宝塚歌劇団元理事で演出家の柴田侑宏さん死去87歳
宝塚歌劇団の元理事で演出家の柴田侑宏(しばた・ゆきひろ)さんが19日、亡くなった。87歳だった。
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201907190001041.html @nikkansportsさんから
__
柴田先生の作品が上演される初日か千秋楽に観劇に行くと、先生が車椅子にサングラスをかけたお姿でいらしているのをお見かけすることがありました。
まりもさん(蒼乃夕妃)のInstagramによると、柴田先生は晩年、不自由な目でお稽古場に出向かれて助言や指示をされていたのですね。柴田先生は58年に宝塚歌劇団に入団されたということで、この道60年余の大御所でしたが、現場に足を運ぶという姿勢は最後まで崩されなかった。
演劇にかける情熱のすさまじさと生徒への愛を感じます。
私は、柴田作品は優れた作品が多いとは思っていますが、本数はそんなに見ていないので、手放しで好きと言えるのは『うたかたの恋』くらいです。
「大人の恋」「情念」というワードを見ましたが、私的印象では作品の舞台となる社会背景や世相を映し出す人物を配置し、その恋愛模様をドラマティックに描きつつ、社会の矛盾を突いてくる。菊田一夫氏の『霧深きエルベのほとり』もそうですが、再演を繰り返し長く上演される作品というのは、表層はシンプルに見えつつも、内実は多面的な重層構造を持っているものであるというお手本が柴田作品でした。
近年の柴田先生の作品は、脚本は柴田先生で、演出は別の演出家が手がけて上演されるという形だったと思います。
2018年では、
- 星組中日劇場公演『うたかたの恋』は、「原作/クロード・アネ 脚本/柴田 侑宏 演出/中村 暁」。
- 雪組大劇場公演『凱旋門』-エリッヒ・マリア・レマルクの小説による-は、「脚本/柴田 侑宏 演出・振付/謝 珠栄」。
- 花組博多座公演『あかねさす紫の花』は、「作/柴田 侑宏 演出/大野 拓史」。
2019年では、
- 宙組博多座公演『黒い瞳』-プーシキン作「大尉の娘」より-は、「脚本/柴田 侑宏 演出・振付/謝 珠栄」。
- 星組全国ツアー公演『アルジェの男』は、「作/柴田 侑宏 演出/大野 拓史」。
柴田侑宏先生のご冥福をお祈りするとともに、諸先生方のお力によって、柴田先生の残された名作の数々が今後も上演されることを願っています。
__
柴田さんは大阪府出身で、58年に宝塚歌劇団に入団。61年、宝塚新芸劇場公演「河童とあまっこ」で演出家デビューした。62年には「狐大名」で宝塚大劇場作の演出を手がけ、75年「フィレンツェに燃える」で芸術選奨文部大臣新人賞を受賞。76年には「あかねさす紫の花」「星影の人」「バレンシアの熱い花」と、次々に作品を発表し、好評を博した。
81年の「新源氏物語」、83年の「うたかたの恋」などは美しいドラマとして評価が高く、近年も再演。84年の「琥珀色の雨にぬれて」、85年の「哀しみのコルドバ」では、大人の恋、情熱を繊細に描いた。山本周五郎作品をもとにした「川霧の橋」や、92年の旧宝塚大劇場ファイナル公演として「忠臣蔵」も手がけた。
97年の「仮面のロマネスク」では貴族社会を描き、同年には宝塚歌劇への貢献に対し、菊田一夫演劇賞特別賞を受賞した。
近年では、第1次世界大戦のスペインを舞台にした男女、人間模様を描いた「黒豹のごとく」を発表し、当時星組トップの柚希礼音がサヨナラ公演として主演。昨年は、00年初演の「凱旋門」が雪組で再演されるなど、現代のタカラジェンヌが演じ継ぐ、多くの名作を生み出した。