[Zuka] 2013年宙組『モンテ・クリスト伯』(2)

『Amour de 99!!』について感想 あおきは、観劇歴は短いので、こういう積み重ねの上に今があるんだなと感慨深かったのですが、ファン歴が長い方が見ると、目に付くところもあるようです。初観劇らしい人たちからは、もの凄い歓声が上がっていたので、初心者は、簡単に満足してしまうところがあるかもしれません。宙組の課題は歌とダンス・・みっちゃ・・いやいやいやいやいや、現宙組生に頑張ってもらいましょう。

本作は全国ツアー演目なので、目の肥えた方々は、いまのうちに、ここは?という箇所を見てほしいです。今年後半はレビューに力を入れると、小林理事長が『歌劇』誌で、明言しておられたので。レビューあってのタカラヅカ。タカラヅカあってのレビュー!!

『モンテ・クリスト伯』幕開け前に、宝塚歌劇では初めての指揮となる上垣 聡氏の紹介があり、自己紹介替わりに一曲演奏があった。初指揮おめでとうございます。良い公演となりますように。

幕が上がると、そこはシャトー・ディフ牢獄。フランス・マルセイユ沖に浮かぶ孤島イフ島にある監獄である【本物→Château d’If】。
時は、19世紀初頭。1814年に皇帝ナポレオン1世は失脚し、エルバ島に追放され、フランス国内ではナポレオン派と反ナポレオン派の政争が続いている時代である。(ちなみにフランス革命勃発の契機となったバスティーユ襲撃は、1789年7月14日)。

結婚式での青年航海士エドモン・ダンテス@凰稀 かなめは、幸福に輝いていた。なんというか、「自分の幸せを疑いもしない」育ちの良さがあふれる美しさ。つまるところ、ひねくれた人間からしたら、なんだよ、あいつばっかりという、妬み嫉みを感じさせる存在。理屈じゃなくてただ羨ましすぎて憎いという存在を、凰稀 かなめは見事に作り上げていた。意地悪く言うと、この育ちの良い美しい若者が、底知れぬ恐ろしさを感じさせる美中年の紳士に変わってしまうのも本作の見物の一つだと思う。

そして、ダンテスの最愛の人であるメルセデス@実咲 凜音は、白いドレスが良く映え、清楚で落ち着いた美しさをたたえている。「透明感がある」というのはこういう女性を言うんだなぁ、と思った。この美しい人が、20年間の歳月を子ども(アルベール@愛月ひかる)だけを支えに生き抜き、凰稀ダンテスと再会した時は、「母」であることを選びとる。実咲 凜音の演技には拍手喝采を送りたい。あなたのメルセデスがいたからこそ、復讐鬼と化した凰稀ダンテスは救われた。

元密輸船の乗組員で、ダンテスの家令になるベルツッチオ@緒月 遠麻は、原作ではヴィルフォールとの因縁とかある役【長い身の上話→(前篇)(後篇)】で、立ち位置が異なる。本作ではダンテスに命を助けてもらったと感謝し、復讐しか目に入らないダンテスの心を救いたいと思っている、ファリア司祭@寿つかさの後継者のような役どころ。まだ迷える若者のような感じを残すモンテ・クリスト伯@凰稀 かなめが頼りにするちょっと癖のある良い人。緒月は巧みで、安定感がある。

凰稀モンテ・クリスト伯が復讐対象としている3人がそろった写真が【神戸新聞 タカラヅカ写真館】にあるが、3役が、効果的に作り分けされているのが一目でわかる。

フェルナン@朝夏まなとは、 私的助演男優賞を(いらないと思うけど)、あげたい。フェルナンが金持ちで悪い奴じゃないと、ダンテスが復讐し甲斐がないので、重要なポジションである。で、朝夏フェルナンが見るからに嫌な奴なんだよね。貴族の御曹司を鼻にかけ、自分より下位に見える人を見て悦に入り、上位にいると思える人には反感を持ち、人の持っているものは横取りし、女性に暴力をふるうという清々しい下劣っぷり。キルヒアイス(銀英伝)とは正反対の役どころだが、外面の良い、性悪なお貴族様を演じきった。ブラボー。

銀行家ダングラール@悠未 ひろは、心底悪人ではなく、ママン・オービーヌ@鈴奈 沙也の期待過剰に押しつぶされた、こずるくて弱い人間という感じだった。ママンはダングラール家のため、と思っている家名と自分が大事な人で、現代でもいそう。ダングラールの妻のエルミーヌ@愛花 ちさきは、姑にしおらしくつかえながら、内心でアッカンベーしているという、これも現代にいそうな妻像だった。

検事総長ヴィルフォール@蓮水ゆうやは、ナポレオン派の大物である父親の政治的言動に振り回され、後妻エロイーズ@純矢 ちとせの蠱惑的な魅力に取りつかれている小心者。先妻の娘ヴァランティーヌ@瀬音リサを思いやる父親で、ちゃんと勉強して検事になったという折り目正しさもあるのに、ふとしたきっかけで道を踏み外してしまったお気の毒な人です。

ルイジ・ヴァンパ@七海ひろきと楽しい子分たち(ムハマンド@凛城 きら、ハッサン@松風 輝、アリ@星吹 彩翔)は、ヴィジュアルは良いのだが、第7幕の密輸船の場面は、まだ挙動がこなれていない印象を受けた。ここは難しい箇所だと思う。第7幕を契機にアメリカン・ハイスクールの学生たちは出てこなくなり、復讐譚に移行する。コミカルからシリアスへと切り替える準備段階のような役割を担っている場面なので、やりながら感覚をつかむしかないかな(と思っただけ)。

ヒゲまつり。銀英伝でもそう思ったけど、本作のほうがよっぽどヒゲ祭りだった。次は何が来るやら(^^)。
そして祐飛さんが!!【大空祐飛:宝塚退団後初仕事でナレーション初挑戦 「宝塚プルミエール」

【あらすじ】
時は、19世紀初頭。皇帝ナポレオン1世は、強制的に退位させられ、エルバ島に追放されていた。
青年航海士エドモン・ダンテス@凰稀 かなめは、船長に昇格し、モレル海運社長@寿つかさの娘であるメルセデス@実咲 凜音との結婚で幸福の絶頂にあった。ところが、結婚式に踏み込んできた官憲に無実の罪でとらえられる。凰稀ダンテスは、友人だと思っていたフェルナン@朝夏まなとやダングラール@悠未 ひろが自分を陥れたことを知り、衝撃をうけながら、シャトー・ディフ牢獄【Château d’If】に連行される。凰稀ダンテスは、典獄@風羽 玲亜に無実を訴えるが、典獄はシャトー・ディフ牢獄は、「政府に邪魔な人間を入れる場所だ」と突き放す。ダンテスは絶望の淵に立たされ、鞭打ち、焼印の刑罰に処される。

ほら穴のような牢獄でダンテスは、6年を過ごし、1年ごとに押される焼印も6つになった。ある日、地面から音がしたかと思うと、穴があき、人が覗き込んできた。その人は、やはり無実の罪で囚われている囚人で、ファリア司祭@寿つかさと名乗った。五ヶ国語を操り、すぐれた知識人であるファリア司祭は、ダンテスの境遇に同情し、外国語を教え、様々な知識を身につけさせた。さらに8年が過ぎ、ファリア司祭は復讐に燃えるダンテスを心配しながら、世を去る。ダンテスにモンテ・クリスト島にある財宝のありかを言い残して。ダンテスは海に葬られるファリア司祭の遺体と入れ替わって脱獄に成功し、世界を放浪し始める。

そして、青年航海士エドモン・ダンテスが囚われてから20年が過ぎ、パリ社交界にモンテ・クリスト伯と名乗る大金持ちが現れる。

■主演・・・凰稀かなめ、実咲凜音
ミュージカル・プレイ『モンテ・クリスト伯』
原作:アレクサンドル=デュマ・ペール
脚本・演出:石田 昌也

宝塚大劇場公演 公演期間:3月15日(金)~4月15日(月)
    • 主な配役
主な配役 出演者 新人公演

エドモン・ダンテス
(ファラオン号の一等航海士・後のモンテ・クリスト伯)

凰稀 かなめ 愛月 ひかる
メルセデス
(エドモンの婚約者)
実咲 凜音 花乃 まりあ
*~*~*
ファリア司祭(イタリアの神父・大学者)
モレル社長(モレル海運社長・メルセデスの父親)
寿 つかさ 星吹 彩翔
オービーヌ(ダングラールの母親) 鈴奈 沙也 実咲 凜音
ミス・メアリー(ハイスクールの演劇部顧問[アメリカ]) 美風 舞良 結乃 かなり
ダングラール(モレル海運の会計士) 悠未 ひろ 美月 悠
マドレーヌ(メルセデスの乳母) 大海 亜呼 夢涼 りあん
ベルツッチオ(密輸船の乗員・後にダンテスの家令) 緒月 遠麻 風馬 翔
フェルナン(貴族の御曹司) 朝夏 まなと 蒼羽 りく
ヴィルフォール(検事) 蓮水 ゆうや 桜木 みなと
エロイーズ(ヴィルフォールの後妻) 純矢 ちとせ 瀬音 リサ
エルミーヌ(ダングラールの妻) 愛花 ちさき 愛白 もあ
ルイジ・ヴァンパ(密輸船のボス) 七海 ひろき 和希 そら
ボーシャン(新聞記者) 澄輝 さやと 星月 梨旺
エデ姫(ギリシャの王女) すみれ乃 麗 伶美 うらら
ムハンマド(密輸船の乗員) 凛城 きら 実羚 淳
アルベール(フェルナンとメルセデスの息子) 愛月 ひかる 春瀬 央季
ケント(ハイスクールの演劇部員[アメリカ]) 蒼羽 りく 七生 眞希
ジェニファー(ハイスクールの演劇部員[アメリカ]) 伶美 うらら 瀬戸花 まり