[Zuka] 2013年月組全ツ『JIN-仁-』『Fantastic Energy!』

梅田芸術劇場メインホールにて月組全国ツアー公演の最終日・前楽を観劇した。演目は昨年、雪組で上演された『JIN-仁-』再演と、レビュー『Fantastic Energy!』の2本立てである。ホームグラウンド(大阪)に戻ってきたからなのか、龍真咲はゆったりとリラックスしていたように見えた。『ルパン-最後の恋-』では、ピリっとして張り詰めたアルセーヌ・ルパンという役柄だっただけに、柔らかい顔の龍真咲を見ることができて嬉しい。

村上もとか原作の漫画『JIN-仁-』は、現代の外科医・南方仁が江戸時代にタイムスリップし、歴史を改変する可能性があるということを理解しつつも、江戸の街の人々のために近代医療を駆使して奔走する。漫画はベストセラーになり、ドラマ化され人気を博した。タカラヅカ版では脚本・演出担当の齋藤 吉正氏が、仁の恋人でガンで亡くなってしまった結命(ゆめ)のエピソードを挿入し、「出会えた奇跡」をテーマとする物語に仕立て上げている。

『JIN-仁-』は、雪組版同様に(1回しか観てないけど)月組版でも人に対する優しい目線は健在で、月組生は雪組版をリスペクトして踏襲した上で、自分達の個性を乗せるという難しいことをやっていた。今回の公演は、龍真咲沙央 くらま光月 るうが支え、飛鳥 裕夏美 ようが脇をがっちり固めるという強力陣形。そして娘役もトップ娘役の愛希れいかを筆頭に、花陽みら、都月 みあ、晴音 アキと良い感じに充実してきた。あと1月バウ公演『New Wave! -月-』の中心メンバー(美弥 るりか、宇月 颯、鳳月 杏、珠城 りょう)の活躍が著しくて、月組にとって何よりのことだと思う。

サイレンが鳴り響き、赤いライトが周囲を照らし、幕が開く。頭部に大けがを負った身元不詳の男性の手術を終えた南方仁@龍真咲は、看護師に「神の手」を持つ天才外科医と呼ばれることを拒否する。どれだけ医学が進歩しても、革命的な技術が発明されても、人は必ず死ぬ。彼は高度な最先端医療を持つ大学病院にいながらも、大事な恋人・結命(ゆめ)@愛希れいかを助けられなかった自分を疎んじているようだった。

そんな仁@が江戸時代末期、幕末の世にタイムスリップし、外傷の縫合やコロリ(コレラ)の治療を成功させ、緒方洪庵(飛鳥 裕)や勝海舟(光月 るう)、坂本竜馬(沙央 くらま)、橘恭太郎(美弥 るりか)などから絶大な信望を得る。しかし、抗生物質さえあれば助かる病(感染症)で人が次々と亡くなっていく。落ち込む仁。だが結命にそっくりな武家の娘・橘咲@愛希れいかと愛し合うようになり、儚い人生を明るく生きている江戸の人々と共に生きていく決意をする。そして最初は仁に反発していた火消しの頭取・新門 辰五郎(夏美 よう)や千吉(珠城 りょう)の支援で診療所の開設にこぎつける。

仁@龍は、江戸の街で業病に冒されながらも懸命に生きている人たちと出会い、やっと結命@愛希を救えなかった自分自身を許し認める。仁は歌う。「明日へ繋ごう かけがえのない命 My Life Your Life」、「愛する人たち 出会えたことが奇跡」と。

『JIN-仁-』はエピソードが盛りだくさんで走馬燈のようにストーリーが流れていったが、それだけに配役も多く、下級生までみんなが個性を発揮していた。仲間達や咲と、和気あいあいと語らい、冗談を飛ばす仁の姿を見て、『ルパン-最後の恋-』においてスラムの男女達と一緒に街の再建に関われることが嬉しくてたまらないという顔をしていた龍真咲のルパンを思い出した。

「今まで誰もやったことのないことにもチャレンジしたいし、自分がパイオニアであり、第一人者でありたい」とVOGUE インタビューで、語る龍真咲。年明けの月組梅芸公演『風と共に去りぬ』はどんなスカーレットで来るか。楽しみ!!