[Zuka] 『ラスト・タイクーン』-明日への望みが満つるとき

ベタベタなタイトルを付けてみた。「明日への望みが満ちるとき」でも良いです。花組にはタンバリン芸ができる人が存在していることをSMAP×SMAPでお茶の間に知らしめた天真みちるさんがいますもんね。先日の観劇の時、後ろの席から「タンバリン芸の人がでているんだっけー」という声が聞こえました。公演中にタンバリン芸の場面はありませんよ!たそ茶に行けばタンバリンが出たらしいですけど(笑)。たそ(天真)にはその功績を称え、いつかシリアスでダンディな格好いい役が付くことをお祈りしています。←かなり本気です。

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花組新人公演は、モンロー・スター(本役:蘭寿とむ)柚香 光、キャサリン/ミナ・デービス(本役:蘭乃はな)華雅 りりか、パット・ブレーディ(本役:明日海 りお)水美 舞斗、という組み合わせでした。3人とも、今の自分にできる最大限で役を表現しようと、素直に丁寧に取り組んでいたのが良かった。

新公長の93期メンバーが脇に回り、主演たちの演技に合わせて工夫を利かせていたのも大きい。特に、ブロンソン・スミス(本役:望海 風斗)の芹香 斗亜、ジョージ・ボックスレー(本役:華形 ひかる)大河 凜はさすが新人公演主演経験者という貫録があった。

真輝 いづみもピート・ザブラス(本役:悠真 倫)のほかに椿姫の相手(アルフレード)などを演じ分けていた。アルフレードのときは、椿姫役のヴィヴィアン・コルベール(本役:華耀 きらり)仙名 彩世と喜びをこめ表情たっぷりに踊るシーンが印象に残る。仙名 彩世とケイティ・ドーラン(本役:桜一花)桜咲 彩花も主演達の役作りに合わせて(本役と)立ち位置を変えてきていた。

 

★ネタバレ警報★以下は、公演を見ないと意味が判らないです。

本公演は、蘭寿とむのモンロー・スターと明日海 りおのパット・ブレーディ、望海 風斗のブロンソンで三すくみ状態ができあがっている。役柄で言うと現場主義者の映画バカ・モンロー、映画作りの才より経営者としての能力に長けたブレーディ、イっちゃってるDV男で現場労働者のブロンソン。この三者でパワー・バランスが拮抗し、物語に緊迫感を持たせているのが本公演である。

儚げで寂しさが漂う蘭乃はなのキャサリン/ミナは、陽のオーラを放つ蘭寿モンローに包まれてからは、ブロンソンのことは眼中になくなり、ブロンソンの力は削がれる。そのブロンソンの位置に入り、モンロー側についたのが、華形 ひかるの脚本家ジョージ・ボックスレーである。ここで、ブレーディVS. モンロー+ボックスレーになって、ブレーディ退場。そんなこんなで、本公演のボックスレーは、予想外の動きを見せるダークホースとなっていた。このパワーバランスから、適当に繋いだのが今日のブログのタイトルです(笑)。

それに比して新人公演では、柚香 光のモンロー・スターと水美 舞斗のパット・ブレーディの一対一の関係になり、関係性がシンプルで判りやすくなっていた。芹香 斗亜のブロンソンと大河 凜のボックスレーが、主演を支える形での抑えめの演技で、これが功を奏して柚香 光・水美 舞斗はパワーバランスを気にすることなく、自分の役のみに集中でき、結果的に公演全体が盛り上がった。パワーバランスを変えるのは新人公演のレベルでは難しいことだと思うのだけど、芹香 斗亜大河 凜の脇の締め方が絶妙だった。

芹香 斗亜は、酔っ払いのダメ男という新しいパターンにチャレンジ。芹香 斗亜は、上り坂でスターの貫禄もつき始め、登場時の落ち着きと華やかさには目を見張るものがあった。芹香ブロンソンは、もちろんタダのダメ男ではなく、あれですね、腕は良いし、働き者なんだけれど、アルコールが入るとダメな男に早変わりというタイプ。キャサリンが落としたバッグを抱きしめてスリスリしている場面で、キキちゃんはやはりただ者じゃないなと思ったよ。

大河 凜のボックスレーは、気難しさがちょっと入った渋さを出していて、銀橋でのソロも堂に入ったもので、大河 凜のボックスレーでスピンオフ作品が見たいと思った。

柚香 光は、すっきりした立ち姿とキリッとした顔立ちに前向きさが現れていて堂々たるもの。若さゆえのやんちゃモンロー・スターだった。柚香 光の長所は、当たって砕けろ精神があることだ。特に新人公演は、失敗してなんぼの公演で、背伸びしても新しいものに精一杯チャレンジできる。柚香は、その機会を生かし切った。歌も自分のものにして歌っており、「芝居の中の歌」として役になって歌おうとしていた。ミュージカルだから、お芝居あっての歌との割り切りも大事なんだろうね。柚香 光は6月にバウ公演が控えている。ファイト!

華雅 りりかは、大人びた落ち着きの中にちらりと気の強さを隠しているようなキャサリンを演じ、やや姉さん女房的な印象。若くてイケイケ柚香モンローにはピッタリだった。本役の蘭乃はなより、気が強い感じなので、ダメ男ブロンソンを見捨てられない、だめんず・うぉーかーになっていた。ただ初主演ということもあり、蘭乃はなのキャサリンをなぞるのにいっぱいいっぱいだったかな。宝塚歌劇では、娘役は男役より目立つことは出来ないので、ヒロインの立ち位置は難しい。様子は掴めたと思うので、東京公演で華雅 りりかの個性がもっと出せれば良いなと思う。

水美 舞斗のパット・ブレーディは、体格の作り方がしっかりし、逞しさで中年男性の重みと落ち着きを出していた。オーシャンズ11の頃から考えると、急成長している。娘のセシリア(朝月希和)に、秘書との情事に踏み込まれた時は、傲慢な管理職の仮面がはがれて、間抜けな中年男性になっていた。そのリアルさはどこから…(←この時の水美ブレーディの顔が脳裡に焼き付いていると言ったら、たぶん嬉しくないだろうが、焼き付いている)。クラブ・ココナツグローヴで、モンローと一緒に踊り出すシーンでは、笑顔こそないものの顔芸でキザってキザって釣りまくっていた。このひと、きっすいのはなおとこだ、と思った。

本公演では芹香 斗亜が演じているワイリー・ホワイトは優波 慧。芹香のワイリー・ホワイトをなぞって演じていた。演技力はあるのに前に出るのを躊躇っている印象を受けた。演技が光れば舞台は怖くなくなる。その演技で観客を惹きつけよう。p(′⌒`*q) 

娘役と言えば、ヴィヴィアン・コルベール(本役:華耀 きらり)役で、仙名 彩世が生き生きと力を発揮しておりましたな。ややメインから外れた役なのも良かったのかも。ケイティ・ドーラン(本役:桜一花)役の桜咲 彩花は、本公演ではブレーディの娘セシリアを熱演しているが、新人公演ではモンローをさりげなく支える秘書を好演した。

 真彩 希帆のエドナ・スミスや朝月希和のセシリア、舞月 なぎさや、和海 しょう、羽立 光来も光ってました。花組も層が厚い。喜ばしい。