8月23日、京都府内の新型コロナウイルス感染症重症患者受入医療機関である13医療機関から、感染拡大に伴う医療の危機についてステートメント(声明)が出されました。
救急応需困難例が多発し、急変した場合であっても必ずしも入院できない事態が発生している。災害級の医療の危機である。
大津波の第5波を避け、命を守る行動を。
【京都府民の皆様へのお願い】
救わなければならない命を救うために、感染の明らかな誘因とされている行為(屋内屋外を限らず複数名での飲食、マスクなしでの会話)を何卒回避していただきますようお願い申し上げます。是非自分を守り、家族や大事な人を守る行動をとってください。★災害レベルに達した新型コロナウイルス感染症拡大による医療の危機について(PDF)【新型コロナウイルス感染症重症患者受入医療機関】20210823
★新型コロナウイルス感染症拡大による医療のひっ迫について(PDF)
京都府医師会 会長 松井 道宣
【新型コロナウイルス感染症重症患者受入医療機関】20210817
- 京都府内の新型コロナウイルス感染症重症患者受入医療機関である13医療機関(京都大学医学部附属病院、京都府立医科大学附属病院、京都第一赤十字病院、京都第二赤十字病院、京都医療センター、宇治徳洲会病院、京都市立病院、京都桂病院、康生会武田病院、医仁会武田総合病院、洛和会音羽病院、三菱京都病院、京都岡本記念病院)
マスクは不織布マスクを着用し、顔に密着させるように調整する。マスクと鼻との間隔が1cmくらい空いていたり、ズレ下がっている人を見かけます。
手洗いと手指消毒をきちんと行う。接触感染の割合は飛沫感染より少ないとされますが、不特定多数の人が触れる部分(ドアノブやスイッチ、エレベーターの操作パネルやエスカレーターの手すりなど)に触れたあとは手洗い。手で顔を触らないようにしましょう。
バーベキュー、パーティ、飲み会、ランチ、カフェなど、屋内屋外を限らず、混雑している場所での飲食や複数名での飲食、マスクなしでの会話は避けること。
機会を逃さずワクチン接種を!
【京都大学医学部附属病院】
COVID-19による肺障害に対する生体肺移植
8月19日、京都大学医学部附属病院が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症で重篤な肺障害を負い、夫と息子から左右の肺の一部の提供を受けて生体肺移植を受けた女性が退院したと発表しました。
新型コロナウイルス感染後の肺障害に対する肺移植手術は日本初で、さらに生体肺移植としては世界初の手術だったそうです。
女性は歩行可能で、転院してリハビリテーションを受けるとのことでした。
- (京都大学)医学部附属病院において新型コロナウイルス感染後の肺障害に対する生体肺移植をおこなった患者が退院(転院)しました。(公開日2021年08月19日)
- (京都大学)医学部附属病院において新型コロナウイルス感染後の肺障害に対する生体肺移植を行いました。(2021年4月7日)
COVID-19の後遺症で両肺が機能しなくなり、生体肺移植というニュースは、ショッキングでしたが、医科学の進歩に感銘を受けました。女性は医療側の献身的な治療と看護の賜物で、生還できたということでしょう。
第5波では新型コロナワクチンの普及※1で重症者や死者が少ない※2と、現在の感染拡大を軽視する風潮が一部に見受けられます。確かにワクチンの効果は素晴らしく、接種後の感染は入院や重症化の防止効果が期待できるとのエビデンスが蓄積されつつあります。
しかし重症者が過去最多となっていても死者が抑えられている※2のは、医療側が、試行錯誤を重ねて精一杯の治療と看護を行い、成功症例を積み重ねている現れでもあるのです。感謝と敬意を。女性が無事にご自宅に戻れるよう願っています。
※1:8月25日現在、首相官邸(新型コロナワクチン情報)によると、ワクチン2回接種は全人口の43.0%です。うち65歳以上の高齢者は2回接種86.7%。全人口には接種対象年齢に満たない子どもも含んでいます。子どもを守るためにも、大人は2回接種しましょう!!
※2:COVID-19重症者におけるECMO装着数は上昇中。
合併症の血栓のために右足を切断
(COVID-19後遺症、 Long COVID)
去年、衝撃を受けたのは、ブロードウェイ俳優のニック・コルデロさんが、2020年7月5日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で亡くなったというニュースです。コルデロさんは、NYブロードウェイでミュージカル「ブロードウェイと銃弾」などに出演し、トニー賞候補にもなっています。
コルデロさんは合併症の血栓のために右足を切断し、91日間の闘病を経て帰らぬ人となりました。ご冥福をお祈りします。
- 新型コロナで右脚切断のブロードウェイ俳優、41歳で死去 / シネマトゥデイ(2020年7月6日)
- 41歳のブロードウェイスター、新型コロナの合併症で右脚切断 / シネマトゥデイ(2020年4月20日)
2020年4月当時にコルデロさんが、血栓で右足切断したというニュースも見ていたのですが、COVID-19侮れない感満載でした。治療薬が有効な風邪やインフルエンザとはとても同じに考えられない。
Twitterで知った海外での症例です。
1/🧵#Covid19 is a disease of blood vessels that can affect your lungs, heart, brain, or any organ. Blood clotting sucks life from vital organs. This pt asked to have her story shared so that others may learn & seek #Vaccination. COVID caused blockage of blood to her arms & legs. pic.twitter.com/d52FbeqJgC
— WesElyMD (@WesElyMD) August 13, 2021
バブルの中と外は天国と地獄なのか
パラリンピックとは、様々な障がいのあるアスリートたちが創意工夫を凝らして限界に挑む国際競技大会とされます。
東京2020パラリンピックは新型コロナウイルス感染症の世界的大流行(パンデミック)という状況で開催されます。国内は東京2020オリンピックの閉幕前後から感染拡大の大波が起き、過去最大の感染者の波(第5波)となっています。
その中で開催される東京2020パラリンピックに参加する選手やスタッフは、バブル方式の中で定期検査を行い、行動制限を受け、守られています。原則的には無観客試合のため、国内に感染を染み出させないと自信を示しています。
東京2020パラリンピックのために、国内外から集まった選手達に気兼ねなく試合に挑んでもらいたい気持ちは山々です。どうか元気で帰国の途につけますよう。
パラリンピックの最中に、国内で感染を拡大させていると、パラリンピック閉幕後に国内にレガシーとして残るのは、たくさんのLong COVIDかもしれません。
リスク管理者である政府は、パンデミック下において東京オリンピック・パラリンピックという世界最大級のイベント開催を断行しました。それなのに不要不急の外出はどうこう、帰省したらどうこう、ランチに行ったらどうこう観劇やライブに行ったらどうこうって理不尽に感じますよね。感じませんか?私は理不尽に感じます。
一国民としては第5波の大津波に耐え難い思いでいっぱいですが、選挙を待ちながら、災害レベルの波を避けて、命を守る行動を取るしかありません。
パラリンピックはおうちテレビで応援。
機会を逃さずワクチン接種を!
新型コロナウイルス感染症の後遺症(Post COVID/ Long COVID)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症(Long COVID)に関する国際研究の結果です。
回答者が経験した症状の数は、55.9±25.5(平均値±標準偏差)だった。臓器のカテゴリー別に見ると、全身性および頭頸部(HEENT)症状がほぼ全例で、また筋骨格、心血管、消化器、肺・呼吸器の症状は85%以上に認められ(表)、これらは時間経過とともに多様な有病率を示した。個々の症状別では、疲労、労作後の倦怠感、認知機能障害が特に多かった。(略)
さらに回答者の仕事への影響を調べたところ、45.2%が罹患前と比べ仕事の量を減らす必要があったと答え、22.3%は勤務が不可能だった。
【時事メディカル】コロナ後遺症、多臓器で症状持続 Medical Tribune (2021/07/20)
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国立国際医療研究センターの調査結果です。
2020年2~6月に国立国際医療研究センター病院を退院した患者78名を対象とし、コロナ後遺症に関する電話聞き取り調査が2020年7月~8月に行われた。
発症から約2か月で48%の方に、約4カ月たっても27%の方に何らかの後遺症を認めた。(略)
呼吸苦、倦怠感、嗅覚障害、咳嗽、味覚障害といった症状が、発症2カ月後も5~18%、発症から約4カ月後も2~11%続いていた。新型コロナウイルス感染症後遺症について(2021-05-28) 森岡 慎一郎先生(国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター)
_7月1日付で阪大の感染制御学教授に着任された忽那先生からの含蓄ある言葉で締めます。
新型コロナ後遺症を確実に回避するには、新型コロナに感染しないようにするしかありません。
新型コロナの後遺症Q&A どんな症状がどれくらい続くのか(2021年1月)忽那賢志先生(大阪大学 大学院医学系研究科 感染制御学)
忽那先生、ありがとうございます!去年の7月には西浦博先生が京大教授でいらして、関西の医療界はすごく強化されました。