[Zuka] 星組大千秋楽~星のうえでふたり~紅ゆずると綺咲愛里の卒業

紅ゆずるが、綺咲愛里とともに宝塚歌劇を卒業する。退団同期は如月蓮、麻央侑希、蓮月りらん。

昨日、台風19号の影響により11時公演とサヨナラショーのある15時30分公演が休演となり、本日の千秋楽の上演も懸念されましたが、無事に定刻通りに開演できそうで喜ばしいです。

各地で台風19号による影響が出ており、舞台にあがる組子の中にも、支えるスタッフ運営側にも、千秋楽を見送るファンの中にも、出身地や縁のある土地が気にかかる人がいるとは思います。

これ以上、被害が大きく広がらないよう願いながら、

宝塚歌劇でしかできない、ひとときの夢を描き、明日への希望を歌い上げてください。

__

星組トップコンビの退団公演である『GOD OF STARS-食聖-』と『Eclair Brillant』。

衝撃を受けたのは、
スペース・レビュー・ファンタジア『Eclair Brillant』。

紅ゆずるが理想とした星組は、こんな姿だったのか。

華やかなプロローグの後に、紅さんがひとり銀橋に残って歌う。

ジルベール・ベコーの『ひとり星の上で(Seul sur son étoile)』。

星の王子様が「一番星の煌めき」とサブタイトルが付けられたソロを、銀橋に腰かけて優しく語りかけるように歌う。

”ひとりで星の上にいるとき、
誰かを、何かを、愛を、友を、必要としている。
馬鹿げているかもしれないけれど、
星でふたりで生きていく幸せ。
もうほかには気にしない。”

そんな意味合いが含まれているらしい。

大事に大事に優しく歌う姿に、紅が歌に苦労して、力を入れてきたであろうことが垣間見える。紅ゆずるというトップスターは基本的には芝居の人であった。宝塚独特のスター性の塊のような人で、磨き上げた圧倒的な表現力で場を支配する。

入学時の成績は下から数えたほうが早く、2番手時代に病気で休演したこともあり、アップダウンがあった宝塚人生であったことはよく知られる。

下級生時代に、89期の壱城あずさと美弥るりか、90期の如月蓮、91期の天寿光希を誘って始めた地下活動の”紅5”が大ヒット。歌劇団の公認となったことは、紅ゆずるの数多い伝説の中でもひときわ愛され、語り継がれるエピソードである。

生まれ持つ容姿と身体に努力と根性、アイディア、実行力、ハングリー精神。

苦労や失敗を隠さず、真正面から取り組み、「諦めなければ夢は叶う」と言うその姿に、どれだけの勇気をもらったことか。

台湾公演でも大劇場のサヨナラショーでもディナーショーでも登場した客席案内係の”紅子”は、最初は柚希礼音の追っかけとして紅ゆずるの作り上げた役、仮面のひとつであるが、台湾公演では、ゆずるちゃんの追っかけとして登場し、綺咲愛里や礼真琴、そして観客に絶妙な間合いでツッコミ、笑いを取り、当意即妙で場の空気を切り替えていった。

大人気の愛すべき”紅子”ゆえに、紅はコメディエンヌが身上と言われる事も多かったが、本来の紅の姿は、”ひとり星の上に”あるのかもしれない、と銀橋を渡る姿を見て思った。

その紅がトップスターに就き、相手役に綺咲愛里を迎えて、幸せな時を過ごし、最後のショーで紅・綺咲体制が作り上げた星組の集大成として見せた、ボレロからの黒燕尾、そしてデュエットダンス。

ダンスが得意な綺咲は、ショーでは紅の相手役でもあり、娘役群舞を引き連れて場面を作れる心強い片腕でもあった。どちらかというと芝居と歌は苦手なほうだったかもしれないが、どれも何度も何度も稽古を重ね、進化していく。自分から苦労を多く語る方ではないが、紅の溺愛ぶりがその成長を物語る。

トップ娘役に就いてからは、愛らしい美貌に艶やかさが加わり、生き生きとした躍動的な最強の可愛さへと進化していった。

台湾公演で口悪く突っ込む紅子に、めげずに必死で食らいついていく綺咲の愛子の姿は愛らしく、いくら紅子が怒ろうが、愛子の可愛らしさの優位性は微塵も揺らがない。紅子と礼真琴の礼子に挟まれた愛子に、娘役のたくましさを見た。可愛いってすごい。

研7でのトップ娘役就任は遅い方と言われて、研3や研4で就任するトップ娘役事情を思い出したが、紅が研15だったから、丁度よかったのか?トップスター優位の宝塚歌劇だと承知しているのだが、トップコンビの退団なのに、サヨナラショーに冠せられる名前はトップスターのみとか、トップ娘役(相手役)は8~10個くらいは若いほうがいいんじゃないかとか、そういうよく判らない男性優位主義はそろそろ見直して頂きたいものである。

星の上での2人と2番手の星を継ぐ者・礼真琴が引っ張った、第11場のスペイン~燃える情熱の煌めき~。ラヴェルの『ボレロ』に乗せた流星群のような組子の総踊り。

桜色のドレスでひらひらと舞う娘役達とシンプルな黒燕尾の男役群舞。

天寿光希や瀬央ゆりあ、天華えま、有沙瞳、極美慎といった星組の主力スターの見せ場に加え、群舞の緊密な美しさで観客を圧倒し、紅・綺咲の星組の強さを知らしめた。

華形ひかるのリードで、退団の如月蓮と麻央侑希が、白妙なつと夢妃杏瑠と歌う、「That‘s Life」の小粋な人生讃歌。黒燕尾で、如月と麻央が紅に絡む場面も気が利いていて、本当にいいショーでした、『Eclair Brillant』。楽しかった。

「That‘s Life」のBlu-rayその他のボーカル割愛収録が返す返すも残念です。

紅 ゆずる様、如月蓮様、麻央侑希様、綺咲愛里様、蓮月りらん様、ご卒業おめでとうございます。幸せと楽しさをありがとう。第2の人生も幸多いことお祈り申し上げます。

たくてぃ(拓斗れい)は次の公演から復帰できるんでしょうか。お待ちしております。