宙組 悠未ひろ初主演作。練り上げられた脚本、効果的な演出、そしてキャストたちが、心を込めて丁寧に大事に演じているのが伝わってくる、ヒューマン・ドラマになっていた。ラスト近くなると、舞台と客席に一体感が出て来て、感動であったよ。
1幕目は、自信喪失中でなんとなく不安げなマイルズ・エッジワースと元々落ち着きのないラリー・バッツが、タイムスリップ??というSFチックな話し運びがコミカルに進む。それに殺人事件とか、(架空の)ゼングファ共和国の滅亡とかがはさまり、どう展開するのか予測がつかなくて座り心地悪いが、2幕目への期待が高まる幕間。
2幕目。殺人事件の裁判に関わり、エッジワースは検事として自分の果たすべき使命を思い出す。ここで、悠未ひろが、出だしの不安げなエッジワースから、己のやるべき事を理解し自信を取り戻したエッジワースへと、一気に変化させ、舞台の雰囲気をガラリと変えた。お見事。蓮水ゆうや演じる父親のグレゴリー・エッジワースとの並び姿もばっちり決まって、堂々たる主役だった。
蓮水ゆうやは、「無罪を勝ち取るのだけが弁護士の仕事」と手段を選ばない弁護士を演じていたが、「きっと過去に何かあったんだろうな」と観る側を妄想の世界に引きずり込む哀愁をたたえていて、大空祐飛さんを彷彿とさせる格好良さに萌えた。
1月29日から月組に組替えになる凪七 瑠海は、宙組最後の舞台を思い残すことがないように、という風な感じで、道化役バッツをめっちゃくっちゃ楽しんでいた。アンスバッハ@銀英伝は、かちゃ(凪七)の美貌が冴え渡り、怜悧で孤独な雰囲気になっていたので、今回は仲間とわいわいやれる明るい役で良かった。
ヘタレな刑事タイレル・バッド役の愛月 ひかるは、仕草やポーズに気を遣い一所懸命演じていて好印象。それから、組長(寿 つかさ)と副組長(鈴奈 沙也)が要所を押さえているというのは、とても安心感があるなぁとベテランの重みをしみじみと感じた。すみれ乃麗のアリソンは、華奢で小柄な少女なんだけど、情熱的なフラメンコを踊るパワーを秘めているんだと思わせる芯のあるヒロインだった。
歌はまだ一部に不安定さがあったり、話の展開に無茶ぶりだなぁっwとニヤリとしたり、というのはあったが、宙組が長いメンバーばかりで、キャスト同士が相手をよく見て動いているので、リズムやテンポが合い、全体として調和の取れて充実した舞台だった。
逆転裁判3のベストシーン
- ウェンディー(鈴奈 沙也)とラリー・バッツ(凪七 瑠海)、それに客たちが歌い踊る喫茶店
- アリソン(すみれ乃麗)に抱きつかれて、両手をどこに持って行こうとうろたえるマイルズ・エッジワース(悠未ひろ)←両手を広げてないでさっさと抱きしめんかい!と心の内で叫んだシーン
【あらすじ】 3 年前、弁護士フェニックス・ライト(蘭寿とむ)に破れて、被告人を有罪にするという検事の使命を果たせず、傷心旅行中のマイルズ・エッジ ワース(悠未ひろ)。旅先で、幼なじみのラリー・バッツ(凪七 瑠海)にばったり遭遇し、故郷カリフォルニアに一緒に行こうと誘われたところから、話が展開していく。
2人の乗ったカリフォルニア行きの飛行機が乱気流に巻き込まれ、激しく揺れる。過去の体験で地震恐怖症になっているエッジワースは、意識を失いつつ、からくも空港に降り立つが、そこはなんと30年前1987年のアメリカだった!
戸 惑うエッジワースとバッツだったが、親切な女性(伶美 うらら)に街中のクラブに連れて行ってもらい、先行きを考えようとした。ところが、バッツはクラブのショーダンサー・アリソン(すみれ乃麗)に一目惚れ。 彼女を追いかけて行ってしまう。クラブで1人紅茶を飲むエッジワース。そこに、殺人事件が起きる。
エッジワースは、逮捕されたクラブのギタリストを庇うアリソンと共に弁護士事務所におもむき、そこで尊敬する父、若き日のグレゴリー・エッジワース弁護士(蓮水ゆうや)と出会うのだった。
■主演・・・悠未 ひろ
ミュージカル・ロマン 『逆転裁判3 検事マイルズ・エッジワース』
原作・監修・制作協力/株式会社カプコン
脚本・演出/鈴木圭
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演 公演期間:1月9日(水)~1月17日(木)
日本青年館大ホール公演 公演期間:1月23日(水)~1月28日(月)
- マイルズ・エッジワース:悠未ひろ
- 裁判長:寿 つかさ
- ウェンディー・オールドバッグ:鈴奈 沙也
- グレゴリー・エッジワース:蓮水 ゆうや
- ラリー・バッツ:凪七 瑠海
- ルビー・トリコ:花音 舞
- アンディ・ルイス:風羽 玲亜
- ジェイソン・ムーア:天風 いぶき
- ウィンストン・ペイン:天玲 美音
- アリソン・トレーザ:すみれ乃 麗
- キャラウェー・テンネ:夢莉 みこ
- タイレル・バッド:愛月 ひかる
- サラ・ミルブレット:伶美 うらら