東 浩紀編『福島第一原発観光地化計画』

タイトルからして、直球勝負だなぁと思った。『福島第一原発観光地化計画』、すなわち「福島第一原発を観光地にしよう計画」。

表紙には宮崎駿のアニメーションに出てくる城のようなイラストが目に入る。帯には「原発観光地化 あり?なし?」との文字が躍る。直球だ。

新刊棚に面陳

新刊棚に面陳

手に取ると厚みがある。フルカラー192ページ。1,900円+税。この厚さでこのクオリティだと、ふつー3,000円↑ですよ。しかも株式会社ゲンロン(代表取締役 東浩紀)から出版しているので、赤字はゲンロンが被るんですよね。そんなところにも東浩紀の本気を感じた。

表見返しに「編集・研究会座長 東浩紀」とあり、続いて委員、オブザーバー、執筆・インタビューの名前が並ぶ。その数33名。本書のスタンスは明確で、思想地図β Vol.4-2として刊行された研究・思想書である。

本書は作家である東浩紀が自分の読者層を想定して、あらんかぎりのSF魂を総動員し、細心の注意を払って創り上げたものだ。「西暦2036年の福島第一原発周辺」の未来予想図を描き、福島原発事故の憂愁がたゆっている現実と常識に「バルス!!!!」と叫ぶ。

東日本大震災以降、東北の話題には、まるで、それが失われたものへの礼儀であるかのように、悲しみと哀悼の意がつきまとうようになった。そして福島第一原発の周辺、特に【警戒区域および避難指示区域】については、Untouchable-触れてはならない雰囲気が漂っていたように感じていた。

それに対して、東浩紀はこう述べる。

「観光地化」とは、ここでは、事故跡地を観光客へ開放し、見たいと思う場所にするという意味で用いています。

フクシマを見ることを、カッコいいことに変える。できるだ多くの人々に、フクシマを「見たい」と思わせる。

「観光」という言葉の類似語に「物見遊山」という言葉がある。その意味は、「物見とは祭や行事などを見にゆくこと。遊山は山や野に遊ぶことで、気晴しに見物や遊びに出かけること」(四字熟語データバンク)。

つまり「観光」には喜びがある、楽しみがある、気軽さがあり、野次馬根性がある。災害や事故の現場を見世物にしても良いのだろうか、という逡巡は当事者や関係者にあって当然だろう。そこで本書と対になる思想地図β Vol.4-1 東 浩紀編『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』で提起されたのが「ダークツーリズム=死者を悼み、地域の悲しみを継承する営み」という概念である。国内では既に、広島平和記念資料館沖縄の戦跡などが観光地として国際的にも人気を博している

目的のないツーリズムは彷徨だが、ダークツーリズムは被災跡地や戦争跡地を見て、何が起こったかを学び、追悼するという目的がはっきりとある。観光はコンテンツ無くして成り立たないコンテンツ産業だ。そこで本書は2011年から25年後の2036年を目処に、福島第一原発とその周辺を、ダークツーリズムのコンテンツとして、どう整備するかを構想したものである。

実を言うと、本書の核になっている複合施設「ふくしまゲートヴィレッジ」案について、私はそんなに関心がない。現地に何を作るかは、現実的な話であるし、住民や土地の所有者を無視するわけにもいかない。本書で凄いと思ったのは、観光地化=海外から日本に来てもらうためには何が必要か、どんなことを検討しなければならないか、ということの道筋(ロードマップ)を示したことだ。都市計画としてはまだまだアイディアの段階だと思う。だが、ここまで課題が整理されたことで、今後何が必要か、ということも見えてくる。

まだ本書を手に取ってない人には、津田大介×東浩紀対談「被災地に拠点をつくる」(pp.80-81)だけでも読むことをお薦め。中心となったお二人の現実的な問題意識が鮮明に出ている。

ダークツーリズムを主題とした論文資料や本書以外から提言されている復興計画についての資料もそろっている。これだけの重たい内容が詰まっているのに、本書は心が沸き立つ楽しい本になっている思う。編集の苦労が忍ばれた。

あと、わたしはあとがきの「旅の終わりに」が大好きで(笑)。東さんの本気がすごいんだよね。ほんとにすごい。ここを読んで、訳もわからない衝動に突き動かされました(でTwitterでバルスと叫んでみたw)。

「かなしい」って、【悲しい・哀しい・愛しい】と書くんだよね。日本語って文法はゆるゆるだけど、感性が豊かな言語だなと思う。

目次と巻頭言はゲンロン【思想地図β4-2紹介】で読むことができるが、以下のような構成になっている。【株式会社ゲンロン直販サイト

  • 福島第一原発観光地化計画ダイジェスト
  • 巻頭言
  • 取材編 第一部 制度をつくる
  • 提言編 第二部 導線をつくる
  • 提言編 第三部 欲望をつくる
  • 補遺
  • 旅の終わりに

(参考)福島第一原発観光化計画ポータルサイト

福島第一原発観光地化計画 思想地図β vol.4-2 福島第一原発観光地化計画 思想地図β vol.4-2
東 浩紀 開沼 博 津田 大介 速水 健朗 藤村 龍至 清水 亮 梅沢 和木 井出 明 猪瀬 直樹 堀江 貴文 八谷 和彦 八束 はじめ 久田 将義 駒崎 弘樹 五十嵐 太郎 渡邉 英徳 石崎 芳行 ゲンロン 2013-11-15
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