- キューティーステージ
- 『愛聖女(サントダムール)-Sainte♡d’Amour-』
- 作・演出/齋藤 吉正
チケット難で、バウホール公演なのにライブ中継が千秋楽の明日(7/7)予定されている、月組トップ娘役・愛希れいかの主演公演。観れることになってめちゃめちゃ楽しみにしていたのでしたが、良い作品でした。ハチャメチャっぷり、とんでもぶりが、まさしくサイトーの犯行でしたが、ちゃぴ様の愛されっぷりも感じて、感謝感激です。
こんなにオンナノコへのエールを感じた作品は珍しいかも。演じるちゃぴ様と月組子は今までにない体験だったかもしれませんが、出演できた娘役は逞しくなったと思うし、男役はみんな騎士道精神を任じられてより頼もしく!
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『雨に唄えば』『The Lsat Party』、本公演と月組の別箱を観てきて、 月組の大きな柱である愛希れいかが間もなく退団する、という事実を噛みしめた。
スカイ・ステージ・トーク リクエストDC#61「愛希れいか・咲妃みゆ」で、ちゃぴとみゆちゃんが、『ルパン -ARSÈNE LUPIN-』カーラ・ド・レルヌ役のことを話していて、あの時のちゃぴの張り詰めた印象を思い出しました。エネルギーを内に抱えて出し切れぬ、緊張の高さ。やはり難しい役だったのか(いまさら納得したよ)。ちゃぴのプロ意識の高さ、たゆまぬ努力、前向きさというのは、月組娘役(特に下級生)の憧れであり、お手本だと思うのですが、難役に当たったときの向き合い方というのも伝染するのか、と『雨に唄えば』でのキャシーに挑む、さくさく(美園さくら)の緊張度合いを思いました。くらげちゃん(海乃美月)は技術と経験を蓄積しているからか、『The Lsat Party』ではそこまで感じなかったけれど。
なのでサイトー先生が「もっと我が儘になっていいよ、やんちゃに暴れていいよ」(歌劇2018年7月号『愛聖女』対談)と、今の愛希れいかにこの作品をプレゼントしてくれて、本当に良かった。ちゃぴが『エリザベート』でエネルギーを解放するのに向けて。きっと叶う。
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さて『愛聖女-Sainte♡d’Amour-』。
「太陽フレアが導くリアル・ファンタジー」なんだそうですが、ストーリーはとんでもです。どこがリアルかというと、オンナノコの生態?とはいえ、種々雑多千差万別のオンナノコ全てには当て嵌まりまらないし、見て怒り出すオンナノコもいると思うので、そこは個人差です。
(あらすじ)時は21世紀、場所はフランスの中部にある街オルレアン。オルレアンといえば、15世紀のイングランドとフランスの百年戦争において、神の啓示を受けた乙女ジャンヌ・ダルクが、イングランド軍の包囲網から解放した街である。21世紀に至っても、ジャンヌ・ダルクは「オルレアンの乙女」と呼ばれ、フランス人の敬愛を受けている。その街にあるオルレアン工科大学のドクター・ジャンヌ(白雪さち花)の研究室ではタイムマシンの研究が行われている。
ある日、試作中のタイムマシンに乗り込んだドクター・ジャンヌが姿を消してしまう。その代わりのように現れたのは、ルーアンで火刑に処されようとしていたジャン・ダルク(愛希れいか)であった。その場に居合わせた大学生のパメラ(天紫珠李)は大喜びでジャンヌ・ダルクを彼氏のエルヴェ(輝生かなで)が待つ部屋に連れて帰る。パメラはジャンヌ・ダルクの熱狂的ファンで、毎年、オルレアンで開催されるジャンヌ・ダルクを讃えるミスコンテストに出場しているのだ。
一方、消えたドクター・ジャンヌは15世紀のフランスにタイムスリップし、ジル・ド・レ(紫門ゆりや)に、ジャンヌ・ダルクの代わりを務めるように説得される。ジルの画策は、ジャンヌ・ダルクを崇拝するファン・ドゥ・ファン(千海華蘭)には知らされず、ファンはジャンヌの真贋を疑うのだが、その時、太陽で爆発(フレア)が起こり、ファン・ファンも現代へ飛ばされてしまう。
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あらすじだけ書くと普通(どこがw)に見えますが、ドクター・ジャンヌやジャンヌ・ダルクが「モテモテちゃんになりたいわ」とか「私もモテモテちゃん?」とか歌って踊っちゃうわけですよ。パメラとエルヴェが「私達、バカップルなのぉー」と言って抱き合ったり、オルレアン工科大学の学生クララ(晴音アキ)がミスコン優勝を狙って、パメラをライバル視するんだけれど相手にされていない(パメラが優勝できるのかっていうと謎ですが)、自己中女子だったりで、これを序盤からやられると一体、なんだこりゃとか思ったりしちゃったのですが(笑)。
シリアスパートもちゃんとあって、担当はミスコンをプロデュースするロンドン市議会議員マリー・アルフォード(楓ゆき)、ミスコンで優勝を狙うオンドリィ兄妹のシドニー(夢奈瑠音)とアマンド(結愛かれん)。
ジェンダー規範すれすれネタやベタな笑いが満載だったりするけれど、バウ向け演目としてきっちり作っているので、サイトー先生は確信犯でしょう(石田先生は天然っぽい気がする)。観劇中に私が座った席の後方から男性の笑い声が何度も聞こえてきたので、男性には大受けだったようです。
だからね、オンナノコも正直になって、自由でも我が儘でも貪欲でも怒ってもいいの。正義感が強くて義侠心があって、とっても歌の上手なジャンヌ・ダルクがその象徴。パメラとエルヴェと仲間になり、シドニーとアマンドを叱咤激励して、世界を変えていくジャンヌ・ダルク。ちゃぴがほんとキュートで、パンフレットのキューティー愛希は初めて見る顔ばかりのような気がする。まなじりを決して、ふんってやってるのが好き。
悪役はベタでさ、マリーを陥れて、ミスコンをプロデュースするベッド・フォード(柊木絢斗)と悪者達。それに対するジャンヌ達5人が色違いの5色のジャージを着ているのだけれど、そんなに戦隊ものにしなくてもと思う趣味展開。とにかく19人総力挙げての演目で、研1までセリフ貰って、みんな必死に振り切ろうとして、生き生きしていた。サイトー先生の演目は、愛の戦いなんだな。キャストのものにするまでが戦いなの。
そしてフィナーレで19人の総踊り。黒の燕尾服の紫門ゆりやの麗しさ、千海華蘭のスタイリッシュさを筆頭に、黒のドレスの白雪さち花、晴音アキ、楓ゆきら娘役の美しさ。そこに白のドレスで舞い出でる愛希れいかの凜々さ。歌い出した「夢アモール」の端正さへの感動は、カッとんだ作品を見た後ならでは。盛大な拍手を送るばかり。
舞台にはスクリーンがかかっていて、そこにゲーム画面やセリフを映し出す。A-motionでも、これをやられてですね、キャストよりスクリーンを見てしまったという前歴があったので、今回は一所懸命、キャストに注意を向けました。ヨシマサテイスト出まくりです。
第Ⅰ幕S1「太陽が燃えている」、S2「炎」、S3「時をかける少女」とか、場面の名称とかも、さ……。
ジルとファン・ファンと3人で15世紀へ帰っていったジャンヌ・ダルクですが、どうか火刑をやり過ごして、落ちのびていますように。そんな歴史改変を七夕の夜にお願いしたいです。