[diary] [Stage] COVID-19パンデミック雑記(14)劇場で舞台クラスター発生【1】

増水している武庫川

先週から降り続く長雨・九州豪雨による被災者の皆様、お見舞い申し上げます。大雨は九州から東日本にかけて週末も断続的に振り続くようです。河川や用水路の周辺に近づかない、土砂崩れの恐れがある斜面に近づかないなどの注意が必要です。

日本は過去5年の激甚災害の指定状況一覧(内閣府)を見てもわかるように、水害や台風、地震に毎年のように襲われる災害列島です。浸水した家屋で呆然としていらっしゃる被災された方たちの映像を見て、やるせない気持ちになっています。くれぐれも身の安全を確保してくださいますよう。


新宿区に所在する新宿シアターモリエールにて上演されていた舞台『THE★JINRO ―イケメン人狼アイドルは誰だ!!』(ライズコミュニケーション主催)から新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の集団感染(クラスター)が発生しました。

7月10日時点で、出演者・スタッフ合わせて12名、観客2名の感染が明らかになっています。

オーケストラや劇場も再開し始めているところなので、ここで感染予防策を見直してみて踏ん張って頂きたいです。

👉クラスターとは「集団発生とは、当面の間接触歴等が明らかとなる5人程度の発生を目安とする」(厚生労働省:事務連絡令和2年2月26日PDF


注意) 記事中に「抗体検査の結果が陰性」「簡易抗体検査の結果が陰性」との記載がありますが、抗体検査とPCR検査、抗原検査の特性を把握して検査を選んでください。抗体検査は過去の感染の有無の判定に使います。今感染しているかどうかを判定できるのはPCR検査と抗原検査です。


1.キャスト・スタッフの集団感染

・公演期間は6月30日(火)~7月5日(日)。7月6日、出演者の1人からTwitterにて新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染報告があり、7月7日に主催者が発表

・7月10日、保健所から、全キャスト及び全スタッフが濃厚接触者と指定された旨の連絡と、全員自宅待機の指示があったとのこと。

・7月10日時点で、出演者・スタッフ合わせて12名に、新型コロナウイルス検査[PCR検査]の陽性反応が出ており、残りのキャスト・スタッフはPCR検査結果待ちのようです。出演者は20~30代で軽症が多いようですが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19) は発症1週間~10日後に肺炎症状が増悪し重症化することがあります。自宅待機中は外出を制限し、体調の変化に注意を払い、おかしいなと思ったら保健所や病院に相談するという手順を定型化したほうがいいです。どうか無理しないで治してください。

①舞台出演者に感染者が1人でもいたら、感染はキャストやスタッフに広がる

👉感染を拡大させるハイリスク環境は三密=下記の3つの条件が同時に重なる場所

1.密閉空間(換気の悪い密閉空間である)、
2.密集場所(多くの人が密集している)、
3.密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行われる)

👉感染を拡大させるハイリスク行為は「大声を出すこと」「歌を歌うこと」「咳やくしゃみ」。

👉濃厚接触者とは、『手で触れることの出来る距離で、必要な感染予防策なしで、「患者」と15分以上の接触があった者』です。※最後に濃厚接触者の詳細な定義を載せました。

接触とは「触れ合うこと」ですが、会話も接触に含まれています。

必要な感染予防策とはマスクの着用などです。

👉従来マスクの用途は咳やくしゃみの症状がある人のみが着用する咳エチケットでした。それが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防では、無症状あるいは症状が軽微な患者(感染者)から他の人への感染を防ぐために、すべての人がマスクをつけるユニバーサルマスキングという感染予防策が推奨されています。(WHO:新型コロナウイルス(COVID-19)に関わるマスク使用に関するアドバイス:暫定ガイダンス:2020 年 4 月 6 日 改訂版PDF

つまり、患者(感染者)とマスクなしで15分以上会話していると濃厚接触者です。

舞台上ではマスクは外していたでしょうし、発声する歌うことで口から飛沫は拡散します。

またお稽古中には出演者やスタッフ達で飲み会や食事などに行くこともあるでしょう。飲み会や食事時はマスクは外しますよね。仕事が終わったあとに集団で行く居酒屋やレストランでの夕飯は、お酒も入るし、長時間(1時間以上)食べたり飲んだりすると思います。

食べながら飲みながら話していると、当然に口から飛沫(唾液や痰)が飛び交います。微細な飛沫は目に見えません。その飛沫の中にウイルスが含まれており、口呼吸で対面相手の口の中に吸い込まれることがあるのです。

マスクを外した食事のときは、対人距離を取りましょう。顔を真正面で突き合わせて話したり、顔を近寄せて話すのも避ける。同じグラスの回し飲みや同じ皿の回し食いをしない。食事時の感染防止エチケットについては6月20日の記事に書きました。

  • 坂本史衣先生の記事も参考に。

②COVID-19 の感染経路は飛沫感染と接触感染

👉会話や咳やくしゃみなどで感染者の口や鼻から出るウイルスを含む飛沫が、手で触れることの出来る距離にいる人の目や鼻、口の粘膜から侵入し、感染が成立します(飛沫感染)。

👉ウイルスが含まれている飛沫に汚染された環境や物体に触れた後、口、鼻、または目に触れて間接的に感染する場合もあります(接触感染)。

👉飛沫感染と接触感染のどちらが感染の成立、感染者増加に寄与しているか。WHOは飛沫感染が主と述べています。接触感染が成立する場合は、感染者との密接な接触があることも多く、区別がつきにくいとされています。(WHO:Transmission of SARS-CoV-2: implications for infection prevention precautions:9 July 2020

避けるべきは飛沫に含まれているウイルスなのですが、ウイルスは目に見えないために、飛沫を避けるという方法で感染経路を遮断する。

それが個人では、人との身体的距離を取る=ソーシャル・ディスタンス(Social Distancing)とマスク着用、手洗いと手指消毒です。

環境的な感染対策は、外気を取り入れて屋内の空気を排出・入れ替える(換気)、不特定多数のひとが手で頻繁に触れる部分(高頻度接触部位)の消毒、キャッシュレス決済やスマホチケットなど人と人の直接的な接触を減らすためのシステムの導入などがあります。


厚生労働省 新型コロナウイルス感染症の予防

③クラスター発生の影響

その1)陽性反応が出た『THE★JINRO』出演者が次に出演する予定だった東京公演(7月10日~19日)が中止となっています。

SHUN先生のInstagramでの告知を見て面白そうだなと思っていた舞台なのでショックでした。ただえーっと、『THE★JINRO』7月5日千秋楽で、7月10日から次の舞台に出演ということで、合間にお稽古に出ていたんでしょうか。その場合は感染してた方と一緒にお稽古していた次の舞台の出演者も濃厚接触者に該当するのでは・・・大丈夫ですか。

その2)別の陽性反応が出た出演者の方の次の舞台(2020年7月23日(祝木)~8月2日(日))は、顔合わせのみだったようですが、出演者はPCR検査を受け、結果後にお稽古を開始するそうです。

感染は陽性反応が出た方の責任とはいえません。現在の東京都、中でも新宿区の感染は拡大しています。危うい状況です。正直どこでウイルスを拾うか詳細不明です。そんな中で真面目に律儀に感染拡大防止に取り組むことが公演再開に繋がると信じています。


2.観客席の感染

7月9日に、7月4日の昼夜2公演の観客と6月30日昼公演の観客の二人の方から、陽性という連絡があったと主催者発表

主催者側は発熱等の症状がある場合は保健所、帰国者・接触者相談センターに相談するように呼びかけています。ただ保健所の指導では、観劇客は出演者との濃厚接触者には当たらないということなので、事実関係を確認中のようです。

公演中に出演者やスタッフが観客と接触する機会がどれだけあるのか。

陽性反応が出た観客の方と周りの観客の方はどの程度、接触していたのか。

公演公式サイトの[2020.06.29 新型コロナウイルス感染症対策について]と新宿シアターモリエールが公表している感染予防策の詳細では、劇場内の消毒や座席の配置などは対策を取っているようです。

ただ人間の行動は身について習慣化するのに反復動作による訓練が必要になるので、マニュアルやガイドラインに記載されている項目もどこまで行動に染み通っていたかというのは不明です。私は公演を観劇していないし、新宿シアターモリエールも行ったことがないんですね。

記載がないのですが、入り出待ちなどはどうなっていたのか。SNSの噂では出待ち禁止アナウンスはあったが、楽屋口にファンが待っていて出演者の一部が対応していたと言われています。最前列はフェイスシールド着用だったが遵守されていなかったとか??

主催者の株式会社ライズコミュニケーション側からは、「現時点において、感染経路については明確になってはおりませんが、舞台をご覧になっていただきました方々の中に、発熱等の症状がある方がいらっしゃいましたら、速やかに、お近くの保健所、帰国者・接触者相談センターにご相談くださいますようお願いいたします。」との告知がなされています。

発熱や咳、味覚や嗅覚に異常を感じた場合は地元の保健所や帰国者・接触者相談センターに問い合わせすることをおすすめします。


●※「濃厚接触者」の定義
「患者(確定例)」(「無症状病原体保有者」を含む。以下同じ。)の感染可能期間*に接触した者のうち、次の範囲に該当する者である。*感染可能期間とは、コロナウイルス感染症を疑う症状を呈した2日前から隔離開始までの期間

・ 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者
・ 適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護若しくは介護していた者
・ 患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い
・ その他: 手で触れることの出来る距離(目安として1 メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と15 分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)。

(国立感染症研究所 感染症疫学センター新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2020年5月29日暫定版)