くどくど書くのも自分で鬱陶しいんですが、史実の時系列というのは観る側にはあまり必要ではない情報です。舞台上の時系列と舞台上の世界観や思考の流れが一致していれば、舞台作品の理解は可能だと思う。
ただナチス・ドイツがホロコーストを行ったことは、よく知られている事実で、そこに至るまでにユダヤ人排斥の長い歴史がある。それが本作の土台となっているか、共通認識なのか、その土台が改変歴史物だと崩れることがある。
ゲッベルス(凪七瑠海)が、フーゲンベルク(壱城あずさ)にジル(綺咲愛里)を気に入ったのかを聞かれて、「清楚な初々しさがある」と答えるゲッベルス。そりゃ、好みだ!って言ってるのと変わらないじゃん。
ゲッベルスが女好きなのは全然いいし、好きな女優をプロパガンダに使いたいんだったら、ウーファ社の専属女優とかにすればいいだけなんだけれど、ジルがユダヤ人であることが明らかになってしまったら、ナチス幹部としては、そういうわけにもいかないだろう、と観る側は思う(よね?)。(フーゲンベルク社長の言うことは正しいよ!)。
それでもオタク気質が国家戦略より勝るゲッベルスさんはジルを自宅に呼び出して映画コレクションの自慢をしちゃうわけですよ。そして『忘れじの恋』を激賞して、「我が国が誇る女優になって頂きたい」とジルに迫る。
ジルが「(『忘れじの恋』の成功は)ヴェーグマン監督(紅ゆずる)の才能です」とゲッベルスをかわそうとするけれど、「類い稀なる貴女の魅力があったからこそです」と言い切っちゃう。
花売り娘のジルに一目惚れ!!!!!!!!!!!
(注:花売り娘のあーちゃんはとても可愛かったです。モノクロなのも良かった)。
「誰がユダヤであるかは、我々が決めることです」。
ゆうちょうだな、ゲッベルスさんは。
ジルはユダヤ人だと新聞に掲載されてしまって、びくびくしているよ。ジルがユダヤ人であることは、新聞で大々的にバラされてしまっているので、もみ消そうとしてももみ消せないよね?え、ゲッペルスさんはもみ消せるの?
実はここに時系列が関係してくるのだ。
1927年『メトロポリス』ワールドプレミア
1928年ナチ党として初の国政選挙で12議席を獲得。
1933年第一次ヒトラー内閣成立。反ユダヤ主義が国家の基本方針となる。
1927年の『メトロポリス』の試写会の段階だと、反ユダヤ主義はまだ一政党の政策だが、1933年には国策となっている。1933年にユダヤ人であるジルを主役に据えて映画を作ることが出来るのか。『忘れじの恋』完成は何年なの?
東宝千秋楽のゲッペルスは推しを見つけたオタクにしか見えなくて、なんかちょっと納得しました。パラレルワールドのゲッベルスさんだと思えた。カチャ、おつかれさま!専科から星組への特出ありがとう!!
個人的には、かいちゃん(七海ひろき)のカウフマンさん観ているのが楽しかったベルリン、わが愛。ちゃんと仕事する良い上司なんだと思えたカウフマンさん。好きです。