7月22日(土)~8月7日(月)まで梅田芸術劇場で公演していた星組『オーム・シャンティ・オーム-恋する輪廻-』。仕事の合間に突っ込めるだけ突っ込んで観劇しました。充実した公演期間だった。楽しかった。
1月に国際フォーラムで上演したときも1回遠征したのですが、その時は紅&綺咲コンビのプレお披露目公演ということで、とにかくお祭り!華やかで楽しければおっけいと思って見ていましたが、実は歌とお芝居の荒れは気になっていた。頼むよ!星組上級生!!と思ったことは内緒だっ!←って、全然、内緒にしていませんが(笑)。
今回の再演にあたって予習で映画『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』(原題・Om Shanti Om)を観て、映画版の深さにやられまして、宝塚版を星組に合わせたものに換骨奪胎した小柳 奈穂子氏の手腕には相変わらず敬服しました。
__
(あらすじ)
30年前(1970年代)のボンベイ(現ムンバイ)。ボリウッド映画の脇役俳優のオーム・プラカーシュ・マッキージャ(シャー・ルク・カーン)は、当代一の人気女優シャンティプリヤ(ディーピカー・パードゥコーン)に憧れ恋い焦がれ、スターになって彼女と会い、共演することを夢見ていた。
撮影中の火災事故からシャンティを助け出したオームは、親友パップー(シュレーヤス・タラプデー)の助けを借りて、シャンティと友人関係を築く。だがシャンティは映画プロデューサーのムケーシュ(アルジュン・ラームパール)と秘密裏に結婚していた。シャンティは結婚を公表し、「幸せな人妻」の象徴であるシンドゥールをつけることを切望していたが、映画業界での成功を優先するムケーシュに公表を拒否され続けられていた。そこでシャンティは、妊娠を理由に映画の主演を降りることを彼に告げる。その決意はムケーシュから殺意を引き出した。
2人のやりとりを聞いてしまったオームはシャンティの幸せを喜ぼうとするが、不吉な予感がして、映画の撮影セットにかけつける。そこにはムケーシュが放火した炎に包まれているシャンティの姿があった。シャンティを助け出そうとしてムケーシュの部下の妨害にあい、車にはねられてオームは命を落としてしまう。
そして30年後。大俳優ラジェ・カプール(ジャーヴェード・シェイク)の息子として生まれ変わったオームは、前世の記憶を取り戻し、パップーと母ベラ(キラン・ケール)の助けを借りて、ムケーシュへの復讐を開始する。
__
映画はインド的な荒唐無稽感があふれ、豪華絢爛でセクシー。インド音楽独特のリズムは盛り上げ効果抜群で、2幕でオームが映画の主演男優賞を受賞した場面ではボリウッド映画のスター達が次から次へとゲスト出演して踊りまくる。インド的ファンタジー。すばらしい。
King of Bollywoodと呼ばれる主演のシャー・ルク・カーンのオーム(二役)、この映画がデビュー作のディーピカーのシャンティプリヤ/サンディ(二役)がとにかく良い。1幕のオームは、うだつは上がらないが、実直で一途な青年で稼ぎは少ないけれど、絶対に大事にしてくれるよ、シャンティ!と思ったものです。
2幕では傲慢でわがままな親の七光り俳優オームが、前世の記憶を取り戻し、父に「前世は脇役俳優だった。僕はもっと良い息子になる。もっと良い俳優になる」と誓って、精力的に仕事し始め、ムケーシュの代わりにプロデューサー能力まで発揮し、サンディを守るために復讐を中断することも厭わない誠実さを表してくる、その変化が「同じ顔をしていても中身が違う」という現象を理解させてくれた。
ディーピカー・パードゥコーンのシャンティプリヤ/サンディ(二役)もそうで、しっとりと美しくしなやかに舞い踊る大女優シャンティプリヤと田舎から出てきたばかりで騒々しくも愛らしいサンディに魅入られた。アルジュン・ラームパールのムケーシュはヘタレ感があって、そんなにロマンを感じなかったけれど、とにかくオームがカッコいいので許せました。楽しい。良い映画だ。
__
(おまけ)
映画を観ながら、インドで人妻が焼死ってあれ(”サティ:Wikipedia”、”生きたまま焼かれるインドのサティ―(儀式)とその様子” )じゃなかったっけ、とか小耳に挟むインドの闇を思い出しつつ考えていると、ファラー・カーン監督が女性で、プロデューサーも女性らしいというところに、作中で死んでしまう女優の復讐とインド人女性のおかれた境遇への復讐をかけてあるのかなぁとか、うがった見方をしてしまいましたよ。日本でも未だに問題ではあるんですが、インドでもこれとかこれとか(閲覧注意)。
主人公オームが親友のパップーに改名をすすめられているのはカースト制度(1950年インド憲法によって禁止された)の名残だろうし、インドの抱える悲嘆の告発でもあるのか、現代日本人に理解させるのは難しそうだな、とか。
出生地&カースト別インド人のお名前まとめ | 海外経験ゼロからインドで働くための インド就職の道標 | ”カースト制度が廃止された今でも、インド人のお名前は、生まれた場所やカースト制度により決まりがあります。つまり名前を聞けば生まれとカーストのおおよその予想は出来るということです。”
__
強烈な身分制度!! カースト制度 | ”このカースト制度による差別は、現在では法律では禁止をされていますが、ヒンズー教はカースト制度を前提にしていますので、インドの生活の中に深く深く定着をしています。そのため、強烈な差別がインド国内では起きています。”
長い歴史を持つインドのカースト制度と現在のインド事情には、「カースト制度から抜け出す方法」の1番目に「1. 諦める ヒンズー教のベースにもなっている「輪廻転生」。現世で正しく生き、生まれ変わって上層階級になるという教えを信じ、来世に希望を抱いて現世で一生懸命に生き抜く」って書いてあって、まんまでした。