[ZUKA] 2014年星組『眠らない男・ナポレオン』(2)

『眠らない男・ナポレオン』【→特設サイト】 ものすごく音楽が効いていました。ミュージカル『ロミオとジュリエット』を手がけたジェラール・プレスギュルヴィック氏が作曲された50なんなん曲に、小池氏が台詞をはめ込んでいったそうですが、台詞の大半が歌で表現されているという、非常に高度なミュージカルでした。「宝塚から世界へ発信するオリジナル作品」という意気込みは伊達じゃないですね。ソロは主要キャストに割り振られ、ほかは歌い継ぎかコーラスが多く、負担がかかりすぎないように工夫されています。しかし、むつかしそう…星組&専科さん達がすごい。

ナポレオンへの賛歌「嵐のように生きた男」は、耳に残りやすく、鼻歌になりそうです。

さて、ナポレオンとジョゼフィーヌの関係を理解するために資料を漁った。参考文献はとりあえず省略。

  • ナポレオン・ボナパルト(1769年8月15日 – 1821年5月5日)

地中海にあるコルシカ島で生まれのイタリア系フランス人。本名はナブリオーネ・ブオナパルテといい、ナポレオン・ボナパルトという名前はフランス風に改名したものである。長らくイタリア諸国領だったコルシカ島は、独立運動を経て、ナポレオンが誕生する直前にフランス領となっていた。ナポレオンの父は独立派から新仏派に寝返り、兄ジョゼフとナポレオンをパリの学校に進学させた。ナポレオンは陸軍幼年学校に入学するが、士官学校は貴族のみ入学を許可されるエリートコースであり、植民地出身の貧乏な下級貴族であるナポレオンにとっては居心地が良い場所ではなかったと考えられる。16歳で砲兵士官として軍務に就き、20歳の時にフランス革命が勃発する。

1793年、南フランスの港湾都市ツーロンでイギリス・スペイン軍の支援を受けた王党派の反乱が起き、フランス軍は苦戦する。この時、砲兵士官であったナポレオンは、敵艦隊を高台から大砲で攻撃する作戦を成功させ、24歳で少将に昇進し、英雄視され始める。ところが翌年のテルミドールの反乱でロベスピエールらジャコバン派が失脚。ロベスピエールの弟と親しかったナポレオンは降格処分となり、予備役に回されてしまう。1975年パリで王党派の蜂起があり、国民公会軍の総司令官ポール・バラスに登用されたナポレオンは、パリの街中で大砲をぶっ放し、王党派を鎮圧する。

若き英雄の快進撃が始まった。この時、ナポレオン26歳。

  • ジョゼフィーヌ・ド・ボアルネ(1763年6月23日 – 1814年5月29日)

フランス領西インド諸島マルティニーク島の下級貴族の家に生まれ育つ。結婚前の正式名は、マリー・ジョゼフ・ローズ。ジョゼフィーヌという名前はナポレオンがつけたものである。1779年にジョゼフィーヌは、16歳でアレクサンドル・ド・ボアルネ子爵と結婚し、パリに住み始める。ウジェーヌとオルタンスの一男一女を授かるが、夫の浮気のために別居(離婚)する。1794年フランス革命でボアルネ子爵が捉えられ、助命嘆願をしたジョゼフィーヌも投獄される。ジョセフィーヌはこの牢獄で、10歳年下のテレーズと親友になる。

夫の処刑10日後に、テルミドールのクーデターによってロベスピエール派は失脚し、テレーズとともにジョセフィーヌは解放された。だが元夫からの養育費はなくなり、子ども二人を育てるために、彼女は愛人を作り、お金を引き出そうとした。それが総裁政府の総裁となったポール・バラスである。政府の政治家達は自分達の私腹を肥やすことを優先し、バラスはジョゼフィーヌのほかに、タリアン夫人となっていたテレーズも愛人にする。ジョゼフィーヌは最先端のファッションを身につけバラスの寵愛を守ろうとしたが、バラスはテレーズを優先するようになっていく。

このような状況でジョゼフィーヌが出会ったのが、”コルシカの大砲男”ナポレオン・ボナパルト。ジョセフィーヌより6歳年下で、小柄な身体(155cm程度だったとされる)を汚れた軍服で包み、コルシカなまりで話す無骨な若者であった。

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総裁政府の政治下で、上流社会の貴族達は恐怖政治からの開放感に浸っており、フランス革命前の退廃的で享楽的な生活に戻っていた。ミュスカダン(伊達男)の一群はファッショナブルでカラフルなスタイルでアバンチュールを楽しみ、テレーズを筆頭としたメルヴェイユーズ(伊達女)は、コルセットをせず、ギリシャ・ローマ風のゆったりとしたドレスを身につけ、胸をあらわにするスタイルも流行した(テレーズの肖像画を見ると、乳首まで描いてあるのにびっくりする)。その様子は『ベルサイユのばら』ではなく、『仮面のロマネスク』(ラクロ『危険な関係』)に近い(愛人を1人も持たなかったルイ16世が特異だったと言われている)。

というようなことを書いてみると、ジョゼフィーヌに一目惚れして、追いかけ回していたナポレオンは、ミュスカダンやメルヴェイユーズからは「野暮でダサい田舎者」と見られていたことはほぼ確実で、 ジョゼフィーヌとしては初めての体験でどうしていいのか判らなかったという所かなぁと思ってしまう。

続く。公演の感想にいたる道のりは遠いぞ。 

【宝塚大劇場】
 星組 公演期間:2014年1月1日(水)~2月3日(月)
■主演・・・柚希 礼音、夢咲 ねね ル・スペクタクル・ミュージカル
『眠らない男・ナポレオン ―愛と栄光の涯(はて)に― 』

L’Homme sans sommeil: Napoléon ~Au-delà de l’Amour et de la Gloire
Écrit et mis en scène par Shuichiro Koike, composé par Gérard Presgurvic
作・演出/小池 修一郎
作曲/ジェラール・プレスギュルヴィック

[解 説]

 宝塚歌劇100周年の記念すべき第一作は、「宝塚から世界へ発信するオリジナル作品」を目指した超大作ミュージカル。作曲に『ロミオとジュリエット』のジェラール・プレスギュルヴィック氏を招き、小池修一郎との日仏コラボレーションでの創作となります。
 フランスが生んだ最大のヒーロー、ナポレオン・ボナパルトの栄光に彩られた人生の軌跡を、妻ジョセフィーヌとの愛と葛藤を中心に、切なくも激しい魅惑のメロディの数々に乗せて、壮大なスケールで描きます。