[diary] COVID-19パンデミック雑記(46)五輪:感染症専門家チームによるリスク評価と提言

(アジサイ) 墨田の花火
(アジサイ) 墨田の花火 Hydrangea macrophylla f. normalis Sumidanohanabi

6月18日(金)の昨日、今年の10月23日(土)に開催予定だった令和3年(第44回)隅田川花火大会の中止が発表されました。昨年も中止だったので、2年連続の中止です。

スミダノハナビ(アジサイ)の写真を撮りながら、10月なら新型コロナワクチンの接種も進んでるんじゃないかと思っていたので、残念です。

パンデミック(コロナ渦)によって傷ついている全ての人にお見舞いを申し上げます。COVID-19と最前線で戦う全ての方に敬意と感謝を。

隅田川花火大会だけではなく、全国的に花火大会や夏祭りは中止や延期・内容変更の嵐です。

この夏に向けての私の悪夢は全国共通なんだろうか (_ _;)

空から恐怖の大王が降りてくる
使徒、襲来
現実(ニッポン)対 虚構(ゴジラ)


本題です。

専門家有志による東京オリパラ開催への提言

6月18日(金)、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が、東京オリンピック・パラリンピックの開催についての提言を、西村経済再生担当大臣兼新型コロナウイルス感染症対策担当大臣および東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の橋本会長に提出されたそうです。

コロナ専門家有志の会より
提言書本文と資料(note)】/ 【提言書のPDF版

提言書に関わられた感染症・公衆衛生の専門家は26名。先生方、ご尽力をありがとうございます。

『2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に伴う新型コロナウイルス感染拡大リスクに関する提言』

2021年6月18日、政府の新型コロナウイルス感染症対策に助言をしてきた尾身茂氏ら感染症の専門家有志が、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会、政府等に、大会開催に伴う感染拡大及び医療逼迫を招かないための提言書を提出しました。提出者は次の通りです。

阿南英明 今村顕史 太田圭洋 大曲貴夫
小坂 健 岡部信彦 押谷 仁 尾身 茂
釜萢 敏 河岡義裕 川名明彦 鈴木 基
清古愛弓 高山義浩 舘田一博 谷口清州
朝野和典 中澤よう子 中島一敏 西浦 博
長谷川秀樹 古瀬祐気 前田秀雄 吉田正樹
脇田隆字 和田耕治 (五十音順)

提言書を読んでみる

提言書本文と資料(note)】/ 【提言書のPDF版

オリンピック・パラリンピックの規模や社会的注目度は別格

やはりオリンピック・パラリンピックは通常のスポーツイベントとは段違いに大規模で社会的注目度の高いイベントです。

東京オリンピック・パラリンピックの参加国は200カ国以上。来日する大会関係者数は、ギリギリまで減らしても数万人以下にはならない。国内イベントにはない巨大さです。

国内の状況と感染拡大リスク

提言書のデータでは国内では以下のような状況になると推測されています。

  • ワクチン接種が順調に進んだとしても、7月から8月にかけて感染者および重症者の再増加の可能性。
  • 感染力の強い変異ウイルスの影響も想定する必要がある。
  • 開催予定の7月から8月は夏休みやお盆と重なる。
  • 大会開催を契機とした、全国各地での人流・接触機会の増大による感染拡大や医療逼迫のリスクがある。

政府に対する提言:6月下旬から始めるべき感染拡大リスクの軽減策

  • 継続した強力な感染対策
  • 経済的苦境にある人々の救済
  • 感染拡大の予兆を察知したら、時期を逃さずに、事態の切迫を待たずに、強い対策を躊躇なくとる。

大会主催者府に対する提言:開催にあたってのリスク低減策

  • 無観客開催は、会場内の感染拡大リスクが最も低い。
  • 観客を収容するのであれば、
  1. 現行の大規模イベント開催基準よりも厳しい基準の採用
  2. 観客は、開催地の人に限る
  3. 事態が深刻化しないように時機を逸しないで無観客とする

提言書には、「時機を逃さずに」、「事態の切迫を待たずに」、「強い対策を躊躇なくとって下さい」という文言が繰り返して使われており、提言者の強い危機感と切迫感が現れていました。

私たちは、これまでの経験から、感染の拡大及び医療の逼迫の予兆を察知したら、時機を逃さず、強い対策を打つことが必要だと考えています。今後も感染状況等を適宜モニターし、必要な対策を提言して参ります。

プロフェッショナルがここまで危機感を表していることに、政府や大会主催者は敬意を払い、提言をすみやかに実行に移して頂きたいですね。


リスク分析とは

提言者のおひとりである、京都大学大学院の西浦先生の記事が非常に興味深かったので引用させていただきます。

リスク分析は、大別すると(1)リスク評価と(2)リスク管理、それから、(3)リスクコミュニケーションの3つの要素から成ると言われています。

西浦博教授が緊急報告 “五輪のリスク”議論の背後にある「最大の問題」
リスク評価と管理の“分離”

この過程の中で、リスク評価はリスク管理から独立性を担保することが極めて重要であると言われています。

海外の流行状況を見ても、感染症専門家の常識的には有り得ないことが起きようとしているものと思います。少なくとも、五輪によって感染リスクが上がらないことは起こり得ません。

しかし、もっと原始的な願いは、開催云々ではないのです。それよりも大きな問題として、「リスク評価」から「リスク管理」が行われ、それが「コミュニケーション」されるという過程が完結するということが、何にも替えがたいくらい重要であると考えているのです。かかる状況の中でも五輪を実施する、というのは総理大臣と東京都知事の政治判断になります。


私見は、ワクチンパスポートなども出てきていますが、まだこの状態です。⇒「入国者全てに入国後2週間の隔離を行うことが出来ないのなら、東京オリンピック・パラリンピックは中止あるいはワクチン接種が普及するまで再延期がいいと考えています」。(2021/04/04


おまけ

来年(2022年)2月には中国・北京で冬季オリンピックが開催予定です。

中国は中央集権国家の強大な権力を活用して、大規模検査と大規模隔離、厳格な出入国管理という強大な感染防止戦略を取っており、感染者数も死者数も他に比して少ない

中国は国内で開発したワクチンの接種を進めているようですが、中国製の不活化ワクチンは変異ウイルスに対する有効性が低いと見られ、中国製ワクチンを採用している国々の感染者数の増加が止まりません。

移動や営業などの経済活動制限中にワクチンを導入している国が多いのですが、ワクチン接種率が向上すると制限を緩和・解除している。それで感染者数が増えるというのもあるようです。

冬季オリンピックを北京で開催して、海外からワクチン未接種の観光客が大量に流入してくるとどうなるのか。

感染者が増加してもワクチンで重症化予防ができればベターという意見もあるようですが、世界的に感染者数を抑えていかないと変異ウイルスは増え続ける。ちょっと懸念しています。