[Zuka] 宙組『王家に捧ぐ歌』大千秋楽

昨日は、宙組『王家に捧ぐ歌』大千秋楽おめでとうございます。宙組の皆様、スタッフの皆様、おめでとうございました。お疲れ様でした。

大海 亜呼様、花里 まな様、尚央海 りせ様、ご卒業おめでとうございます。幸せと楽しさをありがとう。これからの人生にも幸多きことを、お祈り申し上げます。

あこ姐さんは、あおいさん(美風舞良)と共に民衆を引っ張る役や控えめながらも存在感のある役をしていた。『TOP HAT』で和希そらと踊るダンス姿も印象強い。上級生の娘役はタカラヅカでは数が少なくなっていくが、取りまとめや精神的支柱として非常に重要な役割を担っているのではないかと私は思っている。宙組で、あこ姐さんに次ぐ学年の娘役はせーこ嬢(純矢ちとせ)になることを考えると、寂しさを禁じ得ないが、門出をお祝いして送り出したいと思う。お疲れ様でした。ありがとうございました。

あいこちゃん(花里 まな)は全国ツアーだけじゃなくて大劇場でのエトワール姿が見たかったよ。しょーこちゃん(尚央海 りせ)も新たなる旅立ちを!

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宙組公演『王家に捧ぐ歌』は、宝塚大劇場での千秋楽間際にはかなりの成熟度を見せていたが、東京公演ではどこまで進化し、深化したか、と思う。再演で行われた『王家に捧ぐ歌』は、テーマが「愛と平和」から「愛」のみになったが、歌詞やセリフに若干の修正が加わったのみで、初演の大筋を踏襲しているという。

ただ時系列や構成にやや判りづらい箇所が散見される。私が最も難解だと思ったのが、ラダメス(朝夏まなと)の心理的変化である。

第2場で登場したラダメスはエジプトが他国を侵略し、領地を広げていることを喜び、「獲物をしとめてみせる その恐ろしい牙こそ 私だ」と歌う。そしてその後にエチオピアの王女でエジプトの捕虜になっているアイーダ(実咲 凜音)に会い、「戦いは平和を得るため!」と宣言するが、アイーダに「戦いは、新たな戦いを生むだけ」と諭される。

そのアイーダを振り切って、ラダメスは、エチオピアの攻撃によって始まった戦いに赴く。殺戮の後にエチオピアを征服して凱旋する。そしてなんと、「人みな ひとしく認めあって お互いを許せるように」と、ファラオ(箙 かおる)にエチオピアの解放を願い出るのである。この1幕のラダメスの変貌は、アイーダの存在が大きく影響しているのは間違いは無いが、ラダメス自身の気持ちは語られない。

朝夏まなとのラダメスは、日に日に深化し、その変化のすき間を埋めていった。血縁や仲間を無残にも殺され辱められたエチオピアの囚人たちの嘆きと憎悪、エチオピア人たちの奇襲を受けた伝令の死を目の当たりにしたエジプト兵たちの怒り、そして戦場での殺戮。

生と死のさなかで、ラダメスが自分のありようを思う時に、澄んだ瞳でまっすぐに前を見つめて揺らぐことのないアイーダを思い出していた事は間違いない。ともに戦ってきた戦友ケペル(愛月 ひかる)とメレルカ(桜木 みなと)との友情やファラオの愛娘アムネリス(伶美 うらら)の存在も影響を及ぼしていただろう。

そうして朝夏まなとのラダメスがどんどん深化し、言葉にならない複雑な想いを、聴く者の心のひだひだに届けとばかりに歌に乗せるのに対し、実咲 凜音のアイーダの歌は、ただひたすらエチオピアを想い、ラダメスを愛し、決然と自分の愛を選ぶただ一人の女性として、どんどん研ぎ澄まされ、純化していった。

彼女の祖国への愛はエチオピア王(一樹 千尋)や兄ウバルド(真風 涼帆)、家臣のカマンテ(澄輝 さやと)、サウフェ(蒼羽 りく)とはまったく異なる方向性を持ち、どちらかといえば同じ女性であり、同じく囚人の身となっているファトマ(美風 舞良)やヤナーイル(大海 亜呼)らに近いものであったのだろう。恨みを捨て去り、エチオピアの大地を踏みしめて平穏に暮らしたい。「帰りたいわ、帰りたい」。

そしてエチオピアが解放され、彼女の心は決まった。ラダメスもまた。

月の満ちるころまで

おたがいを おたがいを

思い続けて…。

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脚本・演出の木村 信司氏は凝った捻りを入れてくるのが特徴だなと思う。今回はフィナーレで「エジプトは強い スゴイ ツヨイ」と、作品中ではエチオピアの王女役であった実咲 凜音に歌わせた。色っぽく「エジプトは強い♪」と歌いながら、大階段を先頭を切って降りてくる実咲 凜音の後ろには、ファラオの娘アムネリス役であった怜美うららとエジプトの女官役であった純矢ちとせが続く。敵も味方もなく、柔らかく和やかに「スゴ スゴ ツヨ ツヨ」と娘役達が踊る。

私はここで冷水を浴びたように一気に現実に戻った(笑)。ああ、あれはお芝居だもんね。女官達がアイーダを虐めていたのもお芝居で、アムネリスがアイーダの頬を打ったのもお芝居なんだよね。

続いて、太陽のようなまばゆいキンキラキンのお衣装を着た朝夏まなとが、「誰も誰も自由に踊れ♪」と大階段を下りて総踊りに突入し、「7代目トップスターのお披露目公演だ」ということを実感した。おめでとう、まぁ様!

しかし、捻りすぎかもしれないです。そりゃビックリするよねスゴツヨ。

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伶美うららについては、歌唱については過負荷であることは判っていて喉を潰さないかと心配していたので、長い公演を無事に乗り切っただけでも感無量。あの美貌に目が行きがちですが、とても努力家で根性のある役者魂を持った人だと思っているのでした。誇り高きファラオの娘アムネリスを気迫で演じきりました。お疲れ様でした。
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