなかったと話すメルセデス。グラリとする凰稀モンテ・クリスト伯。

すんません、ここで、内心、「あんたバカぁ!?」とアスカ@エヴァンゲリオン【→YouTube】の決まり文句を呟いたのは、あおきです!!(「あんた」はもちろんモンクリ伯)。メルセデスが20年間どうやって生きて来たか、大金持ちなんだから調べられるだろうとか、フェルナン以外と結婚していたらどーすんだよ、とか。いやいや、それじゃ、お話が成り立たないからとか、セルフ突っ込みでなだめましたよ!

決闘は中止できないという凰稀モンテ・クリスト伯に対して、「私が奇跡的にあなたに勝ったら、アルベールは助かる」と決死の覚悟で、剣を握る実咲メルセデス。

慟哭しながらも、必死で凰稀モンテ・クリスト伯に向かう実咲メルセデスが壮絶に美しくて、こんなに美しい人だったかと思った。母は強し(実際は未婚で、まだまだ若いみりおん)。凰稀モンテ・クリスト伯が毒気を抜かれて、エドモン・ダンテスに戻った瞬間だった。

1本立てだったら、がっちりした構成のお芝居にできたかもしれないけど、これはこれで味わい深い舞台だと思う。