10月ももう終わりですね。今年から猫ズが部屋にいるので暖房を入れる時期が早いです。
さて月組『PUCK』。小池修一郎氏が、シェイクスピアの『真夏の夜の夢』をモチーフにして描いた『PUCK』。初演は1992年月組(涼風真世・麻乃佳世)。
シェイクスピアの『真夏の夜の夢』は人間が主人公で、妖精の王オベロンと女王タイテーニアのウェイトが高いのですが、小池修一郎氏のヅカ版『PUCK』は、夏至の夜に生まれた歌の妖精PUCKが、妖精が見えるセカンド・サイトを持つ人間の少女ハーミアと恋に落ちる物語です。
楽しくて甘いけれども甘々ではなく、切なくて、甘酸っぱい心にそっと染みいる作品でした。
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夏至の前夜ミッドサマー・イブに開かれる音楽祭も60回目を数え、主催者であるイギリスの名門貴族サー・グレイヴィル(飛鳥 裕)の屋敷には、交流のある人達が集まってきていた。
サー・グレイヴィル(飛鳥)には二人の孫娘いた。亡くなった長女の忘れ形見のハーミア(愛希れいか)と後継者である次女レイチェル(萌花 ゆりあ)と婿のマシュー(光月るう)の間に生まれたヘレン(沙央くらま)である。
両親はいないが素直で可憐なハーミアは、サー・グレイヴィルには可愛がられ、ジャスパー卿子息ライオネル(凪七 瑠海)やホテル王レノックスの息子ダニエル(美弥 るりか)をはじめとする男の子達の憧れの的だった。おしゃまで目立ちたがり屋のヘレン(沙央)は、ハーミアが羨ましくて妬ましくてならず、ちょっとしたいじめを繰り返す。そこへ森番の息子ボビー(珠城 りょう)が、悪童達を引き連れて乱入する。
それがいつもの光景だった。
そんな日常の中で、 ハーミア(愛希)は、グレイヴィル家の森にあるストーン・ステージで、妖精パック(龍真咲)が生まれた瞬間を目撃する。ハーミアは妖精が見える目、セカンドサイトの持ち主だったのだ。
妖精の王オベロン(星条 海斗)と妖精の女王タイテーニア(憧花 ゆりの)に命じられて妖精達をお供に人間界に出向いたパックは、ハーミアと出会い、恋に落ちる。
だけど、
「人間なんて、すぐ老けちゃうのよ」と草の露の精(海乃 美月)が言ったとおり。
どんどん成長していく、ラリー、ヘレン、ダニーにボビー、そしてハーミア。
パックは、生まれたときと全く変わらない。妖精は成長しないし、天国に行くほど良くもなければ地獄に落ちるほど悪くもない特別な生き物なのだ。
ハーミアは、大人になり、悪化するグレイヴィル家の経済状況を支えるために、客室係の主任として働いている。もうミッドサマー・イブに会った妖精のことを思い出せない。でも日記には書いてある。ピーユーシーケー、PUCK。
僕のこと、見えないの?聞こえないの?ハーミア!パックの呼びかけも、ハーミアには届かない。
途方に暮れて歌うパック。
同じ森に棲んでいても、成長しない妖精と成長する人間は住む世界が違うの。
どうするパック?人間を好きになった妖精は、一番大切なものを失うのよ。
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この作品はパックのキャラクターで魅せる部分がかなりあると思うが、龍パックはお茶目で愛らしく、動作も誕生からハーミア(愛希れいか)との別れまでは、子どもっぽく遊び回るように舞台上をローラースケートで滑る…ちょちょっとぎこちないけど。
ハーミアが自分のことを忘れてしまったと知ってからは、いじけてひねた表情も見せ、足どりも小刻みにいたずらっ子っぽくなる。「オベロンさまぁ」との掛け合いも楽しい!パックが人間になってしまって、きっとオベロン様(星条)は寂しがって泣いてると思う。タイテーニア様(憧花)は取り巻きのユニコーン達がいるからいいけれど、オベロン様はパックがいないと、きっと寂しんぼう。
『The Kingdom』でW主演だった美弥るりかと凪七 瑠海ですが、みやるりは「間合い」や笑いのタイミングを掴むのが上手くなっていた。みやるりは、マジメでそういうのが苦手っぽいような印象を受けていが、マシュー(光月るう)とのビリヤードの場面や「不可能の文字」の場面は大奮闘して好演だった。二枚目キャラで笑いを取りに行くのは難しい。『The Kingdom』効果だと思う。
凪七 瑠海はコメディが合いそうな気がしているのだが、今回は歌声に魅せられた。声が、ぐっと深みを増し、朗々とした歌いっぷり。去年の『THE MERRY WIDOW』でかなり練習をしたそうなので、そこからかな。
『PUCK』、いろんな感想が浮かんだのだけれど、書いている今も、耳に残り蘇ってくる龍真咲の歌声が一番良かった。歌の妖精PUCK!