雪組新トップコンビ、壮一帆と愛加あゆのプレお披露目公演を2月25日(月)に観劇しました。名古屋には途中下車の4時間弱しかいなかったので、美味しいものは、お預けです(笑)。
『若き日の唄は忘れじ』は、雪組全国ツアー(2013年8月23日(金)~9月16日(月)の演目になるそうで、好評だったのでしょう。できれば全国ツアー版も観たいですが、関西は梅芸だけかよ、という…東北行?うぉ。
『若き日の唄は忘れじ』は、藤沢周平の『蟬(せみ)しぐれ』を原作としており、海坂藩(架空の藩)に属する少年藩士の牧文四郎が成長していく過程で出会った淡い恋、友情に、藩の実権を巡る策謀を描くものである。宝塚版は圧縮されているが、大筋に変更はない。
牧文四郎役の壮一帆は、あごの線がシャープになり、月代(さかやき)の青天鬘で、剣道着を着て竹刀を持つ姿が若々しい。道場師範代の佐竹金十郎@鳳翔大と並んだとき、少し腰をかがめたのか、ばっちり身長差が出て、思春期にさしかかった少年そのもの。恐るべし壮一帆。まっすぐした気性の青年剣士を16歳から28歳まで演じきっていた。
文四郎の初恋の人、ふく(お福さま)役の愛加あゆは、ふわっとした柔らかい雰囲気で、大人っぽい成熟した上品さがある。大きな瞳にぷくっとした頬が愛らしく、壮一帆のシャープで洗練された雰囲気と補完しあって、抜群にお似合いコンビになりそう。ただ、ふくにはちょっと違和感?14歳と26歳の人物像にズレがあるような…この辺りは、(2)でまとめて。
文四郎の友人たちに、 小和田逸平@早霧 せいなと島崎与之助@沙央 くらま。逸平は友人思いの気持ちの良い男で、与之助は剣はからきしだが、学問に強い秀才という役所である。
この3人の間柄は、与之助が「おれたちは刎頸の友」と言ったのに対して、逸平は「フンケイ?なんだそれは」と意味がわからず、文四郎がさらりと「生涯の友」(←不正確)と答え、逸平が「そうか、フンケイ!フンケイ!」と1人で盛り上がるという場面に象徴されていた。勇者・賢者・騎士みたいなw
しかしながら、早霧は『仁』の坂本龍馬と役柄が似ているし、沙央は、黒縁めがねでコメディタッチの秀才に固まってきてしまっているような…二人とも、芸達者ではまりすぎなのかもしれない、素なのかと思うくらい違和感がないもんね。沙央は、これで月組に組替えとなるが、正統派2枚目(美人)なので、そういう役も期待しています。
そして、非業の死を遂げる文四郎の義父、牧助左衛門@夏美 ようの気迫、道場師範の石栗弥左衛門@飛鳥 裕が、不遇をかこつ文四郎に見せる暖かみは、文四郎の成長に大きな影響を与えていると思う。どの公演でも思うことだけど、ベテランの存在感は大きい。
悪役チームは、本当に悪役で、特に里村家老@奏乃 はるとは、「ふっふっふ、お前も悪じゃのぉ」的な悪役をやってくれたので、観る側としても、気楽に観ていられた。武部春樹 @蓮城 まこと、山根清次郎@彩凪翔、犬飼兵馬@月城かなともステロタイプな悪役をきっちりこなしていたので、未練なく見送れたし、100分という短い時間ではそういうのも大事ね。
藩主の叔父・加治織部正 @香綾 しずるも印象を残した。若くして隠遁生活を送り、自分の目にかなった者にしか、胸襟を開かないという人物で、少ない出番で印象づけなきゃいけないので難しい役所だろう。キャスト達の演技は本当に、素晴らしく、要所要所を見事に演じ、清楚さや涼やかさといった、和物の良さが良く出ていて、見応えがあった。
えー、でー、これで終わろうかと思ったのですが、全ツ演目になるということで、気になる所は書いておくかと思いました。(2)に続きます。
【あらすじ】東北にある海坂藩(架空の藩)の下級武士・牧家の養子である牧文四郎(壮一帆)は16歳。友人の小和田逸平(早霧せいな)や島崎与之助(沙央 くらま)と剣術や学問に励む日々を送っていた。
文四郎は隣家の娘ふく(愛加あゆ)とその妹みつ(天舞音 さら)とは幼なじみで、熊野神社の七夕祭りにはここ10年ほど連れだって出かけていた。ふくも14歳になり、若い男女が連れだって歩くことに、文四郎の義母である登世( 梨花 ますみ)は懸念を示すものも、義父・助左衛門(夏美 よう)は微笑ましくみている。そして、七夕祭りの夜、文四郎とふくは、いずれ一緒になろうと約束を交わす。
ところが文四郎の幸せな日々が一変する事件が起きる。助左衛門に反逆の疑いがかかり、切腹を申しつけられたのだ。父の遺骸を引き取って帰る文四郎を周囲は反逆者の子とはやし立てるが、ふくは臆さず、文四郎が引く大八車を支えるために走り寄ってくる。
事件から数年が経ち、長屋で蟄居生活を送っている文四郎だが、変わらぬ態度で接してくれる逸平や留学先の江戸からこまめに便りをくれる与之助に救われていた。しかし、ふくは江戸屋敷に奉公し、会えなくなっていた。そんな折、江戸の与之助から、「ふくが藩主に見初められて側室になった」旨の手紙が届く。文四郎は、ふくが、「お福様」と呼ばれる立場になり、手の届かぬ人となったことを知るのだった。
■主演・・・壮 一帆、愛加あゆ
ミュージカル・ロマンス『若き日の唄は忘れじ』
-藤沢周平作「蟬(せみ)しぐれ」(文春文庫刊)より-
脚本/大関弘政 演出/大野拓史
グランド・レビュー『Shining Rhythm!』-新たなる誕生-
作・演出/中村一徳
- 牧文四郎:壮 一帆
- ふく :愛加 あゆ
- 小和田逸平:早霧 せいな
- 石栗弥左衛門:飛鳥 裕
- 牧助左衛門:夏美 よう
- 登世: 梨花 ますみ
- おふね:舞咲 りん
- 里村左内: 奏乃 はると
- 島崎与之助: 沙央 くらま
- 佐竹金十郎:鳳翔 大
- 武部春樹 :蓮城 まこと
- 藩主:香音 有希
- 加治織部正 :香綾 しずる
- 藤次郎:朝風 れい
- 三緒:千風 カレン
- ます: 此花 いの莉
- つね :白渚 すず
- 小柳甚兵衛 :央雅 光希
- 留伊: 透水 さらさ
- 山根清次郎 : 彩凪 翔
- 琴代 :笙乃 茅桜
- 江森: 亜聖 樹
- 磯貝主計:久城 あす
- みつ: 天舞音 さら
- おとら:杏野 このみ
- お与 :寿春 花果
- 佐竹の妻:芽華 らら
- 犬飼兵馬:月城 かなと
- 萩 : 星乃 あんり
- 新川:和城 るな
- せつ: 夢華 あみ
- 石目四郎太 :橘 幸
- 中山茂十郎: 凰 いぶき
- 北村:永久輝 せあ