[Zuka] 2013年雪組『若き日の唄は忘れじ』(2)

感想(1)の続きです。先に書いておくと、『若き日の唄は忘れじ』はすっごく素晴らしい出来で、壮さんとあゆっちのプレお披露目にふさわしい演目だと思います。壮さん・あゆっち、おめでとう。フェルゼン編チケットは予想通り、熾烈な争いとなっていますが、雪組の舞台を楽しみにしています。

3月2日NHKぐるっと関西おひるまえは、大ちゃん(鳳翔大)司会で、えりたん(壮一帆)がゲスト、蘭とむ(蘭寿とむ)のビデオレター付き・豪華版でした。

そして、蘭とむが、「えりたんは..、これ言っていいのかな」と笑いながら、「どSなんですけど」…

ヅカファンは知っていることとは言え、ローカル番組とは言え、蘭とむ、NHK番組で言い切りましたよ(爆笑)。衝撃で、その後の記憶が飛んでます。大ちゃん が、神妙に座って聞いていたのが可笑しかった。えりたんにもっと絡みたいのに、という衝動を抑えていたに違いない(笑)。

さて、本題です。『若き日の唄は忘れじ』(中日劇場)をあおき的には無理に観に行ったのは、愛読している舞台評論家・藤本真由さんのblogを読んだからもあります。やはりプロの目は鋭い。

以降の感想は、ネタばれも含んでいます。そして長くなったので、途中で切りました。(3)もあります。

 とにかく、場面場面の演出が素晴らしい。幕が上がり、暗転からセンターで剣を振るう文四郎@壮一帆にスポットライトがあたり、次に逸平@早霧 せいな、与之助@沙央 くらまと、ライトが次々と切り替わって、3人登場となる出だしからして格好いい。

 熊野神社の七夕まつりに行く文四郎とふく@愛加あゆが乗った小舟が、回り舞台の盆上をゆっくり回り、夜の小川で、きらめく月と星を背景に、二人が一緒になろうと誓う場面は初恋の初々しさが美しく表され、その後の熊野の修験者達の勇壮な舞や蛍に扮した娘役群舞も、幻想的に仕上がっていて、ひきこまれた。

そして、切腹を命じられた助左衛門@夏美ようが、真っ暗な舞台にスポットライトを浴びて浮かび上がり、面会に来た文四郎に、「わしは恥ずべきことをしたわけではない。文四郎、わしを恥じてはならん。そのことは胸にしまっておけ」(←これ原作)と言い残し去って行く場面はシンプルなんだけど、もの凄く力の入った演出で、圧倒された。

と、場面場面がもの凄く絵になっていて、大関弘政(1994年退団)の脚本の見事さもさることながら、さすが日本物がやりたくて宝塚歌劇団を受けたという大野拓史の演出だけあると思ったのですが…見終わってふと思う。で、主題は何?これが違和感その1である。

話の展開はスムーズに流れ、場面を「つなぎ合わせた」感はなく、物語としても高いレベルを維持しているのだが、450ページに及ぶ原作を100分程度の舞台に圧縮しているのだから、力を置くポイントをもう少し絞ったほうが良いんじゃないだろうか。つまり強弱を付けるということ、だけど。

壮一帆と愛加あゆのプレお披露目公演を作り上げた「作者」が描きたかったこと・主軸にしたかったのは、「若者の青春物語」なのか、「かなわなかった初恋物語」なのか、「父と子の絆物語」な のか。キャスト達の演技が素晴らしく、場面場面の演出に力が入り、美しいければ美しいほど、主題を見失った戸惑いがあった。

そしてその戸惑いは、最後の第14場「蝉しぐれ」で決定的になり…、ここで泣いて良いんですか。ほんと困った。

(3)に続きまする。