青池保子氏の原作「アルカサル -王城-」全13巻の2巻までが舞台化されていて、原作を読み直すと筋は忠実になぞられていました。
ざくっと感想。
6日の14時半の公演を初見して、全体として、展開が速いので場面の切り換えに余裕がなく、ちょっといっぱいいっぱいの印象。敵が味方になり、味方が敵になるという敵味方が入り乱れて行ったり来たりするので、ストーリーを追いかけるのが大変です。
それからドン・ペドロ役の麻央侑希くん、苦労しているなという印象。なんせね、ドン・ペドロのエピソードがてんこ盛りなんですが、ドン・ペドロというキャラクターは一筋縄ではいかない。王に疎まれた王子ドン・ペドロが、王の不慮の死で即位して、宰相や大貴族のコントロールから逃れようと策謀する合間に、愛妾と結ばれて子どもを作る。
ここまでならまだ良くて、さらにフランス公女と政略結婚して、浮気して重婚までする。しかも、重婚を問いただす、愛妾マリアに「私と結婚したかったのか、マリア。お前が何も言わないから、今のままで満足だと思っていたが」って言っちゃうドン・ペドロ。ヲイ(☞`・д・)☞~~~~~☞☞☞
これは演じる側も理解しがたいのでは。ドン・ペドロは、策謀家で猪突猛進の情熱家で英雄色を好む人で、マリア以外は全部火遊び。非難も意に介していないんですが、宝塚歌劇でそれをやるか、という。雪組バウ『パルムの僧院』もその傾向があり(感想を書いてないけど)、演じる側だって、多分、共感して演じたいよね、と思ったものです。
なので、ホアナとの重婚エピソードは省略したほうが観客にもドン・ペドロの行動が理解しやすかっただろうな。麻央くんは新人公演のオットー・ゴールドスタインに続いて、難しい役に当たったけれど、7日の11時公演はぐんと良くなっていたので、これも訓練なんですね。
十碧 れいやくん演じるドン・ペドロの庶兄エンリケは、目的がシンプルでドン・ペドロへの妬みから彼を王座から引きずり下ろそうとする。エンリケのほうが行動の動機が理解しやすい。十碧くん、台詞回しもきれいで、堂々たる立ち姿で好演でした。
ドン・ペドロは美化されていない、中世の戦争に強い独裁的な王様で、女性が好むヒーローではないと思う。『エルアルコン』のティリアンはダーティー・ヒーロー認識なので、女性扱いが荒くてもまぁそういう人だ、で済ませられるけれど、ねえ。
『アルカサル』のドン・ペドロ関連だと、外伝の修道士ファルコとの短編が一番好きです。※(わたしの青池保子氏作品でのキャラクターの一押しはコガネムシのジェイムズ君です。観賞用)。
武道館コンサート出演メンバーの出番は少ないんですが、出てくると場面が締まります。
余裕があれば、書き足すかも、と言いつつ、最近いろいろぶっちしているのでモゴモゴ。
公演期間:12月4日(木)~12月14日(日)
■主演・・・十碧 れいや、麻央 侑希
青池保子「アルカサル -王城-」(秋田書店「プリンセス・コミックス」刊)
脚本・演出/中村 暁
[解 説]
14世紀の中世スペインを舞台に、実在のカスティリア王ドン・ペドロことペドロ1世の活躍と王国の栄枯盛衰の物語を描いた、青池保子氏による歴史漫画をミュージカル化。カスティリア王国の国王ドン・ペドロとその庶兄エンリケの抗争を通して、権力の持つはかなさ、滅びゆく人間の痛ましさをあぶり出し、宝塚ならではの切なくも美しいドラマをお届けします。