[Zuka] 月組『カンパニー』(1)

フルタイトルは、『カンパニー -努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)-』。原作は、単に『カンパニー』なんですが、サブタイトルに石田先生の思いが詰まっているんだろうなぁ、という長いタイトル。ブログタイトルではサブタイは省略しました。

石田先生の作品は合う合わないがあるらしいのですが、私は基本的には合う方で、2017年は担当作がなかったのでお久しぶり的な感じがありました。本作は偶然に初日(2/9)に観劇することが出来て、その翌々日(2/11)にも観劇して、楽しくてハートフルな佳作だと思ったりしたわけです。

ミュージカル・プレイ
『カンパニー -努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)-』
脚本・演出/石田 昌也

~原作 伊吹 有喜『カンパニー』(新潮社刊)~

カンパニー  

カンパニー(伊吹 有喜)
新潮社 2017-05-22
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宝塚版のストーリーはおおよそ原作通りだが、人物設定は宝塚に合わせて変更されている。原作の青柳は47歳・妻子に逃げられ離婚・失敗したら戻るところはない出向で、うらぶれたサラリーマン。宝塚版で珠城りょう演じる青柳は35歳・空手柔道書道の有段者・相思相愛の妻が2年前に病没・同僚を庇って出向と有能で将来有望なイケメン・サラリーマン。出向先で世界的プリンシパルや人気パフォーマンサーと知り合って、美人バレリーナにロックオンされ、社名変更の記念公演のプロデューサーというと大役を任せている印象になってしまう。そのためか、青柳(珠城)が言う「(社から)戦力外通告」に実感が沸かないが、総務畑一筋の青柳からしたら、総務に向かないと言われた感じなのだろうか。

珠城さんの青柳さんはコツコツと実直に信頼を積み上げていくタイプで、絵面的には地味になりがちだけれども、バーレッスン中にワイシャツ姿で汗を拭いている時の肩幅に釘付けになり、そんな所で魅力を振りまく珠城さんでした。似合う、サラリーマンというか、スーツ姿。くたびれてないのが良いんだな。(冒頭の満員電車ではくたびれたサラリーマンが複数名、つり革を握っているけど)。

私は珠城さんがトップに就任してからの月組の大劇場公演は総力戦が似合うと思っているけれど、それは月組のスター達による群像劇(グランドホテル、AfO)でありながらも、珠城りょうという存在が鮮明に印象に残るからである。今回も美弥るりかの華やかなプリンシパルや宇月 颯、月城かなとの人気スター達を相手にして、青年サラリーマン青柳はその爽やかな熱意で、周囲を巻き込んで仲間にしていった。誰もが知っている日々の中でどう夢を描くか、という難しさが現代日本を舞台にした日常ものにはあるが、この物語は青柳が、(現実を見ろという諦めを排して)夢を持って良いんだなという喜びを得たのが、観ている側には楽しいのかもしれない。

ちゃぴ様(愛希れいか)の高崎美波は、バレリーナでは食べていけず、コンビニで生活費を稼ぐ。コンビニの常連客、満員電車でスリに会った時に捕まえてくれた人と認識していた青柳が支援企業からバレエ団に出向してきて、胸をときめかせる。本番に弱く、バレエ団のプリマ紗良のアンダースタディであるが、チュチュを着て舞台で踊ると希望を放つ。その設定通りに、オデットの場面は透明な光を放ち、息をのむほど素晴らしい。代役の美波が怪我をした紗良に励まされ、青柳に元気づけられて、舞台に上がる。ひとつの舞台を最後まで終わらせようという努力と熱意。それがこの物語の山場となっている。ラストの祝賀パーティで黃色ベースのドレスを着たちゃぴが弾むように踊っているのがキュートでありました。

今夜(3/4)も月が綺麗です。月齢16.3

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続く…かもしれない(まだ書き切れてないいつもだいつも)。
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(あらすじ)有明製薬会社の総務課長である青柳誠二(珠城りょう)は、2年前に妻を亡くし、やる気の減退した日々を過ごしていた。そこに有明製薬とヘルシー・フーズとの合併が決まり、新会社設立に伴うメディア戦略が大々的に発表される。

  • オリンピックを目指すマラソンランナー鈴木舞(美園さくら)に専属トレーナー瀬川由衣(海乃 美月)をつけたての全面支援。
  • 人気パフォーマンス集団バーバリアンによるCMソング ”ブレーク・スルー”。
  • 社長令嬢の有明紗良(早乙女わかば)が所属する敷島バレエ団(敷島舞踊研究所)に世界的プリンシパル高野悠(美弥るりか)を招いての記念公演「白鳥の湖」の開催。

ところが鈴木舞(美園)ができちゃった結婚で引退し、その責任を取って瀬川(海乃)がリストラされそうになる。青柳(珠城)は瀬川を庇い、2人で敷島バレエ団の記念公演を担当するために出向となる。

オーストリアから帰国したばかりの高野(美弥)は、靱帯損傷の古傷や腰の故障などを抱え、白鳥の湖の王子役で全幕を踊るのは難しく、バレエ団を主宰する敷島 瑞穂(京 三紗)が振り付けた「新解釈版・白鳥の湖」で悪魔ロットバルトを踊りたいと希望する。王子は別の人間を探す事になるが、バーバリアンのリーダー阿久津(宇月 颯)がボーカルでバレエ経験がある水上 那由多(月城 かなと)にやらせたいと青柳達に申し出てくる。

青柳は、空手と柔道の有段者だが、バレエは全く門外漢で、高野や紗良(早乙女)バレエ団の高崎美波(愛希れいか)や長谷山 蒼太(暁 千星)らにレクチャーを受けながら、記念公演のプロデューサー兼何でも屋として動き出す。