インドは、『絶対貧困』(石井光太,光文社)とテクノロジーが混在する世界。
「絶対的貧困」と「相対的貧困」の概念が異なることは、『子どもの貧困』(阿部 彩,岩波新書)「子どもの貧困の定義」(pp.40-51.子どもの貧困の定義)に詳しいが、石井光太氏による本書は、絶対的貧困の「世界リアル貧困学講義」。インドのスラム街におけるスラムの分類、日常生活、職業から路上生活の実像、世界のどこへ行っても存在する職業「売春業」などなど自分の足で得た絶対的貧困の実情をリポートする。写真もふんだんにあるが、石井氏の書きぶりが淡々としており、視線が優しいので、読み切れるのだが、内容は実にすごい。
私がチェンナイという都市で取材した例をご紹介しましょう。
この町の犯罪組織は、インド各地から赤子を誘拐していました。そして子供が六歳になるまではレンタチャイルドとして物乞いたちに一日当たり数十円から数百円で貸し与えるのです。(略)。
やがて、彼らが小学生ぐらいの年齢に達します。すると組織は彼らに身体に障害を負わせて物乞いをさせるのです。そのパターンとしては次のようなものがあります。
- 目をつぶす
- 唇、耳、鼻を切り落とす
- (略)
(略)。マフィアたちはナイフや剃刀でそれを切断するのです。指ぐらいでは効果がありません。顔でなければ喜捨につながるほどの悲惨なインパクトがないのです。
(第2部路上生活編.pp.212-213.)
こういう「絶対的貧困」のリポートを読んでおくと、「相対的貧困」の概念も理解がしやすくなる。以下の記事は、日本の「相対的貧困」。
世帯の15%「食料買えず」 貧困層の苦境浮き彫り
厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が実施した2007年社会保障実態調査で、15・6%の世帯が過去1年間に経済的な理由で家族の食料を買えなかった経験があることが8日、分かった。
2010/01/08 16:51 【共同通信】
本当に「貧困学」が理論として必要な時期なのだと思う。