[Art] クリムト、シーレとウィーン

『クリムト展 ウィーンと日本1900』

豊田市美術館で開催していた『クリムト展 ウィーンと日本1900』

過去最大級と銘打たれた、19世紀末ウィーンを代表する画家グスタフ・クリムト(1862-1918)の展示会です。 今年は、日本・オーストリア外交樹立150周年記念とクリムトとその弟子であるエゴン・シーレ(1890-1918)の没後100周年が重なっているということです。

あいちトリエンナーレと同時開催だったので、10月11日に立ち寄りました。17時閉館で入ったのが、16時だったので駆け足もいいとこでしたが、10月14日までだったので行けただけでもラッキーでした。

豊田市美術館

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月組が公演中の『I AM FROM AUSTRIA-故郷は甘き調べ-』も日本オーストリア友好150周年記念。下記の『ウィーン・モダン展』ではウィーンの街並みの変遷も映像で流されていて、公演と合わせて を見ると、オーストリアから米国ハリウッドに渡って「自由な気持ちになれた」という女優エマ (美園さくら) の気持ちを想像できて、面白かったです。

オーストリア・ウィーン関連の催し。

大阪・中之島の国立国際美術館では、日本・オーストリア外交樹立150周年記念『ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道』 を開催中(12/8)まで。音声ガイドは城田優氏だった。←トート。
☆上野の国立西洋美術館では、今日(10/19)から、日本・オーストリア友好150周年記念ハプスブルク展-600年にわたる帝国コレクションの歴史』が開催されます。こちらの音声ガイドはお花様(花總まり)。←シシィ。

クリムトのタペストリー@豊田市美術館

クリムトは、保守的な既存の芸術から〈分離〉することを目指して「ウィーン分離派」を結成した中心人物だそうですが、その作品の初期の絵画から展示してあり、日本画・浮世絵・春画の影響などで、画風がはっきり変わっていく時期がわかります。

写実的な人物画や風景画から一線を画し、 構図も色使いもタッチも独特になり、抽象的で寓話的で暗喩的で、色鮮やかな作品が並ぶ。

見ごたえがあったのは、ベートーヴェンの交響曲第9番に着想を得たという全長34メートルを超える壁画《ベートーヴェン・フリーズ》 の原寸大複製です。

交響曲第9番 が流れる部屋の左の壁には、乙女に見送られて旅立つ黄金の戦士の 「幸福への憧れ」。 真ん中の 怪物テュフォンとゴルゴン三人姉妹、死や呪いを描いた 「敵対する力」。右の壁には抱き合う男女を囲んで 「歓喜の歌」を歌う合唱隊。 神話や伝説というより人の世界の出来事を図象化したようにも見える。

クリムトとシーレの没後100周年記念
映画『クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代』

塚口サンサン劇場にて。クリムトの作風は官能的でエロティシズムが備わっているといると言われますが、弟子のエゴン・シーレはクリムトよりも更に死や性行為を取り上げた裸体画が多かったので、長らくポルノ作家扱いだった。

エゴン・シーレのオンラインデータベース「egonschieleonline.org」。

批判や摩擦は多かったものの芸術家として名声を確立したクリムトに比べて、28歳で亡くなったシーレの作品が芸術として再評価されたのは最近だそう。映画ではその再評価が面白かったですね。

「人間の感情をここまで描いた芸術というのは他にありません」。

荒々しい独特のタッチで色使いは茶や黒を多用するシーレの絵は妙に惹きつけられる。クリムトがクラッシック(ベートーヴェン)なら、シーレはロック。

クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代@塚口サンサン劇場

日本・オーストリア外交樹立150周年記念
『ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道』

『ウイーン・モダン展』は、18世紀の 女帝マリア・テレジアの肖像画から始まり、19世紀末のクリムト、シーレに代表されるウィーン世紀末の作品を取り上げています。ウィーン・ミュージアム蔵のもの。100年間に起きた文化・芸術・ 風俗の変遷や流行を、絵画、建築、音楽、ファッション、食器や家具などの作品でたどっていく。

結婚したばかりの若き皇帝フランツ・ヨーゼフ1世と皇后エリザベートの肖像画もあって、日本での展示会に、これは外せないだろうと思いました。

印象的に残ったのは、20世紀のオーストリアを代表する建築家ヨーゼフ・ホフマンの美しいデザインの家具や調度品です。直線的な幾何学模様を取り入れた白と黒のバイカラーのすっきりしたデザインが目を引く。 下の看板もその様式です。

月組公演『I AM FROM AUSTRIA』でハリウッド女優のエマ(美園さくら)が着ている白と黒のバイカラーのミニのワンピースを思い出しました。 『I AM FROM AUSTRIA』 はオーストリアに住む現地の人に馴染みのあるアイコンがたくさん盛り込まれているんでしょうね。

ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道

ポスターになっている、グスタフ・クリムト《エミーリエ・フレーゲの肖像》は写真撮影可でした(フラッシュは禁止)。 クリムトは生涯未婚で、多くの女性と関係を持ち、非嫡出子も多いとされますが、そのクリムトの最愛の女性が エミーリエ・フレーゲ 。

エミーリエは2人の姉とウィーンでモードサロンを経営する起業家で聡明な女性だったようです。スタイルが良く、現存する写真でも9等身くらいに見えます。この絵のポイントはコルセットをつけず、ゆったりとした服を着ていること。エミーリエはコルセットをつけない改良服のデザインも手掛け、当時の最先端をいくファンション・リーダーだったとか。理由は不明ですが、エミーリエ自身はこの肖像画を気に入っていなかったそう。

ウィーン・モダン展@国立国際美術館

この3つを見て、新しいものが発表されると、スキャンダラスだった、反感を買った、批判が出たという注釈があったりして、芸術や文化の発展や展開の歴史は、摩擦の歴史でもあるんだなと理解しましたよ。