2015年の宝塚歌劇は、キャラクターを全面に押し出した『ルパン三世』と『風の次郎吉』初演で明けましたね。(σ(・ω・*)んと…両方とも泥棒の話なことに今、気付いたよ)。
『ルパン三世』を1月初旬に観劇したときは、冬休みで子ども連れも多く、隣の席で小学生くらいの女の子が銭形マーチの場面で、手を叩いて大盛り上がりをしていましたが、今日は若い男女が隣で、アニメのほうの話をしていました。老若男女に好まれる娯楽色の強い演目は強いね。
手を変え品を変えって、やる方はもの凄く大変だと思うのですが、幅の広い層を引き寄せようと思うと、そうならざるを得ないというか。101年目は好スタートのようです。『Ernest in Love』と『白夜の誓い』はまた別項。
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雪組公演は3週間を超え、ルパン一家の再現率が上がっていた。
そして、各所で盛り上がるアドリブに合わせて、各場面のボルテージが上がっていた。特にルパン三世(早霧せいな)とベルサイユ宮殿を抜け出したマリー・アントワネット(咲妃みゆ)がでかけた「パリの街頭」(第9場)の場面の盛り上がりがすごい。初見から良い場面だったが、大道芸の主演女優を演じるマリー・ルゲイ(舞咲りん)の巧さが際立つようになってきた。
早霧ルパンが、「あら、ふぅ~じぃこぉちゃーん」と言っただけで、笑いが起きる。山田康雄は偉大だった。早霧せいなは、口調だけでなく、声音まで似せてきている。エライ。
早霧せいなは、すっきりとした容姿と清潔感のあるシャープな佇まいで、”ルパン三世”という存在がもともと内包している「うさんくささ」を消し去り、軽妙でコミカルな、人生を楽しむアヴァンチュリエ・ルパンという像を作り上げている。風変わりだけれど、いざとなれば知恵と工夫を凝らして夢をかなえるファンシー・ルパン三世。
そして、咲妃みゆは、宝塚歌劇ではマリー・アントワネットといえば、『ベルサイユのばら』でのフェルゼンとの報われない愛に生きた悲劇の王妃だが、『ルパン三世』のマリー・アントワネットは『ベルばら』のマリー・アントワネットとは全く違うマリー・アントワネットなので、演じ分けるのが難しかったと思うが、そこは咲妃みゆで、キュートで無邪気に演じ、カペー一家の行く末にふさわしいマリー・アントワネットだった。
『ベルサイユのばら』の名場面やセリフが盛り込まれているのはオマージュなのか、ウィットのきいたパロディなのか、細部までつらつら考えていると、小柳 奈穂子氏のクレバーさが冴えわたる脚本だなぁと感嘆しきり。
【あらすじ】
現代のフランスで展示されている「マリー・アントワネットの首飾り」を盗みに入った、ルパン三世と次元大介(彩風 咲奈)、石川五エ門(彩凪 翔)、峰不二子(大湖 せしる)は、宝石を目の前にして、フランス革命でマリー・アントワネット(咲妃)が処刑される8年前(1985年)のベルサイユ宮殿にタイムスリップしてしまう。ルパンを逮捕しようと食い下がる銭形のとっつぁん(夢乃 聖夏)のおまけつきで。
タイムスリップしたルパンたちが見たものは、ルイ16世(鳳翔 大)とマリー・アントワネット(咲妃みゆ)が出席する華やかな舞踏会であった。ルパンは、タイムスリップの謎を解き、自分達の時代戻るために、謎の錬金術師カリオストロ伯爵(望海 風斗)に会いに行く。そこで明らかになったのは、「マリアの涙」と五百の宝石が揃ったときに望みが叶うという秘術である。
五百の宝石とは、ルイ15世が作らせ、マリー・アントワネットを巻き込み評判を決定的に落とした、あの「マリー・アントワネットの首飾り」と符合する。そして「マリアの涙」とはハプスブルク家の秘宝と言われ、オーストリア女帝マリア・テレジアが輿入れする愛娘マリー・アントワネットに持たせたものだ。
ルパン(早霧)は、俺は詐欺師で錬金術師じゃないと主張するカリオストロ伯爵(望海)を口説き落とし、カリオストロ伯爵の仲間のセラフィーナ(有沙 瞳)やジャンヌ(透水 さらさ)、レトー(月城 かなと)達と、「マリー・アントワネットの首飾り」と「マリアの涙」を盗み出す作戦を開始する。
この第6場「カタコンベ」は、カリオストロ伯爵(望海風斗)のスタンスと対比して、ルパン三世達のスタンスをクリアに見せる場面になっている。
錬金術師を目指したが魔術なんてないどうせ俺は夢と嘘をこねて人を騙す詐欺師だぜ、と世を拗ねて斜め目線で生きるカリオストロ伯爵は、”どうせ騙すなら世界の全部を騙そう”。だけど、忘れちゃいけない、”俺たちしがないアヴァンチュリエ”だぜ、と歌うルパン達のペースに乗ってしまう。
「こいつらはひょっとしたら、嘘を真に変えるかもしれない」。
「ばかげた夢を守るために本気で戦うかもしれない」。
そう思わせたら、ゲームは勝ちだ。
ルパンは 「マリアの涙」を盗むために、タイムスリップしてきた時に出会ったマリー・アントワネットのもとへ出かけ、次元と五エ門は、「マリー・アントワネットの首飾り」をだまし取るため、ジャンヌ(透水 )とレトー(月城 )と一緒に動き始める。
ルパンは、ルイ16世(鳳翔 大)とマリー・アントワネットがフランス革命で処刑されることは知っている。歴史上の人物であったマリー・アントワネットは、気さくで、軽やかに笑うキュートな王妃様だった。
ルパンとマリーはお忍びで夜のパリの街にでかける。広場では、王妃を風刺し、あざける芝居がかけられ、それを嘲笑い、「オーストリア女」と罵声を飛ばすパリ市民たちがいた。涙を流すマリーを見て、ルパンはある決意を固める。”My dear Queen’s Diamond”
次元と石川五エ門は、ロアン枢機卿(蓮城 まこと)の恋人に収まっている峰不二子(大湖 せしる)と手を組み、ロアンから金を引だし、「マリー・アントワネットの首飾り」を横取りする。
そしてカリオストロは錬金術に挑む。