星組『宝塚ジャポニズム~序破急~』のDVD映像をキャトルレーヴで観て(観劇は1回)、星組が台湾公演に持って行く和物が、このショーで良かったと思った。序破急の3部で構成される宝塚ジャポニズムは舞踊ファンタジーと銘打たれ、日本舞踊でもなく、西洋レビューでもない、不思議な美しさがあった。
“序”のテーマは「和」。「さくら幻想曲」で幕開けしたが、柚希礼音が1人で舞い始めると思っておらず、意表を突かれた。
柚希はさらさらと桜の花びらをまき散らしながら、ひたすら舞い続ける。桜の娘Sの夢咲ねねや、桜の若衆Aの紅ゆずる、同じく桜の若衆Aの真風涼帆も登場し、徐々に組子が増えていき、総踊りになる。それでも桜の若衆S柚希の舞は止まらない。
宝塚歌劇団が誇る星組トップスター柚希礼音は、組子が模して舞う満開の桜に舞い散る桜吹雪の中、まばゆいばかりのスターオーラを放ち、舞い踊る。序は、ただただそのことに驚嘆した。
“破”のテーマは「祈り」。「千体仏」が流れ、薬師寺の副住職村上太胤師の声明が響き、弥勒菩薩に扮した松本悠里が舞い、大日如来の柚希礼音と組子達が千体仏として現れる。ここは声明の荘厳さに胸打たれ、唱和される「人みな幸せに」という切なる願いに、息をのんだ。
仏達にはどちらかというと、きらびやかさにびっくりした(^^;
“急”では、若衆紅ゆずるが歌う「荒城の月」で始まり、桜の木の下で、淀君役の松本悠里が踊る。天守閣をのぞむ広場では、豊臣秀頼役の柚希礼音、千姫役の夢咲ねねが仲むつまじい舞を見せる。そこに徳川の軍勢が襲いかかり、秀頼は刃に倒れ、城からは火の手が上がる。
“急”のテーマは、「矜」。勉強不足だったのだが、「矜」という文字には、「自負する。誇る」「憐れむ」という2つの意味があるという。2011年3月11日に東日本大震災と津波、そして原発事故によって日本という国に住む私たちが受けた傷は、尋常なものではなく、丸2年を前にして、苦しみは続いている。
盛者必衰のことわりあれど、生きているものは生きたいと願う。その願いに、義援金という形で手をさしのべてくれた台湾の人たちに、お礼を伝えてきてください。日本語は通じないかも知れないけれど、その舞で。
ありがとう、私たちは生きています。
星組の皆様、スタッフの皆様、ハードスケジュールなので体に気をつけてくださいませ。
■主演・・・柚希礼音、夢咲ねね
舞踊ファンタジー『宝塚ジャポニズム ~序破急~』
作・演出/植田紳爾
特別出演・・・(専科)松本悠里
国立中正文化中心 台北国家戯劇院 公演期間: 2013年4月6日(土)~4月14日(日)