[Zuka] 2012年 宙組『銀英伝@TAKARAZUKA』

先月の28日で終わっちゃった宙組博多座公演ですが、博多座パンフレットを購入し、”NOW ON STAGE 宙組博多座公演『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』”と”初日ダイジェスト宙組『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』(博多座)”を観て、へらへらしている、あおきです。

銀河英雄伝説@TAKARAZUKAの出来には大変満足している。まず、ビジュアルにおいて圧倒的に優位にたった時点ですでに宙組の勝利は見えていた。って、誰と闘っているのかわからないが(笑)。

あおきは、原作をほぼリアルタイムで読んでいた世代で、原作と絡めて思うところ書くと、思い入れありすぎで、とんでもない長文になりそうなので、簡略にします。銀河英雄伝説@TAKARAZUKAは、原作を踏襲しながらも、@TAKARAZUKAの世界を作り上げることに成功していた。タイトルに「@TAKARAZUKA」をつけ、なおかつサイエンス・フィクション(SF)ならぬ、スペース・ファンタジー(SF)と銘打ったことで原作とは異なるものであるということを明確にしていたが、それも功を奏していた。さすがは小池修一郎先生。

NOW ON STAGE 宙組博多座公演『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』
NOW ON STAGE 宙組博多座公演『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』

その中で、唯一、原作とは解釈が違うんだなぁと思ったのが、オーベルシュタイン役だった。原作とは解釈が異なっても良い。それは全然かまわない。舞台は総合芸術なので、原作と異なる解釈でも、舞台がまとまっていれば良いのだ。

原作での、オーベルシュタインは「ドライアイスの剣」 とか「永久凍土上の石版」と異名をとる冷徹な帝国軍参謀である。先天的な視覚障害があるため、光コンピュータを用いた義眼を使用し、劣悪遺伝子 排除法を発布し障害者を差別しているゴールデンバウム王朝を打倒したいと考えている。原作では、ゴールデンバウム王朝を打倒できるのはラインハルトしかいないと見定め、戦争の天才としてのラインハルトには忠誠を誓っているが、幼なじみのキルヒアイスと共に、姉アンネローゼを皇帝から取り戻すことを最大の目標としているラインハルトには興味がない。

ゴールデンバウム王朝がゆらぎ、ラインハルト側の優勢が明らかになると、オーベルシュタインは目標を変える。「ゴールデンバウム王朝の打倒」から「ローエングラム王朝の確立」へと。オーベルシュタインは旧い国家を壊したら、速やかに新しい国家を創らないと、その影響が民衆に及ぶことを理解している。

この目的の障害になるのだったら、アンネローゼもキルヒアイスも、ラインハルトの周囲から排除するという考えで、ラインハルトという個人を気にかける余地はないという人だ。原作では、「オーベルシュタインは私心がない」とロイエンタール達が評しているが、自分の手で、旧体制を潰して新しい体制を盤石にしたいというのがオーベルシュタインの私心なんだよね。

悠未ひろの演じるオーベルシュタインは、どちらかというと、ラインハルトに心酔しているオーベルシュタインだった。オーベルシュタインとラインハルトが絡むナンバー「光と影」は、萌えに走るのかと思ったくらい、ラインハルトスキーで、なんか憎めないオーベルシュタインで、それはそれでまとまっていて、かわいかった。悠未ひろの持ち味だろう。

博多座では、本公演ではミッタマイヤーだった七海ひろきが、オーベルシュタイン役が振られている。オーベルシュタインの原作での年齢は、ラインハルトより約 15歳上で没年齢は40歳くらい。血色が悪く、白髪混じりの髪で、老けて見えるという設定で、あんまりいい感じじゃないよね。

宙組博多座公演『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』
宙組博多座公演『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』

原作のオーベルシュタインを追求したという七海ひろきのオーベルシュタインのビジュアルは、銀髪・白皙の若々しい美青年である。それならば、そのビジュアルにあった像を自分で作るしかない。もう終わっているけれど、かいちゃんなら自分の納得のいくオーベ像を作り上げたことでしょう。観たかったよ。

博多座公演は、次世代を育てようという配慮か、キャストが中堅・若手中心に配されて、みんな良い経験になったと思う。特に、本公演では、オフレッサー役で大活躍だった風馬 翔が、ビッテンフェルトに配されていたのが嬉しかった。遅まきながら、テル(凰稀 かなめ)トップ就任おめでとうござます。宙組の皆様、長丁場お疲れ様でした。

■主演・・・凰稀 かなめ、実咲 凜音
NTT東日本・NTT西日本フレッツシアター
スペース・ファンタジー『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』 
田中芳樹作「銀河英雄伝説」(東京創元社刊)より
脚本・演出/小池修一郎

宝塚大劇場公演 公演期間:8月31日(金)~10月8日(月)
東京宝塚劇場公演 公演期間:10月19日(金)~11月18日(日)
博多座公演 公演期間:1月5日(土)~1月28日(月)