[Art] 『ミケランジェロと理想の身体展』

遠征の空き時間に、国立西洋美術館で開催されている『ミケランジェロと理想の身体展』を覗いてきました。

ミケランジェロの傑作2点が初来日!〜国立西洋美術館「ミケランジェロと理想の身体」展|VOGUE Blog

上野公園は美術館・博物館が集まっていて、好きな場所です。散歩にも良いのですが、最近は合間に行くことが多いので、お目当てのものを見て帰るというのが多いのが残念。暑くなってきたし、ゆっくり歩くというのも日焼けが気になりますけれどね。

ミケランジェロ・ブオナローティというと、サン・ピエトロ大聖堂にある『ピエタ』像やアカデミア美術館収蔵の『ダヴィデ』像、システィーナ礼拝堂天井画が有名。宙組公演で真風さんが演じるレオナルド・ダ・ヴィンチと並び称されるルネサンス期の天才芸術家です。

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本展覧会の呼び物である、ミケランジェロ50歳時の作品《ダヴィデ=アポロ》(1530年頃)(↓左の絵はがき)と20歳時の作品《若き洗礼者ヨハネ》(1495-96年)(↓右の絵はがき)の彫刻2つ。

ミケランジェロと身体展

ミケランジェロの大理石彫刻は40点ほどしか現存していないそうですが、彼自身は「彫刻家」と称していたそうで、私もミケランジェロというとギリシャ美術系の彫刻のイメージがあります。特設サイトに「古代ギリシャ・ローマとルネサンスの作品約70点を比較しながら、両時代に追求された男性美、理想の身体を紹介」と書かれているように、筋肉もりもりの男性像がほとんどでした。(^^ゞ

ギリシャ彫刻の造り方も解説されていて、古代ギリシャではアスリートの身体をモデルに彫刻を造り、ルネサンス期の芸術家たちは、古代の彫刻作品から肉体や顔の造形を学んだという。彫刻は背後も見られるように設置されているので、人間の身体の筋肉の流れが見えて面白い。背後では背筋やお尻の筋肉の付き方や流れが重要らしい。年齢によっても筋肉の付き方や流れが変わるし。

古代ギリシャの彫刻では、片脚に体重を乗せて反対の肩を下げて身体のひねりを出す、コントラポストという表現形式が好まれ、展示されている像も、同じようなポージングが多い。そして、ギリシャ彫刻では個別から標準化(普遍化)に進み、彫刻の顔や肉体はみんな同じ造形で、持っている矢などの小道具で誰の像か区別するのだとか。

このギリシャ彫刻の像の造り方が、ミケランジェロの未完の像『ダヴィデ=アポロ』の判別論争(MUSEY)に繋がっている。『ダヴィデ=アポロ』は、「完成か未完か、主題が聖書の英雄ダヴィデかギリシャの神アポロか、などが明らかになっていないことから”謎の傑作”と言われている」という。

ミケランジェロの『ダヴィデ』像というと、アカデミア美術館収蔵で、レプリカがフィレンツェの「ミケランジェロ広場」に設置されている超有名なやつがありますが、まだあるんだね。

ギリシャ彫刻において、アポロは矢を持ち、ダビデは石投げ器を持つので区別するらしいのが、この像の武器は未完のままなので、ダヴィデ像なのか、アポロ像なのか判別がついてない。ミケランジェロは、この像の制作途中で、クレメンス七世に『最後の審判』制作のためにローマに呼ばれ、フィレンツェに戻れずに没します。穏やかな顔つきやまろやかな筋肉の付き方が、造形の成熟さを感じさせました。ミケランジェロ50代の傑作だそうです。

それから私が最も惹きつけられたのが、ミケランジェロ20歳の時の作品『若き洗礼者ヨハネ』です。この像はウベダ・エル・サルバドル聖堂に設置されていたのが、スペイン内戦により1936年に破壊され、内戦後に発見された、わずか14の石片(本来の姿の約40%)から修復されたもの。在りし日の写真と残された石片から細密な検討が行われ、3年かけて修復されたそうです。ほかに石片が見つかったときには復元が出来るように修復部分はマグネットで接着されているとか。

頭部は前面の目の部分は残っていたけれど、鼻から口、後頭部は逸失しているため、顔面は横半分で色が違っているのが見て取れます。足の部分と背後を支える支柱部分も修復部分で像の大半が白く真新しい。多分、在りし日の『若き洗礼者ヨハネ』像よりも芸術性や美しさの評価は下がるのだろうけれど、スペイン内戦(1936~1939)とその後に続くフランコ体制下の独裁(1939~1975)を考えると、修復への祈りのようなものを勝手に感じて、見入っていました。

それから写真撮影が可能となっている《ラオコーン》像。1506年にローマ皇帝ネロの大宮殿ドムス・アウレアの近くのブドウ畑から出土し、ミケランジェロに大いなる影響を与えたといわれるものです。

トロイアの神官ラオコーンはトロイの木馬がギリシア軍の計略であることを見抜き、槍を投げつけたが、女神アテナによって遣わされた海蛇に襲われて彼の2人の息子と共に殺されたという。像は海蛇に襲われるラオコーンと2人の息子。

ラオコーン像

 

ラオコーン像背後

 

 

最近は、観劇で埋まるスケジュールですが、久しぶりに美術展に行くと、別の形でリフレッシュされるので、楽しかった。いいねえ。また何か行こう。