『ミュージカル ファントム』大千秋楽おめでとうございます。
城田優さんが主演・演出で『ファントム』を上演するというニュースを聞いた時はめっちゃ見たいと思いましたが、観劇できたのは城田ファントム・愛希クリスティーヌ回のみ。梅田芸術劇場メインホールで観劇(12/9(月)18時公演、12/15(日)17時公演)。
加藤和樹さんと木下晴香さんの回が観劇できずにとても残念。DVDはBLACKとREDの両方を買わねばならないことが判明して思案中。[ファントム2019公演DVD@梅芸]
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脚本:アーサー・コピット、作詞・作曲:モーリー・イェストンという雪組版と同じ布陣で、演出は2作品目となる城田優。
脚本が同じなので基本的なストーリーは同じですが、演出と演技、そして歌詞にオリジナリティと個性を込めることで、雪組版とは全く見え方が異なり、見ごたえのある舞台になっていました。
イェストンの楽曲は雪組の望海風斗と真彩希帆の声で記憶に残っていますが、城田版は雪組版とは歌詞(訳詞)が異なっていて、芝居のセリフのように歌われる芝居歌でした。12/9(月)18時公演後にはアフタートークがあり、城田さんは、歌は芝居の一部として感情を込めて歌うようにお願いしてたそうです。
そのためか観劇後に「あの歌」というと、場面が思い浮かびます。
Homeというと衣装部屋で歌っているクリスティーヌ(愛希れいか)と2階からそれを見つめるファントム(城田優)。You Are Musicというとピアノを弾くファントムとピンクのドレスを着て歌うクリスティーヌ。この2曲は『ファントム』の中では格別。
ファントムとクリスティーヌ、シャンドン伯爵
あとビストロで歌ったクリスティーヌとシャンドン伯爵(Wキャスト:廣瀬友祐、木村達成)が踊る場面も素敵でした。雪組版ではクリスティーヌはシャンドン伯爵に恋してない(とお茶会で聞いた覚えあり)。キスシーンもなく曖昧です。城田版では、伯爵とクリスティーヌが弾むように踊り、fall in love!という瞬間でした。そのためにファントムとクリスティーヌ、シャンドン伯爵の3人のためのCrumbling Heart(崩れゆく心)という新曲が用意され、三角関係の比重が高まっています。この関係は城田版が明快で好ましかった。
Wキャストのシャンドン伯爵の印象。廣瀬シャンドン伯はシャンパン財閥でシャンパンの事業に成功している有力者としての自信と落ち着きを持つジェントルマンでした。『1789』のフェルゼン伯から貫禄がさらに増した気がします。木村シャンドン伯はまだ若く、事業を受け継いだばかりの前向きさとクリスティーヌを見る目の輝きが”見つけた、僕の天使!”というような無邪気さがかわいかった。
オペラ座の怪人ファントム
もう一つ、雪組版にはなく、わかりやすいと思ったのが、時間の経過の表現です。
上手でファントムがクリスティーヌに歌のレッスンを施し始めると、下手でオペラ座のプリマドンナのカルロッタ(エリアンナ)と支配人アラン・ショレ(エハラマサヒロ)、ルドゥ警部(ルドゥ警部)や警官たちがカツラや小道具にいたずらが仕掛けられてトラブルが起こり、劇評はさんざんだったと騒いでいる。
トラブルは「アイーダ」、「椿姫」と続けて起こり、そしてカルロッタの衣装係ジョゼフ・フーケの死体が発見される。
この場面で、観客はクリスティーヌが、オペラ座で2作品を上演している期間にファントムのレッスンを受けていることを知る。またクリスティーヌをカルロッタに変えてオペラ座の歌姫にするためにファントムが暗躍している事を理解する。
私は雪組『ファントム』の公演評(宝塚イズム39)で、「エリックの複雑性を望みは純化し、ファントムという怪人の物語ではなく、1人の青年の悲しい生の記録として作り上げた」と書いたのですが、城田優のエリックはオペラ座の怪人でした。城田版『ファントム』はエリックという青年がオペラ座の怪人ファントムとして複雑性を有したまま死んでいく物語だった。
ほぼ同じ脚本なのに見え方が全く違うという意味で、雪組版に対する見事な対比となっていて、私はものすごく感動したのでした。
ちゃぴクリスティーヌにたどり着けなかったので続く。
[CAST]
- ファントム(エリック):城田優(加藤和樹とWキャスト)
- クリスティーヌ:愛希れいか(木下晴香とWキャスト)
- フィリップ・シャンドン伯爵:廣瀬友祐/木村達成
- 少年エリック:大前優樹(大河原爽介、熊谷俊輝とトリプルキャスト)
- カルロッタ:エリアンナ
- アラン・ショレ:エハラマサヒロ
- ジャン・クロード:佐藤 玲
- ルドゥ警部:神尾 佑
- ゲラール・キャリエール:岡田浩暉
[STAFF]
- 脚本:アーサー・コピット
- 作詞・作曲:モーリー・イェストン
- 原作:ガストン・ルルー
- 演出:城田 優
- 美術・衣裳:トム・ロジャース
- 企画・制作:梅田芸術劇場