[Art] あいちトリエンナーレ2019閉幕に寄せて

10月14日に閉幕した「あいちトリエンナーレ2019」。入場者数は65万人以上は「あいちトリエンナーレ」史上最高記録だそうです。

10月8日に一時中止していた作品や企画がフルオープンし、全て揃っての閉幕でした。一時‬中止していた作家の皆さんにも連絡を取り、すべての作品を揃えての閉幕にこぎつけたパワーに敬意を表します。再開後は作家やアーティストの方もたくさん閲覧にいらしていた感じでした。

スタッフやボランティアの皆様もとても親切でした。
関係者の皆様、お疲れさまでした。ありがとうございました。

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国際芸術展あいちトリエンナーレ2019

あいちトリエンナーレは2010年から愛知県で3年毎に開催されている国際芸術展です。

今年は、ジャーナリストの 津田大介 (@tsuda) Twitter さんが芸術監督を務め、参加作家の男女平等、ジェンダーフリーを目指すと宣言されていたので、6月にフリーパス券を買い、8月1日から10月14日の会期中のどこかで行く心づもりでした。

男女平等も気になりましたが、「情の時代」という大枠の【コンセプト】が気なって、「情の時代」のアートとはどういうものか、同じ時代を生きる人たちが作ったアートとはどういうものか、というのに興味がありました。

そしたら開幕3日の8月3日に出展企画のひとつである「表現の不自由展・その後」が脅迫行為への安全性確保のために展示中止となって大騒動が巻き起こりました。

(津田さん、また炎上してる。今回は規模が大きいな)←内心

会場が愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、四道堂・円頓寺、豊田市美術館と分かれていて展示作品数も膨大で、遠征回数が増えました。

あいちトリエンナーレ各会場

「表現の不自由展・その後」の展示中止騒動

展示中止になった「表現の不自由展・その後」は、公共の文化施設等での作品展示が不許可になった作品を集めて展示したもので、テーマは慰安婦問題関連の『平和の少女像』のほか、憲法9条、昭和天皇や戦争、米軍基地、原発、人種差別などで、参加作家は16組。

【出展作家:https://censorship.social/artists/

展示への脅迫FAXには作品を撤去しなければガソリン携行缶を持参するという、京都アニメーションの惨劇を想起させるものもあり(このFAXの送り主はすでに逮捕済み)、安全性確保の問題と記者会見での津田さんのコメントによると、抗議電話等への応対に疲弊した職員を気遣ったというのも展示中止の理由のひとつのようです。

ニュースを聞いた時は、(燃えやすそうな題材ばかりを集めたなぁ)という内心でした。8月3日時点では電話やメール、FAX等による抗議や批判が集中したのは2作品だったそうです。

燃えやすそうな題材というのは、論点が多岐にわたるため誤解や曲解が起きやすく、対立軸になりやすい、感情的な争いになりやすいテーマという意味です。具体的には憲法改正、天皇制、大東亜戦争関連、慰安婦問題、日米安保・安全保障、福島の原発事故、差別・不平等などの人権問題。

朝日新聞デジタル >【「表現の不自由展」中止)

企画自体がアート作品展示の不許可は検閲であるというテーマを内包しており、その展示作品が中止となったことに、「作品の検閲である」、「表現の自由が損なわれている」という批判が出るのは当然の成り行きです。海外作家の展示中止や展示変更などの抗議活動、国内外からのステートメントの発表が相次ぎました。

経緯は美術手帖に詳しいです。 >【あいちトリエンナーレ

他にもコンセプトに合わない政治性の高い企画や作品を選ぶからだ、開幕前から警備体制をもっと堅牢にしておけ、始めたんだから不退転の決意で挑め等の芸術監督である津田さんへの批判も続出。

展示辞退を受けて津田さんの盟友の 東浩紀 (@hazuma) · Twitter さんが企画アドバイザーを辞任し、ここで津田さんも芸術監督を辞任したら、あいちトリエンナーレ2019は瓦解するだろうなと思ったのが8月末でした。

展示中止中の「表現の不自由展・その後」

現代アートのお祭りとしてのあいちトリエンナーレ

ひとまず行って見てみたいと9月の観劇遠征に合わせて、あいちトリエンナーレに行く計画を立てました。

展示中止の原因となった抗議電話等は展示作品を見てない人からのものも多かったとか。

観劇ライフでは生の舞台に勝るものはないんですよ!

アート作品も生で味わうものでしょう。

気になっていたのは、あいちトリエンナーレ全体としての政治性と芸術性のバランス。

あいちトリエンナーレは国際芸術祭なので、出展作品や企画は政治プロパガンダ作品ではなくアート作品であってほしかった。

個別の感想はInstagramに載せてますが、実際に見に行って、あいちトリエンナーレは国内外の芸術作品を集めたお祭りであり、地域の文化振興をはかるものであるという意義もわかりました。勉強になりました。

現代アートは苦手分野だったんですが、現代アートと言っても表現技法は多種多様で、今回のあいトリは、絵画や版画、彫刻という従来的な技法の作品よりも、映像やパフォーミングアーツ、複合的なものが多い気がしました。

個人的には歴史的・社会的・時事的なジャーナリスティックな視点がある作品のほうが背景や文脈から作品を読めるので、私は見やすかった。抽象的なアート作品やテクノロジーとアートの融合のような作品も示唆に富んで刺激的で、今後、他のものを見る時はもう少し考えられる気がします。

細かいことがわからなくてもいいものはいい。

すごいものはすごい。

そういう作品もありました。

肝心の「表現の不自由展・その後」は再開後も抽選に外れて見れなかったし、展示や企画が膨大で取りこぼしも多かったですけれど、大満足。フリーパス券3,000円は安い。

文化庁「文化資源活用推進事業」の補助金不交付決定

9月26日に、文化庁が「あいちトリエンナーレ2019」に対して、「文化資源活用推進事業」(「日本博を契機とする文化資源コンテンツ創成事業」)の補助金全額(約7800万円)の不交付を決定しました。

宮田文化庁長官ではなく、萩生田光一文部科学相が報道の取材に答えて発表するという不可思議な光景でした。

「あいちトリエンナーレのあり方検証委員会」での議論を受けて、「表現の不自由展・その後」の展示再開決定のニュースが流れたのが9月30日。

抗議の展示中止や再設定をしていた作品を含めて、全面再開したのが8日午後。

10月15日の参議院予算委員会において宮田亮平文化庁長官は、立憲民主党・福山哲郎議員の質問への回答で「不交付決定を見直す必要はない」と述べたそうです。

萩生田光一文部科学相によると、不交付決定の理由は、「実現可能な内容であるか、継続性があるかの2点で疑念をもち、これまで慎重な審査をしてきた。残念ながら申請のあった内容通りの展示会が実現できておらず、補助金適正化法などを根拠に交付を見送った」。

宮田文化庁長官によると、不交付決定の理由は、「来場者を含め展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実を認識していたにもかかわらず、それらの事実を事前に申告していなかった」。

文化庁>あいちトリエンナーレに対する補助金の取扱いについて

選考審査で交付決定された補助金が該当事業の終了前に不交付が決定されるのは、異例のことだと思います。この文化庁の不交付決定の審査は、その経緯が議事録にも残されておらず不透明で、他の省庁の補助金や助成金、研究費への影響も考えると、後々に禍根を残すのではないしょうか。

あいちトリエンナーレ2022 の開催は決まったそうですが、文化庁は文化や芸術の発展の際に起こる摩擦や軋轢にも、敬意を表して欲しいものです。その摩擦や軋轢を経て生み出された成果や再評価されたアートというものを、私達は歴史上の事例から学んできた。

文化庁が事業終了を待たずに不交付を決定したのは、懲罰的措置、検閲的行為とも見えます。一度交付を決定したのであれば、事業終了後の実績報告書を受け付け、審査・確認を行い、補助金の額の確定を行う手続きを行うように、見直して欲しいものです。

あいトリ2019を「表現の自由」のシンボルへ

全ての展示再開という「共通したひとつのゴール」を目指す、トリエンナーレ参加作家によるプロジェクト「ReFreedom_Aichi」が結成され、様々な取り組みを行ったそうです。

【ReFreedom_Aichi https://www.refreedomaichi.net/
※ただいま補助金不交付の撤回要求への賛同者を募っています。

あいちトリエンナーレ実行委員会などとの交渉・協議や、展示再開に合わせて、作家・アーティストの方たちが「Jコールセンター」を設け、抗議電話等への対応を行ったとか。

アーティストの皆さんの自主的な活動が展示再開の促進剤として働いたのは間違いないと思います。津田さんが言うように、人間は連帯することができる生き物です。

この成果が、未来に繋がる大きな糧となりますよう。

ウーゴ・ロンディノーネ《孤独のボキャブラリー》@愛知芸術文化センター

津田芸術監督の【コンセプト】から一部抜粋して置いておきます。

われわれは、情によって情を飼いならす(tameする)技(ars)を身につけなければならない。それこそが本来の「アート」ではなかったか。

あいちトリエンナーレ2019芸術監督
津田大介