[Zuka] 月組退団者と愛の巡礼・美弥るりか

『アンナ・カレーニナ』の千秋楽(1/24)で、美弥るりかに二つ名(通り名)がついた!その名も「愛の巡礼」。名付け親は光月るう組長。でも、それ作品違いじゃ‥。”愛の巡礼”は『ベルサイユのばら』。

その「愛の巡礼・美弥るりか」の退団発表が昨日ありました。美弥ちゃんとともに90期のひびきち、くれあさん。それから98期の音風くん。

それに先立つ1月20日『ON THE TOWN(オンザ・タウン)』千秋楽では輝生かなでくんが退団でした。ご卒業おめでとうございます。新人公演では美弥ちゃんの役が多い印象でしたが、同郷(茨城県)なんですね。卒業インタビューでの晴れ晴れとした表情が心に残りました。第二の人生に幸多きこと、お祈り申し上げます。

下記の生徒の退団発表がありましたのでお知らせいたします。
2019/01/29

美弥 るりか
響 れおな
玲実 くれあ
音風 せいや

2019年6月9日(月組 東京宝塚劇場公演千秋楽)付で退団

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ちなっちゃん(鳳月杏)の花組から月組への組替え(2019年4月29日付)が、1月11日付けで発表されて覚悟はしていたんですが、この4月で研17に突入する89期担のつらみ。スカステお正月特番のボーナス・トラック89期男役5人による「ICHIGO🍓ICHIE リターンズ」のありがたみ。

ファンは欲深いので、美弥ちゃんが決めたことであっても、それでも大羽根を背負って大階段を降りてくる姿を見たかったなとは思います。美弥るりかはそれだけのことをしてきたと思う。女役や癖のある役もあったけれど、七海ひろき同様に研16だからこそ出せる味でファンを魅了してきたいい役者で、プロの舞台人、優れたタカラジェンヌなのです。

その美弥るりかのために劇団は異例の2番手バウ主演とディナーショーを用意した。バウ公演なのでライブビューイングが入り、多くの人が美弥るりかのアリョーシャを見ることが出来た。それは素晴らしいことだったと思います。

そう書きつつ、千秋楽映像を見返すと、「愛の巡礼」のお返しに、るう組長に「セクシー組長」と通り名をつけて、さあ隣の人と手をつなぎましょうとセンターでニコニコする美弥ちゃんがものすごく楽しそう嬉しそうで、こっちまで嬉しくなる。七海ひろきが退団する3月24日以後に自分はどうしているんだろうと思っていましたが、「6月9日まで応援するよ」くらいしか言葉がない89期担(私)。

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私が月組で最初に観た演目は2012年の『ベルサイユのばら』-オスカルとアンドレ編(オスカル/アンドレ:龍真咲明日海りおの役替り)でした。トップスター龍真咲・準トップ明日海りおの ”まさみり” 体制の最後の演目です。古参ファンにベルばらが不評なのも知りましたが、まさみりは麗しく、ちゃぴロザリーは愛らしく、初心者は十分楽しんでいました。脇で気になったのはロザリーの横に立つベルナール(美弥るりか)。過去ログを掘るのがめんどくさいのですが、どっかに書いてあります多分。

それでお茶会の初体験はベルばらの龍真咲茶だったのですが、初めて舞台以外で見るトップスターの龍真咲は美しくてお茶目で舞台のことを熱心に考えている人でした。その龍真咲がね、星組から組替えしてきた美弥るりかのことを丁寧に役作りをする人だと褒めていたので、うまい人なんだねーと思って覚えたのです。2番めのお茶会が『モンテ・クリスト伯』の七海ひろき茶です。

大劇場でのベルばらが終わった2012年12月25日に組み替えが発表されました。

凪七瑠海:宙組から月組に組み替え(2013/1/29付)
沙央くらま:雪組から月組に組み替え(2013/3/1付)
明日海りお:月組から花組に組み替え(2013/3/25付)

月組だけのトップスター・準トップスター体制がこれで解消され、トップコンビと2番手という体制が築かれるかと思いきや、龍真咲が娘役から転向して間もない愛希れいかの手を取りつつ、星条海斗・沙央くらま・凪七瑠海・美弥るりかという4人を束ねて舵を取るという体制に移行し、2番手は不明でした。

美弥るりか語りをしようとすると、まず龍真咲語りになるんですが、この頃ね、龍真咲が直面している困難というのが目についたんですよ。宝塚のトップスターの難しさというのを最初に私に教えてくれたのが龍真咲だった。宝塚歌劇100周年の2014年、美弥カチャはニコイチになって『THE KINGDOM』のW主演。その二人の下に研6でバウ主演、研7で5度目の新人公演主演を果たした珠城りょうがいて、100周年にはダイキンのイメージキャラクターに就任。誰が見ても月組の次の大本命だったけれど、2番手の冠はつけられていなかった。

ターニングポイントは『1789 -バスティーユの恋人たち-』(2015年)だったような気がする。フランス革命を題材に貧しい農夫出身のロナン(龍真咲)と王太子の養育係オランプ(早乙女わかば・海乃美月の役替り)の恋を描いたフレンチ・ミュージカル。

潤色・演出は小池修一郎は、珠城りょうのロベスピエールに人権宣言を行わせ、フィナーレでアルトワ伯役だった美弥るりかをせり上がらせ、ソロで銀橋を渡らせた。

私は美弥ちゃんの妖艶で険のあるアルトワ伯が大好きで、東宝で『1789』が上演されるというので、[ZUKA][stage] 『1789』アルトワ伯考 (2015/06/22)を書いたのです。あーさ(朝美絢)が新人公演でアルトワ伯だというので、喜んでいたアルトワ伯好きです。

そして月組の次の大劇場公演『舞音-MANON-/GOLDEN JAZZ』で珠城りょうが2番手に昇格した。苦しい選択だったと思います。

この時点で珠城りょうがトップになった時の2番手がまた混沌としていて、早くから抜擢されていた98期の暁千星は大器晩成型で器が大きくて埋まるのに時間がかかる大型犬できっとトップになっていくのであろうけれど、『NOBUNAGA〈信長〉-下天の夢-』の新人公演の段階でまだ未成熟に見えた。風間柚乃がどんどん埋めていっているので面白いけれど、そこは個性ですね。

龍真咲が退団する前後に星条海斗、沙央くらま、凪七瑠海が専科に組み替え。これもいろいろありました。カチャがどうするのかも気になってはいるのですが、また別の話です。

珠城りょう・愛希れいかコンビの大劇場お披露目公演『グランドホテル』(2017年)で、美弥るりかが2番手に就任し、かつて涼風真世が演じたオットー・クリンゲラインを丁寧に演じた。2番手でなければ美弥るりかのオットーはなかったし、『エリザベート』でのフランツ・ヨーゼフはなかった。『BADDY』のスイートハート様は美弥ちゃんのために上田久美子氏が作った役です。そう考えると、美弥るりかを2番手に据えてくれたへの感謝は大きい。

美弥るりかの退団が発表された時点で何を言ってもあれだし、発表されたら笑顔でご卒業できるように応援していくだけだと思っているのですが、言えることとしたら事情があろうと龍真咲体制の時に2番手は定めておくほうが良かったし、94期で研9の時にトップになった珠城りょうの2番手に89期の美弥るりかを置くのだったら、愛希れいかがトップ娘役でいる間に美弥るりかを組替えさせるなり考えてほしかったとは思います。見えない事情はわからないですし、今更な気もしますが。

珠城りょうは『1789』に先立つ『Bandito(バンディート) -義賊 サルヴァトーレ・ジュリアーノ-』(作/演出:大野拓史)で示されたように望まれて路線に乗ったけれどトップに向けてガツガツした野心を見せることはない人で、素晴らしい上級生の方々がいらっしゃるのにという態度を取り続け、トップ就任インタビューでも一度は断ったようなことを話し、でも任されて引き受けたら責任を持ってやり切るという人で、全国ツアー『激情』『Apasionado!!Ⅲ』を観た私は「そのまま突っ走れ」と書いた覚えがありますが、それで良いと思うんだ。

『1789』以降、煌月爽矢(現:中原由貴)(92期)、貴千碧(91期)、宇月颯(90期)、貴澄隼人(92期)あたりの珠城さんを支えていた男役上級生の退団が続き、そして前トップ娘役・愛希れいか、前副組長・憧花ゆりのの退団があり、今回の『夢現無双』『クルンテープ』で美弥るりか、響れおな達が退団する。

今回の退団者を除くと、珠城さんの上は、88期の光月るう組長と夏月都副組長、92期の紫門ゆりや、白雪さち花、千海華蘭の3人と、そこに花組から帰ってくる鳳月杏(92期)が加わる。珠城さんと同期の94期は香月蘭ちゃんひとり。月組はトップ就任3年目に突入した珠城りょうが新トップ娘役の美園さくらと、本当にトップコンビでがんばっていく体制になり、新2番手は月城かなとになるのか、鳳月杏はどうなるかというのはありますが、それはまた別の話です。

タカラジェンヌが見せてくれる夢というのを私は信じているし、その夢を現出させるために宝塚歌劇団は数多の困難を乗り越えようとしてくれている。劇団上層部は男社会なんだろうなと推測したりするのですが、そうだからこそタカラヅカの女性社会に気を遣うという面もあるのでしょう。色々ありますが、私は「清く、正しく、美しく」を支持していきたいと思います。

なんだか書きすぎた気がしますが、上級生が退団し、下級生が成長してくるというのが宝塚歌劇のパワーあふれる公演を支える秘訣です。下級生には退団者が安心してご卒業できるように輝くぞくらいの気持ちで頑張っていただきたいと願っています。おわり。