ごどく 【誤読】
(名)スル
(1)まちがって読むこと。読みあやまること。
「写本を―する」
(2)タンパク質の生合成の際に伝令 RNA 上の遺伝暗号が正しく読みとられず、違ったアミノ酸が取り込まれること。
大辞林 第二版 (三省堂)
「誤読」とは、読んで字のごとく「間違って読むこと」である。あおきは本の感想なんぞをWebに公開しているが、小心者なので、常に「誤読してないかしらん、読み方間違って書いてないかしらん」と心の片隅でびびっている。
ところが、斎藤美奈子は、のっけから言ってのける。
本は誤読してなんぼです。
おお!ほんとですか!
斎藤美奈子に言われるとそれでいいような気がするから不思議である。
で、斎藤美奈子は、誤読の方法について解説する。「深読み、裏読み、斜め読み」。まだまだある。
例えば……。
- 見取り読み
- 脱線読み
- 見立て読み
- やつし読み
- 鳥の目読み
- 虫の目読み
- 探偵読み
- クロスオーバー読み
- ひらめき読み
- カウント読み
それぞれどんな読み方かは本書を参照していただくとして、誤読の仕方にはこんな手法がたくさんあったのか!といたく感動した(いや、マジで)。本書は書評集の体裁を取りながら、斎藤美奈子がどんな内容の本でも読みこなすスキルを伝授する本なのである。
誤読術さえ身につければ、どんな本も無駄にはなりません。誤読は森林資源を有効に活用する、地球にやさしい本の読み方でもあるのです。
おお!素晴らしい!
これでどんな本でも平気だわ……。と一瞬だけ思ったが、斎藤美奈子は、タレント本から、恋愛指南本、蘊蓄本に、ドラマの原作本に大ベストセラー、種種雑多玉石混淆の数々を誤読術で読み解いていく。「本のワイドショー」と言い切るだけあって、何を好きこのんでこんな本を選ぶでございますか、というセレクト。ですが、その見事な誤読ぶりときたら!単なるスキルではなくて、もはや芸ですよ!
「面白い」とか「お勧め」とか感傷的な言葉も一般的な言葉も一切ない。語彙の豊富さ、多面的な視点、テンポ良いツッコミ、端切れの良い締めくくり。あー、すっきり。
誤読の一流とはこういうものなのです。一流の道はひたすら遠いと痛感しました。
ご本人曰く、本書は「書評集とも時評集とも雑文集ともつかぬもの」なのだが、私の誤読によると本書はひたすら斎藤美奈子の誤読術を堪能する本なのである。
「週刊朝日」連載「誤読日記」(2000年4月28日号~2001年12月28日号)、および「アエラ」連載「ほんのご挨拶」(2002年12月30日~2003年1月6日号~2004年9月6日号)に掲載された175冊の「誤読」をまとめたものです。