花組トップ娘役ゆきちゃんの退団記者会見がありましたが、それは別項。
10月14日(日)に東京宝塚劇場で、花組公演『MESSIAH(メサイア)―異聞・天草四郎―』『BEAUTIFUL GARDEN―百花繚乱―』が大千秋楽を迎え、タソ(天真みちる)、あやこちゃん(新菜かほ)、おうまくん(桜舞しおん)の3人が卒業を迎えました。
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千秋楽でフィナーレが終わり、退団者が支度をしている間に組長(高翔みず希)が読み上げてくれる、退団者本人たちが書いたメッセージは、タカラジェンヌの集団生活の中でのひとりひとりの個性や感性、生き様に思いを馳せられるひと時です。
おうまくんの「ひげを付けたらマリオそのもので、ひげの似合う男役になりたかった」。
あやこちゃん
「正塚先生の”スターダム”で、ほとんどの人が通し役の中、私だけが8役を兼ねていて、正直どうして私が早着替えをしなくても他にもできる人はいるはずと思った。
でもそんな時に、「正塚先生の、新菜かほの使い方が面白い。次から次に出てくる」というお客様の感想が耳に入った。それを聞いて以来、求められるのであれば、どんな役でも受け止めると決め、貫いてきた」。
身長158㎝の花組一小さな娘役の挨拶は、宝塚受験に失敗し、部屋で暴れて壁を壊したエピソードも含めて、タカラジェンヌの人生の心意気を感じさせてくれるものでした。
その、あやこちゃんの挨拶を超える人がいました。
見たくなくてもあなたの瞳にダイビング、花組の視線泥棒、天真みちるです。
小学校一年生の時に知り、おばあちゃんに入りなさいと勧められた宝塚歌劇。「おばあちゃんの許可さえあれば入れるところだと思っていた」(場内爆笑)。それが、初めての受験で惨敗し、本当に自分の望んだことかを考え、1年間頑張り、合格することができた。
研3の頃、役が付かなくて、唯一の出番だったラインダンスで、50回くらいウインクをしていたら、外を歩いている時に、「あんた、面白いなぁ」と言ってもらえた。
タンバリンを仕掛けた退団ブーケを誇らしげに持って、カーテンコールで回ってきた挨拶で、劇場内+ライブビューイング会場の全ての客席に、天真みちるは、呼びかけた。
「私が、『せーの』と言ったら『タソ!!』と呼んでください」。
そりゃ、叫ぶよね、「たそぉおお!!」
3回目のカーテンコールで、みりおさん(明日海りお)から花組ポーズの指揮を頼まれた時は予想外の出来事にやや慌てて見えましたが、タソコールはご本人も客席も大満足。
「カッコよさ」や「美しさ」が仰ぎ見られ、憧れられる宝塚歌劇において、コメディエンヌであること、面白味のあるバイプレーヤーであること、タンバリン芸人であること、花組のキザキザでむんむんのショースターであること、それから朗らかでフレンドリーなタカラジェンヌであること、のすべてを成立させることは容易ではなかったと思う。
大千秋楽の晴れやかであけっぴろげで天真爛漫な笑顔の下に、ど根性で、唯一無二の「天真みちる」というジャンルの完成を目指し、長い道のりを歩んできた孤独な影をチラ見した気がしたが、「タソ」コールがそんなものを吹き飛ばしてくれた。
卒業したタソは、これから第二の人生で、やりたいことをやって、さらなる「天真みちる」を見出していくのであろう。芸というものは洗練され、深く豊かになっていくもので、「天真みちる」という芸を、タソが望む限り、終わりはないのだ。
それにしてもタンバリン。「宴会の余興が本番さながらのクオリティー」であるタンバリン芸人のタンバリン芸は、2014年01月06日のSMAP×SMAPで放送されて有名になったけれど(一応、リアタイしていた)、退団公演でこんなにわらわらとタンバリンが出てくると思っていなかった。そうか変わらずタンバリンの人だったのね。
⇒『♪ 天真みちるさま 退団ブーケ ~東京宝塚劇場~』(アトリエ オスカル Blog)
そしてラスボス。タソの挨拶を超える人がいました。
花組トップスター明日海りおさんです。10月14日に「良いお年を」で挨拶を締めました。どよめく場内。おさすがでした。
花組『MESSIAH(メサイア)―異聞・天草四郎―』『BEAUTIFUL GARDEN―百花繚乱―』東京宝塚劇場公演、千秋楽おめでとうございました。お疲れさまでした。
天真みちる様、新菜かほ様、桜舞しおん様、ご卒業おめでとうございます。幸せと楽しさをありがとう。これからの人生にも幸多きことを、お祈り申し上げます。