[Stage] 『WEST SIDE STOY in STAGE ROUND』来日版/日本人キャスト版

IHIステージアラウンド東京で、【来日キャスト版】と【日本人キャスト版Season1 】の『WEST SIDE STOY』を観劇しました。

  • 来日キャスト版(10/27)千秋楽
  • 日本キャスト版Season1 (11/12)

WSSは1957年のブロードウェイ初演から62年経過したにも関わらず、世界各地で再演を繰り返し、劇団四季でロングラン(残念ながら未見)、宝塚歌劇では昨年宙組が上演。来年12月にはスティーヴン・スピルバーグ監督によるリメイク版映画が全米公開予定というロングラン作品。

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ウェスト・サイド・ストーリー in ステージアラウンド

ステアラで初観劇

360度回転する円形劇場というステージ・アラウンド初体験でした。幕の代わりに可動式スクリーンが設置され、円形のステージの真ん中に観客席が円盤状に並ぶ。観客席が回転し、スクリーンにプロジェクション・マッピングが投影され、正面に見えるステージの切り替え(転換)を行う。劇場全体が舞台装置という大掛かりな仕掛けの施された劇場で、世界的には2010年にオランダ・アムステルダム郊外に建設された「Theater Hangaar」に次ぐ2つめという。

ステアラで上演されるのは、ステアラ専用の演目か、従来型劇場向けの演目をステアラに合わせて作り直した演目か、になるのでしょう。昨年まで上演されていた劇団☆新感線の『髑髏城の七人』花鳥風月極と新感線☆RS『メタルマクベス』は前者、『ウェスト・サイド・ストーリー』は後者だと思います。映画でも4DXが増えてきましたが、新技術を使った表現を模索するのはクリエイターにとって腕の見せどころ。

実際に観劇してみると、目の前の光景が移動していくのが、メリーゴーラウンドに乗っているようでもあり、電車に乗っているようでもあり、不思議な感覚でした。360度回転が謳い文句ですが、移動は180度くらいかな。音響・照明ブースは観客席の最後方に設置され、後ろを振り返ると指揮者がスクリーンに映っていた気がするので、オケピは後方に配置されるのかな?

舞台スペースが広いため、目の前にドクの2階建ての店、マリアの住む2階建ての家、スラムの一角と通常の3つ分の舞台セットが並び、観客席間近を本物そっくりのバイクが走る。ブロードウェイ直輸入の舞台セットの精密さも相まって、ニューヨークの街並みを再現し、虚構の世界に奥行きをもたせようとしているのが判りました。

芝居とは別に、劇場の仕組みから感じる不思議な感覚が面白かったのですが、人によってはノイズになるのかも。

観客席が動くために公式サイトには注意事項が掲載されています。

※特殊な劇場のため、途中入退場が難しいシーンが多く、お座席にご案内できない時間がございます。長時間お入り頂けない場合もございますので、開演時間には余裕を持ってお越しください。

来日版で使用したブロードウェイ直輸入の舞台セットを、日本人キャスト版Season1~3でも使用継続するようです。ステアラは赤坂ACTシアターと同じTBSの劇場なんですね。赤坂ACTシアターもちょくちょくお世話になる(主に宝塚で)。次回は豊洲市場見学と合わせて行きたい。

映画を見ているような来日版

ブロードウェイ・ミュージカル来日版はオーディションで選抜されたキャストだそうで、さすが来日版と思ったのは、肌の色、髪の色や毛質、瞳の色、顔立ち、身長の高低、体格のばらつきが、日本人が扮装するのと違ってナチュラル。そして身についているニューヨーク現地の空気を持ち込み、そのまま演じる。映画を見ているようでした。そして歌とダンスの見事さはさすがブロードウェイ。

この物語が半世紀以上経っても魅力を放ち続けるのは、アーサー・ローレンツによる脚本の力が大きいことを感じます。宙組版が記憶にあるので物語の流れで舞台を見ていて、セリフ(英語)はスクリーンに映し出される字幕で補いましたが、ストーリーの中でのそれぞれの登場人物の位置づけが明確なため、感情の流れが、セリフがわからないでも演技で理解できたりする。

物語の中心が、ポーランド系移民のトニー(Trevor James Berger)とプエルトリコ系移民のマリア(Sonya Balsara)の電撃的な出会いと恋というのも、Boy Meets Girlは、普遍的なお約束という証。

アニータ(Adriana Negron)とマリアが話している時に「英語で話して!」と言っていたけれど、マリアにすればスパニッシュで挨拶しようとするトニーは優しく好ましい青年だった。プエルトリコではスペイン語で話していても、アメリカで生きていこうとすると英語を使いこなさなければならない。そういう感覚は日本人は弱い。

音楽レナード・バーンスタインと作詞スティーブン・ソンドハイムによる素晴らしい楽曲の数々の中でも、来日版では、Tonightのフレーズの美しさが耳に残り離れない。トニーがマリアと歌う声の甘さ。あの世界の中で唯一の傷ついていないものとの出会い。そして2人で歌うTonight。憧れを込めたトニーの声が印象に残こる。

Tonight:Quintetでは、JetsとSharks、ベルナルド(George Akram)のために部屋で準備するアニータ、自室にいるマリア、マリアを思うトニーが同時に舞台に存在し、ステアラのステージの広さが存分に生かされていました。

日本人が演じる『WEST SIDE STOY』

日本人キャスト版はSeason3まで予定されていて、全てトニーとマリア、アニータ、リフ、ベルナルドがWキャストです。

11月12日に観劇しましたが、WSSってほんと難しい演目だなと再認識。11月6日初日から1週間足らずで、まだ全体的にこなれていない印象を受けました。WSSはミュージカルの古典で、ガッツリ踊って、濃い芝居でガッツリ歌う。歌と踊りと芝居が有機的に繋がり融合していなければならない。1950年代の米国のリアルを日本人が頭で理解してメイクやカツラで形を整えても、身体に入るには時間がかかるのかなと。

日本人キャストだと日本語で話すので当然に芝居を見てしまうのですが、ミュージカル初出演の宮野真守さんは、「いきなり歌い出すミュージカルの謎」に直面していたようです。笹本玲奈さんもMariaの高音がまだかなと思いました。アニータとリフが良いなって思ったら、劇団四季でアニータ役だった樋口麻美さんとトニー役だった小野田龍之介さんでした。経験値の高さがにじみ出てました。

Wキャストとはいえ2か月の長丁場のようなので、1月の公演は違うものになっているのでしょう。

11月12日の出演者

  • トニー:宮野真守
  • マリア:笹本玲奈
  • アニータ:樋口麻美
  • リフ:小野田龍之介
  • ベルナルド:水田航生
  • ドク:小林隆
  • シュランク:堀部圭亮
  • クラプキ:吉田ウーロン太
  • グラッドハンド:レ・ロマネスクTOBI
日本人キャスト配役表

WSSでは私はエニィバディズ(Anybodys)が気になる存在で、今回も伊藤かの子さんに注目してみました。女の身でJetsに入りたいとジーンズとシャツ姿のエニィバディズ。勝ち気で気が強いけれど、どこか脆さが見えるエニィバディズ。

エニィバディズの存在というのは、WSSの先見性を表すものであり、彼女がBALLETで、”Somewhere”のリードを歌うのは、人種や性別を超えた”どこか”を最も夢見ているのはエニィバディズ(だれでも、だれも、だれか)だという象徴だと思っているのです。

宙組版の夢白あやによるエニボディーズは、中性的で透明感があり、ものすごい好きだったんです。娘役が演じるからJetsに娘役が混じってるってハッキリ判るしね。

ラストは宙組版とちょっと違っていて、あっけない幕切れに感じましたが、来日版がオリジナルなのかな?ちょっとしたことで随分と印象が違いました。