中日を過ぎて、全体的にお芝居が馴染んできた印象です。蘭寿さんは相変わらず素敵なモンローさんで、蘭はなちゃんも、ジェシカ/ミナとキャサリンを演じ分けて、歌も乗っていました。
そして明日海ブレーディが、ちょっと枯れた感じになり、ちょっと疲れて苦悩している方向に変わっていて、これが蘭寿モンローさんのイケイケとマッチして流れに調和が出てきていました。蘭寿モンローが突っ走りすぎて何か起きそうになると、明日海ブレーディが「社長から注意されるのは、直属の上司の俺なんだぞー」と苦虫を噛んでいそうな雰囲気ですね。そしてブレーディは、秘書のバーディ(華雅 りりか)に癒やされているのかな(心の中で、ブレーディの奥さんはすでに亡くなっている設定を作りました)。
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ハリウッドで「タイクーン」との異名を取る敏腕プロデューサー・モンロー・スター(蘭寿 とむ)が、新妻の女優ミナ・デービス(蘭乃 はな)を交通事故で失ってから3年が経つ。ミナを失って以降のモンローは更に映画作りにのめり込んでいたが、制作中の映画「椿姫」の撮影は遅々として進んでいなかった。モンローの映画は莫大な制作費を消費するため、彼の上司であるパット・ブレーディ(明日海 りお)は苛立っていた。
そんなある日、モンローはミナそっくりのキャサリン・ムーア(蘭乃はな)と出会い、強引に彼女をデートに誘う。そしてモンローは、キャサリンを、ミナ・デービスとの新居用に建てようとしていた骨格のみの家に連れて行く。
モンローが、キャサリンを海辺の屋根のない家に連れて行く第9場の「ドラックストア前~屋根のない家」は『ラスト・タイクーン』で一番好きな場面である。
屋根のない家を見て、「ミナのことを愛してらしたのね。今日1日、ミナ・デービスの代わりになってあげるわ」とユーモアたっぷりにポーズを取るキャサリンに対し、モンローは、君のことを知りたい、もちろんキャサリンの、と言う。そしてモンローとキャサリンは、お互いの過去を歌う。モンローが自嘲気味に少年時代のことを話し、キャサリンも哀しげに、でも努めて明るく過去を話し出す。
マンハッタンのローワーイーストサイドに育ったモンローは、盗みや引ったくりで生きのびていた。警察に追われ、駆け込んだ映画館。
スクリーンには夢が広がっていた。
気付けば涙が溢れていた。
スクリーンに夢を描くために
From New York to Hollywood
この街にたどり着いた。
キャサリンも語り始める。ロンドンで男と暮らし始めたら、男は私を売ろうとしていた。ロンドンからアメリカへ渡り、着いた時にはスッカラカン。泊まろうと入った映画館。
スクリーンには夢が広がっていた。
気付けば涙が溢れていた。
スクリーンに見た夢追いかけて
From London to Hollywoodモンロー
From New York to Hollywoodこの街に辿り着き
君と(貴方と)出会った(From…to Hollywood/作詞 生田大和 作曲/青木朝子)
「From…to Hollywood」を歌いあげ、吸い寄せられるように見つめ合う二人。「心にぽっかりと空いていたピースがはまった」瞬間である。
モンローが映画を熱愛する理由も、この場面で示されていて、『ラスト・タイクーン』では重要な場面のひとつである。